リモートワークの普及やセキュリティ強化の必要性が高まる中、多くの企業がMicrosoft Intuneを活用し、デバイスやアプリを一元管理しています。
しかし、「導入方法が分からない」「ポリシーが適用されない」「適切なセキュリティ設定が知りたい」といった悩みを抱える管理者も少なくありません。
本記事では、Microsoft Intuneの基本から導入手順、設定のベストプラクティス、最新情報までを分かりやすく解説します。
これからIntuneを導入する方も、すでに利用中で運用に課題を感じている方も、この記事を読めばスムーズな管理が可能になります。
この記事は以下のような人におすすめ!
- Microsoft Intuneとは何か知りたい人
- 導入することで何ができるのか知りたい
- どのプランが最適なのか分からない人
目次
Microsoft Intuneとは何か
Microsoft Intuneは、クラウドベースのデバイス管理およびセキュリティ管理ツールです。
企業や組織がPC、スマートフォン、タブレットなどのエンドポイントデバイスを一元管理できるように設計されており、従業員がどこからでも安全に業務を行える環境を提供します。
特にリモートワークやBYOD(個人所有デバイスの業務利用)が進む中で、Microsoft Intuneの導入が加速しています。
ここでは、Microsoft Intuneの概要と特徴、そして他のエンドポイント管理ツールとの比較について詳しく解説していきます。
1-1. Microsoft Intuneの概要と特徴
Microsoft Intuneは、Microsoftのクラウド型デバイス管理サービスであり、企業のIT管理者が従業員のデバイスをリモートで管理できるようにするソリューションです。
主に以下の3つの機能が中心となります。
- デバイス管理(MDM:Mobile Device Management)
Windows、macOS、iOS、Androidなど、複数のOSを横断して企業所有または個人所有のデバイスを統一管理できます。- デバイスの登録・監視
- ポリシーの適用(パスワード強制、暗号化など)
- リモートワイプ(紛失・盗難時のデータ削除)
- アプリ管理(MAM:Mobile Application Management)
デバイス全体ではなく、業務アプリ単位で管理できる機能。個人のデバイスを利用する従業員にも適用可能。- 企業データと個人データの分離(アプリコンテナ化)
- 指定アプリのみ業務利用可能にする制限設定
- 業務アプリのデータ保護(コピー・ペースト制御)
- セキュリティとコンプライアンス管理
Microsoft Defender for EndpointやAzure ADと統合し、ゼロトラストセキュリティを実現。- デバイスの状態に応じたアクセス制御(Conditional Access)
- OSやアプリの脆弱性管理
- マルウェア対策の適用
1-1-1. Microsoft Intuneの特徴
Microsoft Intuneの大きな特徴は、完全クラウド型であるため、オンプレミスのサーバーが不要なことです。
従来のActive Directory(AD)ベースの管理とは異なり、Azure ADと連携してゼロトラスト環境を実現できます。
また、Microsoft 365との統合が強みであり、TeamsやSharePoint、OneDriveと組み合わせてセキュアなコラボレーション環境を構築できます。
従業員がどこにいても安全に業務を遂行できるため、テレワークの普及に伴い、Microsoft Intuneの需要はますます高まっています。
1-2. 他のエンドポイント管理ツールとの比較
Microsoft Intuneは、他のエンドポイント管理ツールと比べてどのような違いがあるのでしょうか?
ここでは、代表的なツールと比較しながら、Microsoft Intuneの強みを明確にします。
1-2-1. 主要なエンドポイント管理ツールとの比較表
ツール名 | 特徴 | クラウド対応 | Windows最適化 | モバイル管理 |
---|---|---|---|---|
Microsoft Intune | Microsoft 365と統合、ゼロトラスト対応 | ◎(完全クラウド) | ◎(Windowsネイティブ) | ◎(iOS/Android対応) |
VMware Workspace ONE | 仮想デスクトップと統合可能 | ◯(一部オンプレ対応) | ◯ | ◎(特にモバイル向け) |
IBM MaaS360 | AIを活用したセキュリティ管理が特徴 | ◎ | ◯ | ◎ |
Jamf Pro | Appleデバイスに特化 | △(一部クラウド) | △(Macのみ) | ◎(iOS特化) |
1-2-2. Microsoft Intuneが優れている点
- Microsoft 365との統合
他のツールと異なり、Office 365アプリやTeamsとの連携がスムーズで、一元管理が可能です。 - Windows管理に最適化
Windowsデバイスの制御に優れており、ポリシー適用やアップデート管理が柔軟に設定できます。 - クラウドベースのゼロトラストセキュリティ
VPNに依存せず、クラウド上でアクセス制御やデバイスの健全性チェックを行うため、テレワーク環境に適しています。
1-2-3. Microsoft Intuneを選ぶべき企業とは?
- Microsoft 365を利用している企業
- Windowsデバイスの管理が中心の企業
- リモートワークのセキュリティを強化したい企業
Microsoft Intuneの導入メリット
Microsoft Intuneを導入することで、企業のIT管理は大きく変わります。
従来のオンプレミス型の管理からクラウドベースの管理へ移行することで、管理の手間を削減しつつ、セキュリティの強化やコンプライアンスの遵守が容易になります。
本章では、Microsoft Intuneの導入メリットについて、「クラウドベース管理の利点」と「セキュリティ強化とコンプライアンス遵守」という2つの観点から詳しく解説します。
2-1. クラウドベース管理の利点
Microsoft Intuneは、クラウドベースのエンドポイント管理ソリューションです。そのため、従来のオンプレミス型の管理と比較して、多くの利点があります。
ここでは、特に注目すべきメリットを解説します。
2-1-1. サーバー不要でIT管理の負担を軽減
従来のデバイス管理では、オンプレミスのサーバーを設置し、Active Directory(AD)やグループポリシーを利用して管理する必要がありました。
しかし、Microsoft Intuneはクラウドベースで動作するため、専用の管理サーバーを設置する必要がありません。
これにより、以下のような利点が得られます。
- 物理的なサーバーの設置・保守コストが不要
- 社内ネットワーク外(テレワーク環境など)でも一元管理が可能
- システムのスケーラビリティが向上し、企業の成長に合わせて柔軟に対応可能
2-1-2. どこからでもデバイスを管理可能
Microsoft Intuneはクラウドベースであるため、インターネットに接続されていればどこからでもデバイスの管理が可能です。
従業員がオフィスにいなくても、IT管理者は以下のような管理業務をリモートで実施できます。
- ポリシーの適用(パスワードルール、デバイス制御)
- アプリの配布・更新
- セキュリティパッチの適用
- 紛失・盗難時のリモートワイプ(遠隔データ削除)
従って、リモートワークが普及する現在の働き方にも最適なソリューションといえます。
2-1-3. 自動更新による最新機能の活用
オンプレミス型の管理ツールは、定期的なアップデートが必要ですが、Microsoft Intuneはクラウドサービスであるため常に最新の状態を維持できます。
その結果、以下のようなメリットがあります。
- 手動でのバージョンアップ作業が不要
- 最新のセキュリティ対策が自動で適用
- 新機能を即座に活用できる
このように、Microsoft Intuneのクラウドベース管理は、IT管理者の負担を軽減しつつ、組織全体の効率を向上させる大きなメリットがあります。
2-2. セキュリティ強化とコンプライアンス遵守
Microsoft Intuneのもう一つの大きなメリットは、組織のセキュリティを強化し、コンプライアンスを遵守しやすくなる点です。
特に近年のサイバー攻撃の増加や情報漏洩リスクの高まりを考慮すると、デバイス管理におけるセキュリティの重要性はますます高まっています。
2-2-1. ゼロトラストセキュリティの実現
Microsoft Intuneは、ゼロトラストセキュリティの概念に基づいたエンドポイント管理を可能にします。
ゼロトラストとは、「社内ネットワークは安全」という前提を捨て、常にユーザーとデバイスの安全性を検証するセキュリティモデルです。
Microsoft Intuneでは、以下のような仕組みによりゼロトラストセキュリティを実現します。
- 条件付きアクセス(Conditional Access)
デバイスの状態やユーザーの権限に応じて、アクセスを制限。例えば、セキュリティ対策が施されていないデバイスからのアクセスをブロック可能。 - デバイスの健全性チェック
最新のOSアップデートが適用されているか、セキュリティソフトが有効かなどをチェックし、問題がある場合は適切な対策を実施。 - データの暗号化とリモートワイプ
業務データを暗号化し、紛失・盗難時にはリモートでデータを削除可能。
2-2-2. コンプライアンスポリシーの適用
企業がMicrosoft Intuneを導入することで、法令や業界基準に準拠したデバイス管理が可能になります。
特に、以下のような規制に対応しやすくなります。
- GDPR(EU一般データ保護規則)
- ISO 27001(情報セキュリティ管理の国際標準)
- NISTサイバーセキュリティフレームワーク
Intuneでは、コンプライアンスポリシーを設定し、以下のようなルールを自動適用できます。
- セキュリティパッチが適用されていないデバイスをブロック
- 業務データへのアクセスには多要素認証(MFA)を必須化
- デバイスのストレージ暗号化を強制
2-2-3. Microsoft Defenderとの連携
Microsoft IntuneはMicrosoft Defender for Endpointと連携し、エンドポイントのセキュリティを強化できます。
これにより、デバイスがマルウェアやランサムウェアに感染した場合、自動で隔離したり、管理者に通知を送ることが可能です。
Microsoft Intuneの主要機能
Microsoft Intuneは、企業や組織がエンドポイントデバイスを一元管理するための強力なツールです。
特に「デバイス管理」「アプリケーション管理」「セキュリティポリシーの設定」「エンドポイント分析」という4つの主要機能を通じて、IT管理の効率化とセキュリティの強化を実現します。
本章では、これらの機能について詳しく解説します。
3-1. デバイス管理
Microsoft Intuneの基本機能の一つがデバイス管理(MDM:Mobile Device Management)です。
企業所有のデバイスだけでなく、従業員の個人デバイス(BYOD)も含め、一元的に管理できます。
3-1-1. デバイス登録と構成プロファイルの適用
Microsoft Intuneでは、以下の手順でデバイスを登録し、適切な設定を適用できます。
- デバイスの登録
- Windows、macOS、iOS、AndroidデバイスをIntuneに登録
- 登録方法は、手動登録、自動登録(Autopilot)、QRコードスキャンなど
- 構成プロファイルの適用
- Wi-Fi設定、VPN設定の自動適用
- 企業ポリシー(パスワード強制、ストレージ暗号化など)の適用
3-1-2. リモート管理と紛失・盗難時の対策
デバイス管理のもう一つの重要な機能が、リモート操作による管理です。
例えば、以下のような操作が可能です。
- リモートロック:紛失したデバイスをロックし、不正利用を防ぐ
- リモートワイプ:機密データを削除し、情報漏洩を防止
- リモートトラブルシューティング:管理者が遠隔で問題を診断・修正
3-2. アプリケーション管理
企業で利用するアプリケーションの管理も、Microsoft Intuneの重要な機能です。従業員が業務に必要なアプリを安全に利用できるように管理できます。
3-2-1. 業務アプリの配布と管理
Microsoft Intuneでは、以下のような方法で業務アプリを配布・管理できます。
アプリの種類 | 管理方法 |
---|---|
Microsoft 365アプリ | Intuneポータル経由で自動配布 |
独自開発アプリ | 企業専用アプリストアを通じて配布 |
公開アプリ(App Store/Google Play) | 承認済みアプリのみインストール可能に設定 |
また、アプリのバージョン管理や強制アップデートも可能です。
3-2-2. アプリのデータ保護(MAM)
アプリケーション管理(MAM:Mobile Application Management)では、以下のようなデータ保護ポリシーを適用できます。
- データの暗号化:業務データのみ暗号化し、個人データと分離
- コピー&ペーストの制限:機密データを個人用アプリにコピーできないよう制御
- アプリのリモートワイプ:個人デバイス上の業務データのみ削除可能
これにより、BYOD(個人所有デバイスの業務利用)環境でも、企業のデータを安全に保つことができます。
3-3. セキュリティポリシーの設定
Microsoft Intuneでは、デバイスやアプリのセキュリティを高めるために、詳細なポリシー設定が可能です。
3-3-1. 条件付きアクセス(Conditional Access)
Azure ADと連携することで、ユーザーやデバイスの状態に応じたアクセス制御ができます。
例えば、以下のような設定が可能です。
- セキュリティ更新が適用されていないデバイスのアクセスをブロック
- 未登録のデバイスからのアクセスを制限
- 多要素認証(MFA)の強制適用
3-3-2. コンプライアンスポリシーの適用
企業のセキュリティ基準を満たすように、デバイスにポリシーを適用できます。
具体的には以下のような項目を設定できます。
- パスワード要件:最低桁数、複雑性、変更頻度の設定
- デバイスの暗号化:BitLocker(Windows)やFileVault(Mac)を有効化
- OSのアップデート適用:古いOSのまま使用することを禁止
これにより、従業員のデバイスが一定のセキュリティレベルを維持できるようになります。
3-4. エンドポイント分析
Microsoft Intuneには、デバイスやアプリの利用状況を可視化し、問題の早期発見や改善策の立案を支援する「エンドポイント分析」機能があります。
3-4-1. デバイスのパフォーマンス監視
エンドポイント分析では、各デバイスの状態やパフォーマンスをリアルタイムで監視できます。
例えば、以下のような情報を把握できます。
- デバイスの応答速度やエラー発生状況
- アプリのクラッシュ履歴
- バッテリーの消耗状態
3-4-2. セキュリティリスクの検出と対応
Microsoft Intuneは、Microsoft Defender for Endpointと連携し、デバイスのセキュリティリスクを検出できます。
例えば、以下のような脅威を特定し、対応策を実施できます。
- 未承認のアプリケーションの検出
- マルウェア感染デバイスの特定
- 脆弱性のあるOSバージョンの通知
管理者は、これらの情報をもとに、セキュリティ対策を強化し、企業全体の安全性を向上させることができます。
Microsoft Intuneの導入手順
Microsoft Intuneを導入することで、組織のエンドポイント管理をクラウドベースで一元化できます。
しかし、効果的に活用するためには、適切な導入手順を理解し、計画的に設定を進めることが重要です。
本章では、Microsoft Intuneの導入手順について、「サブスクリプションの取得方法」「管理者アカウントの設定」「デバイスの登録と初期設定」の3つのステップに分けて詳しく解説します。
4-1. サブスクリプションの取得方法
Microsoft Intuneを利用するには、適切なサブスクリプションを取得する必要があります。
Intuneは単体での契約も可能ですが、通常はMicrosoft 365の一部として提供されているため、使用する機能や組織のニーズに応じて最適なプランを選択しましょう。
4-1-1. Microsoft Intuneの利用可能なプラン
Microsoft Intuneは、以下のプランで提供されています。
プラン名 | 主な特徴 | 価格(月額) |
---|---|---|
Microsoft Intune Plan 1 | デバイス管理、アプリ管理、セキュリティポリシー設定 | $8.00 |
Microsoft Intune Plan 2 | 高度なエンドポイント分析、リモートヘルプ機能を追加 | $12.00 |
Microsoft Intune Suite | Plan 1 + Plan 2 + セキュリティ強化機能(Defender統合) | $18.00 |
Microsoft 365 E3/E5 | Microsoft Intuneを含む包括的なセキュリティ・管理ソリューション | E3: $36.00 / E5: $57.00 |
サブスクリプションを選択する際には、管理対象デバイスの数や、必要なセキュリティレベルを考慮することが重要です。
特に高度なエンドポイントセキュリティが必要な場合は、Microsoft Intune SuiteやMicrosoft 365 E5を検討すると良いでしょう。
4-1-2. Microsoft Intuneの申し込み方法
Microsoft Intuneの契約は、以下の手順で行えます。
- Microsoft 365 管理センターにアクセス(https://admin.microsoft.com)
- 「課金情報」→「サービスを購入」 を選択
- 「Microsoft Intune」を検索し、適切なプランを選択
- ライセンス数を入力し、契約を完了
契約後、Microsoft Intuneの管理機能が利用できるようになります。
4-2. 管理者アカウントの設定
サブスクリプションを取得したら、次にMicrosoft Intuneの管理者アカウントを設定する必要があります。
適切な権限を設定し、役割ごとに管理を分担することで、より安全で効率的な運用が可能になります。
4-2-1. 管理者ロールの設定
Microsoft Intuneでは、複数の管理者ロールを設定できます。以下は主な役割と権限の違いです。
ロール名 | 主な権限 |
---|---|
グローバル管理者 | すべての設定変更が可能 |
Intune管理者 | デバイス・アプリ管理が可能 |
セキュリティ管理者 | セキュリティポリシーの設定と監視 |
ヘルプデスク管理者 | ユーザーサポート、トラブルシューティング |
組織の規模によっては、管理者の権限を適切に分割することが推奨されます。
特に、セキュリティ管理とユーザーサポートを分けることで、より効率的な運用が可能になります。
4-2-2. 管理者アカウントの作成手順
- Microsoft Entra ID(旧Azure AD)にアクセス(https://entra.microsoft.com)
- 「ユーザー」→「新しいユーザー」 を選択
- ユーザー情報を入力し、適切なロールを割り当てる
- アカウント作成後、管理者に通知し、初回ログインを実施
この手順で、Microsoft Intuneの管理者アカウントを適切に作成できます。
4-3. デバイスの登録と初期設定
Microsoft Intuneを利用するには、デバイスを管理コンソールに登録し、必要なポリシーを適用する必要があります。
ここでは、デバイスの登録方法と初期設定について解説します。
4-3-1. デバイスの登録方法
デバイスの登録には、以下の方法があります。
登録方法 | 対応デバイス | 特徴 |
---|---|---|
Windows Autopilot | Windows 10/11 | 企業向けPCの自動セットアップ |
Apple DEP(Device Enrollment Program) | iOS / macOS | Appleの企業向けデバイス管理 |
Android Enterprise | Android | 企業向けAndroidデバイスの一括登録 |
手動登録 | すべてのデバイス | IT管理者が手動で設定 |
大規模な企業では、Windows AutopilotやApple DEPを活用することで、デバイスのセットアップを自動化でき、IT管理者の負担を大幅に軽減できます。
4-3-2. デバイスの初期設定
デバイスを登録したら、初期設定を行い、企業のポリシーを適用します。
- Microsoft Intune管理センター(https://endpoint.microsoft.com)にアクセス
- 「デバイス」→「すべてのデバイス」 から新規登録デバイスを確認
- 「構成プロファイル」 を作成し、Wi-Fi・VPN・セキュリティ設定を適用
- 「コンプライアンスポリシー」 を適用し、パスワードルールやデバイス暗号化を設定
- 「アプリケーションの配布」 でMicrosoft 365アプリや業務アプリをインストール
この手順を完了することで、Microsoft Intuneを活用したデバイス管理が開始できます。
よくある課題とその解決策
Microsoft Intuneは強力なエンドポイント管理ツールですが、導入・運用の過程でさまざまな課題が発生することがあります。
特に、デバイス登録時の問題、ポリシー適用に関するトラブル、ユーザーからの問い合わせ対応といった点が多くの企業で課題となります。
本章では、それぞれの課題について詳しく解説し、適切な解決策を紹介します。
5-1. デバイス登録時のトラブルシューティング
Microsoft Intuneを導入した際、最初に発生しやすいのがデバイス登録時の問題です。
特に、新規デバイスの登録がうまくいかないケースや、既存デバイスの再登録時のトラブルがよく見られます。
5-1-1. デバイス登録時の一般的なエラーと解決策
以下の表は、よく発生するエラーとその対処方法をまとめたものです。
エラー内容 | 原因 | 解決策 |
---|---|---|
デバイスがIntuneに登録されない | デバイス登録ポリシーの誤設定 | Intune管理センターで「デバイス登録制限」を確認し、適切な設定に変更 |
エラーコード 0x80180014 | デバイスが既に別の管理ツールに登録されている | 一度デバイスをリセットし、既存のMDM設定を削除してから再登録 |
MDMプッシュ通知が届かない | Apple/Googleの通知サービスが無効化されている | Microsoft Intuneの「通知サービス設定」を確認し、必要な証明書を更新 |
Windows Autopilot登録が失敗する | デバイスのハードウェアIDが登録されていない | デバイスのシリアル番号やハードウェアIDを手動で追加し、同期を実行 |
5-1-2. トラブル発生時の基本的なチェックリスト
デバイス登録時にトラブルが発生した際は、以下のポイントを確認すると問題を迅速に特定できます。
- デバイスが適切なネットワークに接続されているか(企業VPNが必要な場合も)
- Intune管理センターでデバイス登録ポリシーが正しく設定されているか
- Microsoft Entra ID(旧Azure AD)への登録が正常に完了しているか
- エラーメッセージの内容を確認し、公式ドキュメントで対応策を調べる
これらの基本チェックを行うことで、多くのデバイス登録トラブルをスムーズに解決できます。
5-2. ポリシー適用のベストプラクティス
Microsoft Intuneでは、セキュリティポリシーやコンプライアンスポリシーを適用することで、デバイスの安全性を確保できます。
しかし、適用ミスや設定の競合が発生すると、意図した動作をしないことがあります。
5-2-1. ポリシー適用に関するよくある課題
以下のような問題が発生することがよくあります。
- ポリシーがデバイスに反映されない
- 設定が競合し、意図しない動作が発生する
- デバイスのパフォーマンスに影響を与えるポリシー設定
5-2-2. ポリシー適用のベストプラクティス
ポリシーを適切に適用するためのポイントを紹介します。
- ポリシー適用の優先順位を確認
- Intuneでは、複数のポリシーが適用された場合、「より厳しいポリシー」が優先される仕組みになっています。意図しない設定が適用されないよう、ポリシーの競合を事前にチェックしましょう。
- テスト用デバイスで動作確認
- 新しいポリシーを適用する前に、テスト用デバイスで動作を確認すると、トラブルを未然に防げます。
- デバイス構成プロファイルとコンプライアンスポリシーを区別して管理
- デバイス構成プロファイルは設定変更を行うポリシー
- コンプライアンスポリシーはセキュリティ基準を満たしているかを判定するポリシー
- これらを混同すると、意図しない動作を引き起こすことがあります。
5-3. ユーザーからの問い合わせ対応方法
Microsoft Intuneを導入すると、IT管理者には多くの問い合わせが寄せられるようになります。
特に、デバイスの登録やポリシー適用に関する質問が多くなるため、迅速かつ的確に対応することが重要です。
5-3-1. よくある問い合わせと対応策
問い合わせ内容 | 解決策 |
---|---|
「会社のメールがスマホで使えない」 | Microsoft Intuneのアプリ保護ポリシーを確認し、Outlookアプリの設定を見直す |
「業務アプリがインストールできない」 | Intuneのアプリ配布ポリシーを確認し、正しいグループに適用されているか確認 |
「パスワードルールが厳しすぎる」 | セキュリティポリシーの適用範囲を見直し、部門ごとに異なるルールを適用 |
「リモートワイプを実行してほしい」 | ユーザーの本人確認を行い、リモートワイプの対象デバイスを正しく特定 |
5-3-2. 効果的な問い合わせ対応のポイント
ユーザーからの問い合わせに迅速に対応するためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- FAQを用意し、社内ポータルで共有
- よくある質問をまとめたFAQを作成し、ユーザーが自分で解決できる環境を整える。
- ヘルプデスクチームを設置し、対応を標準化
- IT担当者がすべての問い合わせに対応するのではなく、ヘルプデスクチームを設置し、問い合わせのフローを整理する。
- 問い合わせ履歴を記録し、ナレッジベースを作成
- 過去の問い合わせ内容を記録し、同じ問題が発生した際に迅速に対応できるようにする。
最新情報と今後の展望
Microsoft Intuneは、組織のデバイス管理とセキュリティを強化するために、継続的に進化しています。最新のアップデートや将来の開発計画を把握することで、より効果的な運用が可能となります。
6-1. 最近のアップデートと新機能
Microsoft Intuneは、定期的に新機能や改善をリリースしています。
これらの更新は、ユーザーエクスペリエンスの向上やセキュリティ強化を目的としています。
最新のアップデートのハイライト:
- iOS 18.2対応のSDKアップデート: iOS 18.2のリリースに伴い、Intuneアプリケーションの安全性とパフォーマンスを確保するため、Intune App SDKとApp Wrapping Toolが最新バージョンに更新されました。これにより、最新のAI機能に対応し、アプリ保護ポリシーの適用が強化されています。
- エンドポイント特権管理の強化: Intune Suiteの一部として、エンドポイント特権管理(EPM)がArm64アーキテクチャをサポートするようになりました。これにより、Arm64デバイス上でのファイルエレベーションが可能となり、セキュリティと柔軟性が向上しています。
- Windows Autopilotとの統合強化: Enterprise App CatalogのアプリがWindows Autopilotと連携し、Enrollment Status Page(ESP)やDevice Preparation Page(DPP)プロファイルでのブロッキングアプリの選択が可能となりました。これにより、アプリの更新が容易になり、プロファイルの最新バージョンへの更新が不要となります。
6-2. 今後の開発ロードマップ
Microsoftは、Intuneのさらなる機能強化とユーザー要件への対応を目指し、以下の開発を進めています。
開発中の主な機能:
- エンドポイント特権管理の高度化: EPMのファイルエレベーションルールが、特定の引数やパラメータの使用を許可する機能をサポート予定です。これにより、ファイルエレベーションのコンテキスト制御が強化され、セキュリティ管理が向上します。
- Windows Autopilotとのさらなる連携: Enterprise App CatalogのアプリがWindows Autopilotと連携し、Enrollment Status Page(ESP)やDevice Preparation Page(DPP)プロファイルでのブロッキングアプリの選択が可能となる予定です。これにより、アプリの更新が容易になり、プロファイルの最新バージョンへの更新が不要となります。
これらの最新情報と今後の展望を踏まえ、Microsoft Intuneの導入や運用を検討する際には、常に最新の情報を確認し、組織のニーズに合わせた最適な活用方法を模索することが重要です。