ブロック暗号という言葉は聞いたことがあるけど、難しそう…」そんな不安を抱えていませんか?
本記事では、ブロック暗号の基礎からAESなど代表的な方式、適切な暗号モードの選び方、実際の活用方法まで丁寧に解説します。
この記事を読めば、情報漏洩を防ぐ知識が初心者でも簡単に身につきます。
この記事は以下のような人におすすめ!
- ブロック暗号とは何か知りたい人
- 仕組みやストリーム暗号との違いがよくわからない
- AESやDESなどブロック暗号の種類が多すぎて、違いやどれを選べば良いかわからない
ブロック暗号の基礎
「ブロック暗号」は情報セキュリティを学ぶうえで欠かせない重要なキーワードの一つです。
暗号化方式の理解は、安全な情報管理や通信を実現するための第一歩となります。
この記事では、ブロック暗号とは何か、その特徴や仕組みについて初心者にも分かりやすく説明します。
また、よく混同されるストリーム暗号との違いについても解説しますので、これから暗号化を学びたい方はぜひ参考にしてください。
1-1. ブロック暗号とは
「ブロック暗号」とは、データを固定長のブロックごとに区切り、暗号化・復号を行う暗号方式のことです。
具体的には、平文(元のデータ)を一定のサイズ(64ビットや128ビットなど)に区切って、鍵を使って暗号化します。
代表的なものとしては、「AES」や「DES」などが知られています。
ブロック暗号の特徴を以下に簡単にまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
暗号化方式 | データを一定の長さに分割して暗号化する |
暗号化単位 | ブロック単位(64ビット、128ビットなど) |
代表的アルゴリズム | AES、DES、Camelliaなど |
利用用途例 | 通信プロトコル(TLS/SSL)、データベース暗号化、ディスク暗号化など |
例えば、128ビットのブロック暗号であれば、128ビット単位にデータを分割し、それぞれのブロックを鍵で暗号化していきます。
その結果、情報漏えいを防止したり、データ改ざんを防ぐことができます。
したがって、ブロック暗号は、安全な通信やデータ保護の基本的な仕組みとして広く利用されています。
1-2. ストリーム暗号との違い
ブロック暗号とよく比較されるのが「ストリーム暗号」です。
両者の大きな違いは、データの処理方法にあります。
- ブロック暗号
データを一定のブロック(塊)ごとに分割して暗号化します。固定サイズのため、データの長さによっては余った部分にパディング(詰め物)を行い、調整する必要があります。そのため、大きなデータをまとめて処理する場合に向いています。 - ストリーム暗号
データを1ビットや1バイト単位の小さな単位で逐次的に暗号化します。リアルタイムな通信や音声・映像などのストリーミングデータを暗号化する際に適しています。
以下に両者の違いを表にまとめました。
項目 | ブロック暗号 | ストリーム暗号 |
---|---|---|
処理方法 | 固定サイズのブロックごとに処理 | 1ビットや1バイト単位で逐次処理 |
パディングの有無 | 必要な場合あり | 不要 |
利用用途の例 | TLS/SSL、ファイル暗号化、データベース暗号化 | 音声・動画ストリーミング、無線通信 |
例えば、銀行の重要データやクレジットカード情報など、まとまった情報を安全に暗号化する場合はブロック暗号が適しています。
一方、通話や映像配信のようなリアルタイム性が求められる場合には、ストリーム暗号が効果的です。
つまり、ブロック暗号とストリーム暗号は用途やデータ特性に応じて使い分けることが重要なのです。
代表的なブロック暗号アルゴリズム
ブロック暗号には多くの種類がありますが、実際に広く利用されているものや代表的なアルゴリズムを知っておくと、実務や学習に大いに役立ちます。
ここでは特に有名な「DES」「AES」と、日本発のブロック暗号アルゴリズム「MISTY1」「Camellia」について、それぞれ詳しく解説します。
2-1. DES(Data Encryption Standard)
「DES(Data Encryption Standard)」とは、1970年代に米国政府(NIST)によって標準化された最も古典的なブロック暗号アルゴリズムの一つです。
DESは64ビット単位でデータをブロック分割し、56ビットの秘密鍵を用いて暗号化します。
つまり、DESはブロック暗号の基本的な仕組みを理解するための入門的存在とも言えます。
しかしながら、近年では計算能力の向上により安全性が低下しており、現在ではAESなどより強力な暗号に置き換えられています。
DESの基本情報を表にまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
ブロックサイズ | 64ビット |
鍵の長さ | 56ビット(実際は64ビット中8ビットは誤り検出用) |
登場年 | 1977年(米国標準として採用) |
現在の利用状況 | 安全性が低いためほぼ使用されない(3DESとして限定的に利用) |
現在はセキュリティ強度の不足により、DESの代わりにAESなどのより安全なブロック暗号が使われるのが一般的です。
そのため、歴史的意義や基本的な仕組みを理解する目的以外では実用されることはほぼありません。
2-2. AES(Advanced Encryption Standard)
「AES(Advanced Encryption Standard)」は、DESの後継としてNISTが標準化した、現在世界で最も広く利用されているブロック暗号アルゴリズムです。
AESはブロックサイズが128ビットであり、鍵の長さは128、192、256ビットから選択できます。
AESが広く使われる理由は、処理速度と安全性のバランスが非常に良いからです。
AESは金融業界、通信、国家機関など、様々な重要システムで採用されています。
AESの基本情報を表にまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
ブロックサイズ | 128ビット |
鍵の長さ | 128 / 192 / 256ビット |
登場年 | 2001年(米国標準として採用) |
現在の利用状況 | 世界中で広く使用(事実上の世界標準) |
AESは現時点で実用化された最も強力かつ信頼性の高いブロック暗号といえます。
したがって、ブロック暗号を使ったシステムの設計や実装を考える際には、AESをまず検討すべきでしょう。

2-3. 日本発の暗号アルゴリズム(MISTY1、Camelliaなど)
実は、日本でも世界的に評価されたブロック暗号アルゴリズムがいくつか存在します。
代表的なものが「MISTY1」と「Camellia」です。
2-3-1. MISTY1とは
「MISTY1」は三菱電機が開発した64ビットブロック暗号で、128ビットの鍵を使います。
その特徴はハードウェア実装に優れており、携帯電話や小型端末などに採用された実績があります。
2-3-2. Camelliaとは
「Camellia(カメリア)」はNTTと三菱電機が共同開発したブロック暗号であり、AESと同様に128ビットのブロックサイズを持ち、鍵の長さも128/192/256ビットから選択可能です。
Camelliaは処理速度、安全性、国際的な評価の点でもAESに匹敵する実力を持っています。
日本発のブロック暗号を比較表でまとめました。
項目 | MISTY1 | Camellia(カメリア) |
---|---|---|
ブロックサイズ | 64ビット | 128ビット |
鍵の長さ | 128ビット | 128 / 192 / 256ビット |
開発元 | 三菱電機 | NTT、三菱電機共同開発 |
特徴 | ハードウェア実装に最適 | AESに匹敵する安全性と処理速度 |
現在の利用状況 | 一部端末・携帯電話で採用 | 政府機関、企業システムで広く採用 |
これらの日本発のブロック暗号アルゴリズムは、海外での認知度はAESほど高くありませんが、日本国内では一定の信頼と実績があります。
そのため、特定の用途においてはAESの代替として十分に検討可能です。
つまり、用途に応じて世界標準であるAESを使うか、日本国内で評価されたCamelliaやMISTY1を使うかを選択することが、実務において重要となります。
暗号利用モードの種類と特徴
「ブロック暗号」を実際に使う場合、単純にアルゴリズムを選ぶだけではなく、「暗号利用モード」を適切に選択することも重要です。
なぜなら、ブロック暗号の利用モードによって安全性や特性が大きく変わるからです。
ここでは代表的な暗号利用モードである「ECB」「CBC」「CFB」「OFB」「CTR」の特徴について、初心者でも理解できるように詳しく解説していきます。
3-1. ECBモード(Electronic Codebook Mode)
ECBモードは、ブロック暗号の最も単純な利用モードです。
データをブロック単位で個別に暗号化するため、同じブロックは常に同じ暗号文となります。
つまり、繰り返しの多いデータの場合、暗号文から元の情報が推測されやすくなり、安全性が低下します。
ECBモードの特徴をまとめると以下の通りです。
項目 | ECBモードの特徴 |
---|---|
仕組み | 各ブロックを独立して暗号化 |
特徴 | 同じブロックは常に同じ暗号文になる |
利点 | 処理が簡単で高速 |
欠点 | 暗号文から元データが推測されやすい |
おすすめ用途 | 少量で機密性が低いデータのみ |
従って、ECBモードは実務ではあまり推奨されず、学習やテスト目的でのみ使用されることが一般的です。
3-2. CBCモード(Cipher Block Chaining Mode)
CBCモードは、前のブロックの暗号文を次のブロックの暗号化に利用することで安全性を向上させています。
初期化ベクトル(IV)を使用することで、同じデータでも異なる暗号文が生成されます。
その結果、ECBモードよりも安全で、実際のブロック暗号の利用シーンで広く使用されています。
CBCモードの特徴を整理すると以下になります。
項目 | CBCモードの特徴 |
---|---|
仕組み | 前のブロックの暗号文と次の平文を組み合わせて暗号化 |
特徴 | 同じデータでも異なる暗号文になる(IV使用) |
利点 | ECBモードより安全性が高い |
欠点 | 暗号化処理が連鎖的に行われるため並列処理が困難 |
おすすめ用途 | ファイルやディスクの暗号化など一般用途 |
したがって、CBCモードは一般的なブロック暗号の用途で最もよく推奨されるモードの一つです。
3-3. CFBモード(Cipher Feedback Mode)
CFBモードは、ブロック暗号を使ってストリーム暗号のように動作させるモードです。
前のブロックの暗号文を次の暗号化処理にフィードバックすることで、逐次的にデータを暗号化します。
そのため、CFBモードはリアルタイムなデータ通信やストリーミングなどの用途に適しています。
CFBモードの特徴は以下の表で確認できます。
項目 | CFBモードの特徴 |
---|---|
仕組み | 暗号文を次の暗号化にフィードバックして逐次暗号化 |
特徴 | リアルタイムでデータを暗号化可能 |
利点 | 少量データでも即時に暗号化できる |
欠点 | 処理速度は比較的遅い |
おすすめ用途 | リアルタイム通信(ストリーミングなど) |
従って、CFBモードは即時性を求める通信シーンでブロック暗号を使用したいときに適しています。
3-4. OFBモード(Output Feedback Mode)
OFBモードもCFBモードと同じく、ブロック暗号をストリーム暗号のように使用できるモードですが、暗号化時のフィードバック処理が平文ではなく、暗号化されたブロックの出力を元に行われる点が異なります。
その結果、送信エラーが起きても影響範囲が限定的であるなど、通信環境が不安定な状況でも利用可能です。
OFBモードの特徴を表で示します。
項目 | OFBモードの特徴 |
---|---|
仕組み | 暗号化出力を次の暗号化の入力にフィードバック |
特徴 | 通信エラー時の影響が限定的 |
利点 | データ転送エラーに強く即時性がある |
欠点 | 同じ鍵とIVの再利用は安全性低下を招く |
おすすめ用途 | 無線通信などのエラーが多い環境 |
つまり、OFBモードは不安定な通信環境でもブロック暗号を安全に使用する際に適しています。
3-5. CTRモード(Counter Mode)
CTRモードは、ブロック暗号の入力に連続的な「カウンター」を使用し、生成された暗号文と平文をXOR演算することで暗号化を実現します。
CTRモードは並列処理が可能であるため、高速で効率的な暗号化が可能です。
特に大規模データやクラウド環境での暗号化に最適です。
CTRモードの特徴は以下の通りです。
項目 | CTRモードの特徴 |
---|---|
仕組み | カウンター値を使って平文とXOR演算することで暗号化 |
特徴 | 並列処理可能で非常に高速な処理速度 |
利点 | 高速かつ並列処理可能で効率的 |
欠点 | カウンターの重複使用で安全性が低下する |
おすすめ用途 | クラウドや大量データ処理が必要な環境 |
従って、大量のデータを効率的に暗号化したい場合には、CTRモードを採用することが一般的です。
ブロック暗号の安全性
ブロック暗号を選定する際に重要なポイントは、その暗号方式がどれほど安全なのかを正しく理解することです。
なぜなら、暗号の安全性は、鍵の長さや攻撃方法への耐性、適切な運用方法によって大きく変わってくるからです。
この章では、「ブロック暗号」の安全性について基礎的な考え方を整理したうえで、具体的な攻撃手法や、安全な利用方法を詳しく解説します。
4-1. 計算量的安全性と鍵長の関係
ブロック暗号の安全性を考える上で重要な概念に、「計算量的安全性」というものがあります。
これは、理論上では解読が可能でも、現実的に解読するための計算量が膨大で、実質的に解読が不可能なことを意味します。
計算量的安全性は、暗号化に使う鍵の長さ(鍵長)に深く関係しています。
鍵長が長ければ長いほど、総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)で解読するために必要な計算量が指数関数的に増加します。その結果、より安全性が高まります。
以下は鍵長と安全性の関係を簡単に表した表です。
鍵の長さ(ビット) | 安全性の目安 | 解読に必要な計算量の目安 | 実用的な評価と用途例 |
---|---|---|---|
56ビット | 安全性が低い | 一般的なコンピュータで数日以内に解読可能 | 現在では安全性が不十分なため非推奨(過去のDESで使用) |
128 | 十分安全(AESで一般的) | 現時点では数億年かかり解読困難(非現実的) | 現在の標準的な安全レベル。金融や通信など幅広く利用 |
192 | 高い安全性 | 理論的にも将来の技術での解読は極めて困難 | 政府機関など、より高い安全性を求める場合に採用 |
256 | 非常に高い安全性 | 量子コンピュータ時代でも当面安全と想定 | 機密性が極めて高いデータを長期間保護する用途で推奨 |
例えば、現在の暗号化では128ビットの鍵長が推奨されています。
なぜなら、128ビット以上であれば、現実的に解読が不可能なため、事実上の安全性を確保できるからです。
したがって、ブロック暗号を選ぶ際には128ビット以上の鍵長を選ぶことが推奨されます。
4-2. 既知の攻撃手法(差分解読法、線形解読法など)
ブロック暗号は日々攻撃者に狙われており、さまざまな攻撃手法が考案されています。
その中でも代表的な攻撃手法が以下の2つです。
- 差分解読法(Differential Cryptanalysis)
- 複数の平文と暗号文のペアを分析し、その差分情報を利用して暗号鍵を推測する手法です。
- 例えば、DESは差分解読法によって安全性が大きく低下すると指摘されました。
- 線形解読法(Linear Cryptanalysis)
- 平文と暗号文の線形的な相関関係を利用して鍵を解読する手法です。暗号アルゴリズムの構造に特定の線形性があると、この攻撃が有効となります。
これらの攻撃手法と対応策を簡単に表にまとめました。
攻撃手法 | 攻撃の特徴・方法 | 影響を受けやすい暗号方式の例 | 主な対策方法 |
---|---|---|---|
差分解読法 | 平文の差分と暗号文の差分を比較し、秘密鍵を特定する方法 | DES、FEALなど(AESは基本的に耐性あり) | 差分解読耐性を高めるため、複雑な演算(非線形処理)をアルゴリズムに組み込む |
線形解読法 | 平文と暗号文の間に存在する線形な関係性から秘密鍵を特定する方法 | DESなど古い設計の暗号方式(AESなど新世代方式は耐性あり) | 非線形処理(S-boxなど)をアルゴリズムに取り入れ、線形関係を排除する |
つまり、現在広く使われているAESなどのブロック暗号アルゴリズムは、これらの攻撃に耐えられるよう設計されています。
その結果、AESなどを利用することで、十分な安全性を確保できます。
4-3. 安全な暗号利用のためのベストプラクティス
ブロック暗号は安全な暗号アルゴリズムを選択するだけでなく、適切な利用方法を守ることも重要です。
ここでは安全な暗号利用を実現するためのベストプラクティスを紹介します。
具体的には、以下のようなポイントに注意が必要です。
- 適切な鍵長の選択
- 最低でも128ビット、推奨は256ビットを選択しましょう。
- 暗号モードの適切な選択
- ECBモードは安全性が低いため使用を避け、CBC、CTR、GCMなど安全性の高いモードを使用しましょう。
- 鍵管理の徹底
- 鍵を漏洩しないよう安全な鍵管理システムを構築し、定期的な鍵のローテーションを行いましょう。
- 初期化ベクトル(IV)の正しい運用
- CBCやCTRモードなどでは、必ず毎回異なるランダムなIV(初期ベクトル)を使用しましょう。再利用すると安全性が著しく低下します。
- 定期的なアルゴリズム見直し
- 最新のセキュリティ動向を常に確認し、時代に応じてアルゴリズムを更新することも重要です。
ベストプラクティスをまとめると、以下の通りです。
ベストプラクティス | 詳細 |
---|---|
鍵長の選択 | 128ビット以上(AES-256推奨) |
暗号モード選択 | ECBは避け、CBC、CTR、GCMを選択 |
鍵管理 | 安全な場所で保管、漏洩防止策を実施 |
最新動向への対応 | 定期的に安全性を評価、アップデート実施 |
その結果、ブロック暗号をより安全に活用することが可能となります。
従って、暗号を導入する際は、単に暗号化方式を選ぶだけではなく、これらのベストプラクティスをしっかり守ることが不可欠です。
ブロック暗号の実用例
ブロック暗号は、理論的に学ぶだけでなく、実際の利用シーンを理解することでその価値がより明確になります。
ここでは実際の活用シーンとして、「セキュア通信プロトコル」「データベース暗号化」「ディスク全体の暗号化」の3つのケースを取り上げ、具体的な利用方法を解説します。
5-1. TLS/SSLなどのセキュア通信プロトコル
ブロック暗号の代表的な実用例として、インターネット通信で広く使われている「TLS(Transport Layer Security)」や「SSL(Secure Socket Layer)」などのセキュア通信プロトコルがあります。
TLSやSSLは、通信を暗号化して盗聴や改ざんを防ぐ仕組みであり、オンラインショッピング、オンラインバンキング、個人情報の送受信など、安全な通信に欠かせない技術です。
具体的には、TLS/SSLの暗号化プロトコルの中で、AESのようなブロック暗号が使われています。
以下に、TLS/SSLで使用されるブロック暗号の例を表でまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
主なプロトコル | TLS(Transport Layer Security)、SSL(Secure Sockets Layer) |
利用されるブロック暗号 | AES、Camellia(GCM、CBCモードなど) |
利用目的 | 通信データの盗聴や改ざん防止 |
実際の活用例 | HTTPS通信、オンラインバンキング、ECサイト |
つまり、日常的に使用する多くのウェブサイトで、実はブロック暗号が使われているのです。
その結果、ユーザーの通信データの安全性が守られています。

5-2. データベースの暗号化
企業や組織において、顧客の個人情報や機密データなどを保存するデータベースの暗号化にブロック暗号が頻繁に使用されています。
データベースを暗号化することで、データ漏洩事故が発生した場合でも、盗まれたデータを第三者が解読することが難しくなります。
したがって、個人情報保護やコンプライアンス遵守を目的として、ブロック暗号を用いたデータベース暗号化を導入することが推奨されています。
データベース暗号化のポイントを以下に整理します。
- 暗号化するデータ:
- 氏名・住所・メールアドレス・電話番号
- クレジットカード番号・口座番号・医療情報などの機微情報
- 使用される主なブロック暗号:
- AES(AES-256が主流)
- 利用モード:
- CBCモードまたはCTRモード、GCMモード(推奨)
- 利用例:
- 銀行システム
- ECサイトの顧客情報管理システム
- 医療機関のカルテデータベース
このように、データベースに保存する情報の機密性に応じて適切なブロック暗号を選択・導入することが重要です。
5-3. ディスク全体の暗号化(フルディスクエンクリプション)
最近では、ノートパソコンやスマートフォンなどのデバイスを紛失した際にデータ漏洩リスクを防ぐため、「ディスク全体の暗号化(フルディスク暗号化)」が広く行われています。
フルディスク暗号化は、ストレージ全体(ハードディスクやSSD)をブロック暗号を用いて暗号化する技術です。
その結果、デバイスが盗難・紛失した場合でも、暗号鍵がなければデータを読み出せなくなり、安全性が格段に向上します。
以下に、フルディスク暗号化の具体例を表で示します。
項目 | 内容 |
---|---|
利用されるブロック暗号 | AES(主にAES-256)、Camelliaなど |
利用シーン | PC・サーバのディスク、外付けドライブ |
使用する主なソフトウェア | BitLocker(Windows)、FileVault(macOS)、Linux LUKS |
メリット | 盗難や紛失時の情報漏洩を防止 |
注意点 | 鍵の紛失によりデータ復旧が不可能になるリスクあり |
フルディスク暗号化は特に持ち運びするノートPCや外付けディスクに対して有効で、企業や個人での利用が一般化しています。
その結果、紛失や盗難時にもデータ漏洩を防ぐことができます。
したがって、情報漏洩防止のために、ブロック暗号を用いたフルディスク暗号化は非常に重要な対策となっています。
最新の動向と今後の展望
現在主流の「ブロック暗号」アルゴリズムは、安全性の高さから広く活用されていますが、量子コンピュータの登場により、今後さらなる安全性強化が求められています。
ここでは、次世代暗号として注目されるポスト量子暗号への対応や、最新のブロック暗号アルゴリズムの標準化動向について解説します。
6-1. ポスト量子暗号への対応
近年、量子コンピュータの実用化が現実味を帯びる中で、従来のブロック暗号にも脅威が迫っています。
なぜなら、量子コンピュータの計算能力は極めて高く、既存の暗号技術を短期間で解読できる可能性があるからです。
つまり、現在広く使われているAESなどのブロック暗号も、量子コンピュータが本格稼働した際には安全性が大きく低下する可能性があります。
そこで注目されているのが、量子コンピュータ時代にも安全な「ポスト量子暗号」です。
ポスト量子暗号の特徴を以下のように整理しました。
項目 | 内容 |
---|---|
目的 | 量子コンピュータ時代に耐えうる安全性の確保 |
代表的な技術 | 格子暗号、符号暗号、多変数暗号、ハッシュベース暗号 |
現在の動向 | NIST(米国標準技術研究所)が標準化を進めている |
実用化時期 | 2030年前後を目処に標準化・実用化予定 |
その結果、将来的には現在主流のブロック暗号からポスト量子暗号への移行が必要になるでしょう。
したがって、今のうちからポスト量子暗号に関する最新動向をキャッチアップし、移行準備を進めることが重要です。
6-2. 新しい暗号アルゴリズムの標準化動向
ブロック暗号は技術進歩や安全性評価により定期的に新たなアルゴリズムが提案され、標準化されています。
現在主流のAESが広く利用されていますが、AES登場から20年以上経過しているため、新しい標準化への動きも進んでいます。
その一つが、NISTを中心とした次世代のブロック暗号の標準化活動です。新しいアルゴリズムはより安全性が高く、処理効率や耐性も向上したものが求められています。
新たなブロック暗号アルゴリズムの標準化の動きをまとめました。
- 標準化を推進する組織
- NIST(米国標準技術研究所)
- ISO(国際標準化機構)
- 求められる要件
- 量子コンピュータ耐性の強化
- 処理性能の改善(高速化、省電力化)
- IoT機器やクラウド環境など、多様な環境での実用性
- 注目されている次世代ブロック暗号の例
- 「軽量ブロック暗号」(小型端末向け:PRESENT、CLEFIAなど)
- 「フォーマット保存暗号(Format-Preserving Encryption)」(データ形式を維持したまま暗号化可能)
- AESをベースにした派生暗号(AES-GCMなど認証付き暗号)
従って、今後新たなブロック暗号の標準化動向に注目し、その時代ごとに適切なアルゴリズムを採用していくことが重要です。
特にIoT機器やモバイル端末、量子コンピュータ時代を見据えたシステム設計では、新しいブロック暗号を積極的に取り入れることで、セキュリティの強化を図ることが可能になります。