ネットワーク監視やセキュリティ対策を強化するために、「ネットワークタップ」の導入を検討しているものの、「SPANポートとどう違うの?」「導入コストは?」「設置方法は簡単?」と悩んでいませんか?
ネットワークタップは、トラフィックを正確に取得し、監視や解析を効率化できる重要なツールです。
本記事では、ネットワークタップの基本から種類、導入時の課題と解決策までを分かりやすく解説。あなたのネットワーク環境に最適なタップの選び方もご紹介します。
導入前の疑問や不安を解消し、ネットワークの可視性とセキュリティを向上させましょう!
この記事は以下のような人におすすめ!
- ネットワークタップ(Network TAP)とは何か知りたい人
- SPANポートとネットワークタップ、どちらを選ぶべきかわからない
- ネットワークタップの設置方法がわからない…ネットワークに影響があるのか知りたい
目次
ネットワークタップの基礎知識
1-1. ネットワークタップとは何か
1-1-1. ネットワークタップの基本概念
ネットワークタップ(Network TAP: Test Access Point)は、ネットワークトラフィックを分岐し、監視や解析のためにデータを取得するための装置です。
物理的にネットワークケーブルの間に挟むことで、リアルタイムで通信内容をコピーし、監視デバイスへ送信します。
1-1-2. ネットワークタップの役割
ネットワークタップは、以下のような用途で活用されます。
- セキュリティ監視:不正アクセスやサイバー攻撃の兆候を検知
- ネットワークトラブルシューティング:パケットロスや遅延の分析
- トラフィック解析:ネットワークの負荷状況を把握し、最適化
1-1-3. ネットワークタップの動作の仕組み
ネットワークタップは、スイッチやルーターの間に設置され、パケットの流れをコピーして監視用デバイスに送ります。
ネットワークタップのデータフロー
機器 | 通常の通信 | タップされたデータ |
---|---|---|
スイッチA | ルーターBへ送信 | 監視デバイスCへコピー |
ルーターB | スイッチAへ送信 | 監視デバイスCへコピー |
この仕組みにより、ネットワークに負荷をかけずにトラフィックの可視化が可能になります。
1-2. ネットワークタップの必要性とメリット
1-2-1. なぜネットワークタップが必要なのか?
ネットワーク監視を行う方法として、「SPANポート」(スイッチのポートミラーリング機能)もありますが、以下のような問題点が指摘されています。
- 高トラフィック時にパケットロスが発生する可能性
- ネットワーク機器のCPU負荷が増加し、性能に影響を与える
- 暗号化通信の一部が正常にコピーされないことがある
これらの課題を解決するために、独立したデバイスとして機能するネットワークタップが必要とされます。
1-2-2. ネットワークタップのメリット
ネットワークタップを導入することで、以下のような利点があります。
メリット | 詳細 |
---|---|
正確なパケットキャプチャ | パケットロスなしで全データを取得可能 |
ネットワーク負荷ゼロ | スイッチやルーターのリソースを消費しない |
リアルタイム監視が可能 | 遅延なくデータを取得し、即時解析が可能 |
セキュリティ強化 | IDS/IPSやDLPと連携し、不正アクセスを早期検知 |
1-2-3. ネットワークタップの活用シーン
ネットワークタップは、以下のような場面で活用されます。
- セキュリティ監視
- IPS/IDS(侵入検知・防御システム)との連携
- マルウェア感染やDDoS攻撃の兆候をリアルタイム監視
- ネットワークパフォーマンスの最適化
- 遅延やパケットロスの特定
- 帯域使用率の監視と負荷分散の最適化
- フォレンジック調査(インシデント対応)
- サイバー攻撃の証拠収集
- 不正通信や情報漏洩の発生源を特定
ネットワークタップの種類と特徴
ネットワークタップにはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特性や用途を持っています。
本記事では、代表的なネットワークタップの種類とその特徴について詳しく解説します。
2-1. カッパータップ(UTPケーブル用)
2-1-1. カッパータップとは
カッパータップは、UTP(Unshielded Twisted Pair)ケーブルを使用するネットワーク向けのネットワークタップです。
一般的なイーサネットネットワークで使用され、企業LANやデータセンターなどで活用されています。
2-1-2. カッパータップの特徴
- 100Mbps、1Gbps、10GbpsのUTPネットワークに対応
- 物理層(Layer 1)でトラフィックをコピーするため、データ改変のリスクなし
- 電源不要のパッシブタイプが多く、障害時にも通信が継続可能
2-1-3. カッパータップの用途
用途 | 詳細 |
---|---|
ネットワーク監視 | 企業ネットワークのトラフィックの可視化、トラブルシューティング |
セキュリティ対策 | IDS/IPS、ファイアウォールと組み合わせてリアルタイム監視 |
パフォーマンス解析 | 帯域使用率の監視、ネットワークボトルネックの特定 |
カッパータップは、低コストかつ導入が容易なため、多くの企業で活用されています。
2-2. ファイバータップ(光ファイバ用)
2-2-1. ファイバータップとは
ファイバータップは、光ファイバを使用するネットワーク向けのタップです。
データセンターやクラウド環境など、高速通信が求められる場所で利用されます。
2-2-2. ファイバータップの特徴
- 1Gbpsから100Gbpsの高速ネットワークに対応
- パッシブ設計(電源不要)のため、ネットワークへの影響が少ない
- 全トラフィックを正確にミラーリングできるため、解析精度が高い
2-2-3. ファイバータップの用途
用途 | 詳細 |
---|---|
クラウドデータセンター監視 | 大規模ネットワークのリアルタイム監視 |
広域ネットワーク(WAN)の監視 | 通信事業者やISPが活用 |
高度なセキュリティ監視 | 大容量データの流れを解析、マルウェア検知 |
ファイバータップは、高帯域かつ長距離通信を必要とする環境で最適なソリューションです。
2-3. アグリゲータータップ
2-3-1. アグリゲータータップとは
アグリゲータータップ(Aggregator TAP)は、複数のトラフィックストリームを統合(アグリゲート)し、1つの監視ポートに出力するネットワークタップです。
2-3-2. アグリゲータータップの特徴
- 送信(TX)と受信(RX)のデータを統合し、単一ポートへ出力
- 複数のネットワークセグメントを一括監視可能
- パケットロスを防ぎ、効率的なデータ収集を実現
2-3-3. アグリゲータータップの用途
用途 | 詳細 |
---|---|
統合トラフィック監視 | 分散したデータを一元的に分析 |
パケットキャプチャ | IDS/IPSへの効率的なデータ提供 |
スイッチSPANの補完 | SPANポート不足を解決 |
アグリゲータータップは、複数の通信経路の監視を1つのシステムで行いたい場合に最適なタップです。
2-4. アクティブタップとパッシブタップの違い
2-4-1. アクティブタップとは
アクティブタップ(Active TAP)は、電源を必要とするネットワークタップで、トラフィックをキャプチャする際にデータの一部をフィルタリングしたり、複数の監視ポートへ振り分けたりする機能を持ちます。
2-4-2. アクティブタップの特徴
- パケットのリジェネレーション(信号増幅)が可能
- フィルタリング機能(特定のパケットのみ取得)を搭載
- スイッチング機能を持つものもある
メリット
- 高度なデータ処理が可能
- 長距離伝送時の信号劣化を防ぐ
- 特定のトラフィックのみを抽出可能
デメリット
- 電源が必要(障害時にリスク)
- コストが高め
2-4-3. パッシブタップとは
パッシブタップ(Passive TAP)は、電源を使用せずにトラフィックをコピーするネットワークタップです。
シンプルな構造で信頼性が高く、光ファイバ用のタップに多く採用されています。
2-4-4. パッシブタップの特徴
- 電源不要で動作
- ネットワークに影響を与えない
- シンプルな構造で故障リスクが低い
メリット
- ネットワークの可用性を損なわない
- 電源障害の影響を受けない
- 低コストで導入しやすい
デメリット
- 長距離伝送時に信号が減衰する可能性
- データフィルタリングや解析機能は持たない
2-4-5. アクティブタップ vs. パッシブタップ 比較表
タイプ | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
アクティブタップ | 電源を使用し、信号増幅やフィルタリングが可能 | 高度なデータ解析、長距離伝送向け | 電源が必要、コストが高い |
パッシブタップ | 電源不要でシンプルな動作 | ネットワークに影響なし、低コスト | 信号減衰のリスク、解析機能なし |
ネットワークタップの導入と設置方法
ネットワークタップを適切に導入・設置することで、ネットワーク監視やセキュリティ強化がスムーズに行えます。
本記事では、ネットワークタップを導入する際の準備、設置手順、そして設置によるネットワークへの影響とその対策について詳しく解説します。
3-1. 導入前の準備と注意点
ネットワークタップを導入する際は、事前に適切な計画を立てることが重要です。
ここでは、ネットワークタップの選定や導入に際しての注意点を解説します。
3-1-1. ネットワークタップ導入前に考慮すべきポイント
ネットワークタップを導入する際には、以下のポイントを事前に検討する必要があります。
- 導入目的の明確化:セキュリティ監視、トラブルシューティング、パフォーマンス分析など
- 対応ネットワークの種類:UTP(カッパー)か光ファイバか
- トラフィック量の把握:タップする回線の帯域(1Gbps、10Gbps、100Gbpsなど)
- 監視デバイスとの互換性:IDS/IPS、パケットキャプチャツール、ネットワークパケットブローカー(NPB)との連携
3-1-2. ネットワークタップの選定基準
ネットワーク環境に適したネットワークタップを選定するための基準を以下の表にまとめました。
選定基準 | 詳細 |
---|---|
タップの種類 | カッパータップ、ファイバータップ、アグリゲータータップなど |
パッシブ vs. アクティブ | パッシブは電源不要、アクティブはフィルタリングやリジェネレーション機能あり |
対応速度 | 1Gbps、10Gbps、40Gbps、100Gbpsなど |
ポート数 | 監視デバイスに送信するための出力ポートの数 |
設置方法 | インライン(ネットワーク経路に直接設置) or SPANポートとの併用 |
導入前にこれらのポイントを確認し、自社のネットワーク環境に適したネットワークタップを選択しましょう。
3-2. 物理的な設置手順
ネットワークタップの設置は慎重に行う必要があります。誤った設置をすると、ネットワークに影響を与える可能性があるため、正しい手順を守ることが重要です。
3-2-1. 設置前の準備
ネットワークタップを設置する前に、以下の準備を行いましょう。
- ネットワークトポロジーの確認
- どのリンクをタップするか(スイッチ間、ルーター間など)
- 監視対象の通信(全トラフィック or 特定のVLAN)
- 機器の準備
- ネットワークタップ本体
- 必要なケーブル(UTPまたは光ファイバ)
- 監視用デバイス(パケットキャプチャ装置、IDS/IPSなど)
- メンテナンスウィンドウの設定
- ネットワークタップの設置は一時的に通信を中断する可能性があるため、業務影響の少ない時間帯に実施
3-2-2. ネットワークタップの設置手順
実際の設置手順は以下のとおりです。
① 物理的な接続
- ネットワークタップを設置対象のリンク(スイッチとルーター間など)に接続
- UTPケーブルや光ファイバケーブルを適切に配線
- 監視デバイスに接続するためのポートにケーブルを接続
② 動作確認
- ネットワークの正常性を確認(通信に影響がないか)
- 監視デバイスが正常にトラフィックを受信しているか確認
- パケットキャプチャを行い、正しくデータが取得できているかチェック
③ 運用開始
- 監視システムと連携
- ログの取得と解析を実施
- 定期的なメンテナンスを行い、トラブルシューティングに備える
3-3. 設置時のネットワークへの影響と対策
ネットワークタップの設置は、適切に行わないとネットワークの安定性に影響を与える可能性があります。ここでは、考えられる影響とその対策について解説します。
3-3-1. ネットワークタップ導入時の影響
ネットワークタップの設置による主な影響は以下の通りです。
影響 | 詳細 |
---|---|
通信の一時中断 | インライン設置時、物理的な接続変更により一時的に通信が途切れる可能性 |
信号減衰 | パッシブタップ(特に光ファイバタップ)では、信号強度が低下する場合がある |
監視デバイスの負荷増大 | 大量のトラフィックを処理することで、IDS/IPSやパケットキャプチャ装置の処理能力が限界に達する可能性 |
3-3-2. ネットワークへの影響を最小限に抑える対策
影響を最小限に抑えるための対策を以下に示します。
① 設置前の準備を徹底
- メンテナンスウィンドウを確保し、通信の影響を最小限にする
- テスト環境で事前に動作検証を行う
② 適切なネットワークタップの選定
- アクティブタップを使用することで、信号減衰を防ぐ
- フィルタリング機能付きタップを活用し、監視デバイスの負荷を軽減
③ 設置後のモニタリング
- トラフィックの変化を監視し、異常がないか確認
- 監視デバイスの負荷を定期的にチェックし、必要に応じて負荷分散を行う
ネットワークタップと他の技術の比較
ネットワーク監視やトラフィック解析を行う際には、ネットワークタップ以外にもさまざまな技術が利用されます。
特に、SPAN(ポートミラーリング)やネットワークパケットブローカー(NPB)は、ネットワークの可視化や解析を行うための重要な手段です。
本記事では、ネットワークタップとこれらの技術の違いや、どのように選択・連携すべきかについて詳しく解説します。
4-1. SPAN(ポートミラーリング)との違いと選択基準
4-1-1. SPAN(ポートミラーリング)とは
SPAN(Switched Port Analyzer)とは、スイッチのミラーポート機能を利用して、特定のポートの通信をコピーし、監視ツールや解析デバイスに送信する技術です。
多くのネットワーク機器で標準機能として提供されています。
4-1-2. ネットワークタップとSPANの主な違い
ネットワークタップとSPANポートは、どちらもネットワークトラフィックをコピーするための手段ですが、それぞれ異なる特性を持ちます。
項目 | ネットワークタップ | SPAN(ポートミラーリング) |
---|---|---|
データ取得の正確性 | 100%のトラフィックコピーが可能(パケットロスなし) | スイッチの負荷に応じてパケットロスが発生する可能性あり |
影響範囲 | ネットワーク機器の負荷に影響を与えない | ミラーポート設定によりスイッチのCPU負荷が増加する可能性 |
導入の容易さ | 物理的な設置が必要(インライン設置) | ソフトウェア設定のみで利用可能 |
コスト | 専用ハードウェアが必要(導入コストあり) | 追加コストなし(スイッチ機能を利用) |
適用シナリオ | 高精度な監視、フォレンジック、セキュリティ対策 | 一時的なトラフィック解析、低コスト監視 |
4-1-3. ネットワークタップとSPANの選択基準
ネットワークタップとSPANのどちらを選択すべきかは、監視の目的や環境によって異なります。
ネットワークタップを選ぶべきケース
- セキュリティ監視(IPS/IDSとの連携)
- トラフィック解析(高精度なパケットキャプチャが必要)
- パケットロスを許容できない環境
- 長期的なネットワーク可視化を行いたい場合
SPANポートを選ぶべきケース
- 一時的なトラフィック監視
- 追加コストをかけずに簡易的な解析を行いたい場合
- ネットワーク機器の負荷が低く、影響が少ない環境
ネットワークタップとSPANの併用
場合によっては、ネットワークタップとSPANを併用することで、柔軟な監視体制を構築することが可能です。
- 通常はSPANで監視し、重要なトラフィックの分析にはネットワークタップを使用
- SPANの負荷が高まった場合は、ネットワークタップへの切り替えを検討
- ネットワーク全体のトラフィックを監視し、特定のリンクのみタップで詳細解析
4-2. ネットワークパケットブローカー(NPB)との連携
4-2-1. ネットワークパケットブローカー(NPB)とは
ネットワークパケットブローカー(Network Packet Broker、NPB)は、ネットワーク内のさまざまなトラフィックを集約・フィルタリングし、適切な監視デバイスに転送する装置です。
IDS/IPS、SIEM、パケットキャプチャツールなど複数の監視デバイスと連携し、最適なトラフィックの配信を行います。
4-2-2. ネットワークタップとNPBの組み合わせのメリット
ネットワークタップとNPBを連携させることで、監視インフラの効率が大幅に向上します。
項目 | ネットワークタップ単体 | ネットワークタップ + NPB |
---|---|---|
トラフィック管理 | すべてのトラフィックをコピー | 必要なトラフィックのみを監視デバイスに送信 |
負荷分散 | 監視デバイスに直接送信 | フィルタリングと負荷分散が可能 |
複数の監視デバイスとの連携 | 個別に接続が必要 | 1つのNPBで統合管理 |
コスト効率 | デバイスごとにネットワークタップが必要 | NPBが最適化したトラフィックを送信するためデバイスの負荷が軽減 |
4-2-3. NPBを活用した最適なネットワーク監視アーキテクチャ
ネットワークタップとNPBを組み合わせることで、以下のような高度なネットワーク監視アーキテクチャが実現できます。
- ネットワークタップでトラフィックを取得
- 主要なネットワークリンクに設置し、全トラフィックをキャプチャ
- NPBでデータをフィルタリング・統合
- 不要なトラフィックを除外し、各監視デバイスに適切なデータを送信
- 監視デバイス(IDS/IPS、SIEM、パケットキャプチャ)で解析
- セキュリティ監視、フォレンジック、パフォーマンス監視を実施
この仕組みにより、ネットワーク全体の可視性を向上させつつ、監視デバイスの負荷を最小限に抑えることが可能になります。
ネットワークタップの活用事例
ネットワークタップは、セキュリティ監視、トラフィック解析、障害検知など、さまざまな用途で活用されています。
本記事では、ネットワークタップの実際の活用事例を詳しく解説し、どのような場面で役立つのかを紹介します。
5-1. セキュリティ監視への応用
5-1-1. ネットワークタップを活用したセキュリティ監視の重要性
近年、サイバー攻撃は高度化しており、リアルタイムのネットワーク監視が求められています。
ネットワークタップを活用することで、すべてのトラフィックを完全に監視し、脅威を検知することが可能になります。
5-1-2. ネットワークタップとIDS/IPSの連携
ネットワークタップは、侵入検知システム(IDS)や侵入防御システム(IPS)と連携することで、セキュリティ強化に貢献します。
項目 | IDS(侵入検知システム) | IPS(侵入防御システム) |
---|---|---|
役割 | 不審なトラフィックを検知 | 不正アクセスをブロック |
動作方式 | ネットワーク監視のみ(受動的) | ネットワーク制御が可能(能動的) |
ネットワークタップの活用 | 全トラDフィックをコピーし、IDSに送信 | 不正パケットの検知とブロックを支援 |
5-1-3. ネットワークタップを使ったDDoS攻撃対策
DDoS攻撃(分散型サービス拒否攻撃)は、サーバーやネットワークに過剰なトラフィックを送り込み、システムをダウンさせる攻撃です。
ネットワークタップを活用するメリット
- 全トラフィックを監視し、異常な通信パターンを早期検知
- DDoS攻撃の兆候をリアルタイムで解析し、対策を迅速化
- ネットワーク機器の負荷を増やさずに監視できる
5-2. トラフィック解析とパフォーマンス監視
5-2-1. ネットワークタップによるトラフィック解析のメリット
ネットワークタップを利用することで、リアルタイムでのトラフィック解析が可能になります。
トラフィック解析の主な用途
- アプリケーションの帯域使用率の監視
- 異常なトラフィックの発生源特定
- 通信遅延やパケットロスの原因分析
5-2-2. ネットワークパフォーマンスの可視化
ネットワークタップは、ネットワークパフォーマンス監視(NPM)ツールと組み合わせることで、ネットワーク全体の状態を可視化できます。
監視項目 | 目的 | 活用ツール |
---|---|---|
帯域使用率 | 過負荷の特定とリソース最適化 | NetFlow、sFlow |
遅延(Latency) | 通信の遅延原因を特定 | Wireshark、PRTG |
パケットロス | ネットワーク障害の早期発見 | TCPDump、Snort |
5-2-3. QoS(Quality of Service)の最適化
ネットワークタップを利用することで、重要なアプリケーションのトラフィックを優先させるQoSの最適化が可能です。
例:企業ネットワークのトラフィック管理
- VoIP(音声通話)やビデオ会議の遅延を最小化
- 業務システムのトラフィックを優先し、不要なアプリの帯域を制限
- 異常なトラフィックを特定し、ネットワークの安定性を向上
5-3. 障害検知とトラブルシューティング
5-3-1. ネットワークタップを活用した障害検知
ネットワークタップを設置することで、ネットワーク障害の発生をリアルタイムで検知し、迅速な対応が可能になります。
障害の主な種類とネットワークタップの活用
障害タイプ | 影響 | ネットワークタップの活用方法 |
---|---|---|
パケットロス | 通信の途切れ、遅延 | タップ経由でパケットの欠損状況を分析 |
輻輳(ネットワーク過負荷) | 帯域不足、応答遅延 | 帯域使用率を監視し、リソース最適化 |
ループ(Broadcast Storm) | ネットワークダウン | ループの発生源を特定し、対策を実施 |
5-3-2. トラブルシューティングの具体的な手順
ネットワークタップを活用したトラブルシューティングの流れを紹介します。
① 障害の発生状況を確認
- トラフィックの異常(スパイク、パケットロス)を検出
- 特定のアプリケーションやプロトコルに問題があるか確認
② パケットキャプチャで詳細分析
- WiresharkやTCPDumpを利用し、異常パケットの解析
- TCPセッションのフローを可視化し、どこで遅延が発生しているか特定
③ 問題解決策の適用
- トラフィックの優先順位を調整(QoS設定)
- 障害の原因となる機器や設定の変更を実施
- セキュリティ対策(DDoS攻撃のブロック、ファイアウォールの設定強化)
ネットワークタップ導入時の課題と解決策
ネットワークタップの導入は、ネットワークの可視性を向上させ、セキュリティ対策やトラブルシューティングを強化する重要な施策です。
しかし、導入にあたってはコスト、可用性、拡張性などの課題を考慮する必要があります。
本記事では、ネットワークタップ導入時の主要な課題とその解決策について詳しく解説します。
6-1. 導入コストとROIの考え方
6-1-1. ネットワークタップ導入にかかるコスト
ネットワークタップを導入する際に発生する主なコストには、以下のようなものがあります。
コスト項目 | 内容 |
---|---|
ハードウェアコスト | ネットワークタップ機器の購入費用 |
導入・設置コスト | 機器設置、ケーブル配線、ネットワーク設定の作業費用 |
監視システムのライセンス費 | IDS/IPS、SIEM、パケットキャプチャツールとの統合コスト |
運用コスト | 監視・保守のための人的リソースや定期メンテナンス費用 |
6-1-2. ネットワークタップのROI(投資対効果)
ネットワークタップの導入が企業にとってどのようなリターンをもたらすかを考慮することが重要です。
ネットワークタップによるROI向上のポイント
- ダウンタイムの削減:迅速な障害対応により、業務継続性を向上
- セキュリティリスクの低減:ネットワーク監視によるサイバー攻撃の早期検知・対応
- 運用効率の向上:自動化されたトラフィック監視による運用負担の軽減
項目 | 導入前 | 導入後 |
---|---|---|
障害対応時間 | 1時間以上 | 15分以内 |
データ損失リスク | 高い | 最小限に抑制 |
セキュリティインシデント | 発生リスク大 | 早期検知・対応可能 |
6-1-3. コスト削減のための最適な導入計画
導入コストを抑えながらネットワークタップのメリットを最大化するには、以下の方法が有効です。
- 必要なリンクのみに導入(全てのネットワークに設置するのではなく、重要なリンクに絞る)
- 段階的な導入を計画(最初に小規模で試験運用し、徐々に拡張)
- クラウドベースの監視ツールとの連携(オンプレミス機器を最小限にし、コストを抑える)
6-2. ネットワークの可用性と信頼性の確保
6-2-1. ネットワークタップ導入が可用性に与える影響
ネットワークタップは、トラフィックをコピーする装置であり、適切に導入しないとネットワークの可用性に影響を与える可能性があります。
影響 | 詳細 |
---|---|
通信の中断 | インライン設置時、機器障害が発生すると通信に影響を与える可能性 |
信号減衰 | パッシブタップ(特に光ファイバ)では、信号強度が低下することがある |
ネットワーク負荷の増加 | 監視ツールへの送信負荷が増加し、ネットワークの帯域を圧迫することがある |
6-2-2. 高可用性を確保するための解決策
ネットワークの可用性を維持しながらネットワークタップを導入するための方法を紹介します。
① 冗長化構成を採用
- バイパススイッチを導入し、ネットワークタップが故障しても通信を維持
- 複数のタップを用意し、冗長化(負荷分散)
② 適切なネットワークタップの選択
- アクティブタップを使用(パッシブタップより信号強度が安定)
- NPB(ネットワークパケットブローカー)を活用し、トラフィックの負荷を適切に管理
③ 監視デバイスの負荷分散
- フィルタリング機能付きタップを利用し、必要なトラフィックのみを監視ツールに送信
- 監視システムの最適化(適切なトラフィック量を確保)
6-3. 将来の拡張性とスケーラビリティ
6-3-1. ネットワークタップ導入時に考慮すべき拡張性のポイント
ネットワークタップの導入後、将来的なネットワークの成長に対応できる設計が求められます。
拡張性を考慮すべき要素
- トラフィック量の増加(10Gbpsから40Gbps、100Gbpsへの移行)
- 監視対象の増加(新規デバイスやIoT機器の追加)
- 新たなセキュリティ要件(ゼロトラストモデルの導入)
6-3-2. スケーラブルなネットワークタップ設計のポイント
拡張性を確保するための設計ポイントを紹介します。
① 高速対応のネットワークタップを導入
- 40Gbps、100Gbps対応のタップを選択
- 将来的な帯域拡張を見越したネットワーク構成を採用
② NPB(ネットワークパケットブローカー)との組み合わせ
- NPBを導入することで、複数のネットワークタップを統合管理
- 監視対象を柔軟に変更し、スケーラビリティを確保
③ クラウド対応の監視ツールとの統合
- オンプレミスとクラウドの両方を監視できるハイブリッドソリューションを導入
- クラウドベースのログ分析ツールと連携し、効率的なトラフィック監視を実現