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ネットワーク QoSとは?初心者でもわかる基本概念と設定方法を徹底解説!

ネットワークの遅延やWeb会議の途切れ、VoIPの音質低下に悩んでいませんか?

それは 「ネットワーク QoS(Quality of Service)」 を適切に設定することで解決できるかもしれません。

QoSは、重要な通信を優先し、帯域を最適に管理する技術 ですが、設定方法が複雑で「何をどうすればいいのかわからない」と感じる人も多いはず。

本記事では、QoSの基本から実践的な設定方法、最新のトレンド までを分かりやすく解説します。

あなたのネットワーク環境を快適にするために、今すぐチェックしましょう!

外資系エンジニア

この記事は以下のような人におすすめ!

  • QoSとは何か仕組みを知りたい人
  • どのような場面でQoSを利用するのかわからない
  • 適切なQoSをどのように設定すれば良いのかわからない

ネットワークのQoS基礎知識

現代のネットワーク環境では、動画ストリーミングやWeb会議、クラウドサービスの普及により、通信の品質がますます重要になっています。

「ネットワーク QoS」は、こうした通信品質を最適化し、安定したネットワーク環境を提供するための技術です。

本記事では、ネットワークQoSの基本からその必要性、関連する概念について詳しく解説します。


1-1. QoSとは何か

1-1-1. QoSの定義と目的

QoS(Quality of Service)とは、ネットワーク上で流れるデータの優先順位を制御し、特定のトラフィックに対して安定した通信品質を提供する技術のことを指します。

特に、リアルタイム性が求められる通信(VoIP、ビデオ会議、オンラインゲームなど)では、QoSの適切な設定が不可欠です。

QoSの主な目的:

  • ネットワークトラフィックの優先度を制御し、重要な通信の遅延を防ぐ
  • 帯域幅を効率的に管理し、ネットワークの混雑を回避する
  • 音声や映像などのリアルタイムデータの品質を維持する

1-1-2. QoSが重要な理由

ネットワークを利用する環境が多様化する中で、QoSが求められる理由はいくつかあります。

1. ネットワーク混雑の回避 

企業ネットワークやインターネット回線では、複数のユーザーが同時にアクセスすることで、通信が混雑しやすくなります。

QoSを適用することで、特定のアプリケーションやサービスに帯域を確保し、円滑な通信を実現できます。

2. 遅延・ジッタの最小化 

特にWeb会議やVoIPでは、音声や映像の遅延が発生すると、スムーズなコミュニケーションが難しくなります。

QoSによってデータ転送の優先度を設定することで、通信遅延を抑えられます。

3. 企業ネットワークにおける安定性向上 

クラウドサービスやリモートワークの普及により、社内ネットワークの品質が業務の効率性に直結するようになりました。

QoSを導入することで、業務で利用するアプリケーションの通信品質を安定させることができます。


1-2. QoSが必要とされる背景

近年、ネットワークQoSの重要性が高まっている理由は、大きく分けて以下の3つです。

背景詳細
1. ネットワークのトラフィック増加動画配信サービスやクラウドアプリの利用が増加し、帯域を圧迫している。
2. リアルタイム通信の普及Web会議やVoIPの需要が増え、通信遅延の影響が顕著になっている。
3. 企業ネットワークのクラウド移行SaaSやリモートアクセスの増加により、安定したネットワーク環境が求められる。

特に、企業ネットワークではクラウドベースのアプリケーションが業務の中心になりつつあります。

例えば、Microsoft TeamsやZoomのようなWeb会議ツールは、QoS設定が適切でないと、音声や映像が途切れたり、遅延が発生する可能性があります。

QoSを適用することで、業務に必要な通信を優先し、円滑なネットワーク環境を維持することができます。


1-3. QoSの基本概念と用語

QoSを理解する上で、以下の主要な概念や用語を把握しておくことが重要です。

1-3-1. QoSに関連する主要用語

用語説明
帯域(Bandwidth)通信回線が処理できるデータの最大量。単位はMbpsやGbps。
遅延(Latency)データが送信されてから受信されるまでの時間。低いほど通信がスムーズ。
ジッタ(Jitter)パケットの送信間隔のばらつき。リアルタイム通信では小さいほど良い。
パケットロスデータが途中で失われること。音声・映像の途切れの原因となる。
DiffServ(Differentiated Services)ネットワークトラフィックを分類し、優先度に応じた処理を行う方式。
IntServ(Integrated Services)アプリケーションごとに帯域を確保するQoSの方式。

QoSでは、特定のトラフィックを優先させるために「トラフィック分類」や「帯域制御」などの技術が用いられます。

例えば、音声や映像の通信は遅延やジッタの影響を受けやすいため、優先度を高く設定することで、通信品質を向上させることが可能です。

QoSの主要技術と手法

「ネットワーク QoS」を適切に機能させるためには、さまざまな技術が組み合わされます。

QoSの目的は、通信の優先度を管理し、遅延やパケットロスを抑え、安定したネットワーク環境を提供することです。

本記事では、QoSの主要な技術である 帯域制御(トラフィックシェーピング)、優先制御(トラフィッククラス)、遅延・ジッタ制御、パケットロス制御 について詳しく解説します。


2-1. 帯域制御(トラフィックシェーピング)

2-1-1. 帯域制御とは?

帯域制御(トラフィックシェーピング)とは、ネットワークの帯域を一定の範囲内に制限し、突発的なトラフィックの増加によるネットワークの混雑を防ぐ技術です。

帯域制御を適用することで、以下のメリットがあります。

  • 特定のアプリケーションやユーザーが帯域を独占するのを防ぐ
  • 突発的なデータ送信(バーストトラフィック)による影響を軽減
  • 安定した通信速度を維持できる

2-1-2. 帯域制御の主な手法

帯域制御には、以下のような技術が使われます。

帯域制御技術説明
トラフィックシェーピング(Traffic Shaping)データ送信速度を制限し、トラフィックを滑らかにする
ポリシング(Traffic Policing)設定した帯域を超えたトラフィックを廃棄または低優先度に変更
帯域予約(Bandwidth Reservation)特定のアプリケーションやユーザー向けに帯域を確保

例えば、企業ネットワークでは、業務用アプリケーション(Microsoft TeamsやZoom)を優先し、SNSや動画視聴の帯域を制限することで、業務の効率を維持することが可能です。


2-2. 優先制御(トラフィッククラス)

2-2-1. 優先制御とは?

優先制御(トラフィッククラス)とは、ネットワーク上のデータパケットに 優先度 を設定し、重要な通信が迅速に処理されるようにする技術です。

優先制御が重要な理由:

  • 重要な通信(VoIPやWeb会議など)を最優先に処理できる
  • 帯域を有効活用し、業務に影響を与えないネットワーク環境を構築できる
  • トラフィックの分類によって、QoSポリシーを柔軟に適用できる

2-2-2. トラフィックの分類

ネットワーク QoS では、データの種類ごとにトラフィックを分類し、それぞれに適した優先度を設定します。

クラス優先度主な用途
高優先度(Real-Time)最優先VoIP、ビデオ会議、オンラインゲーム
中優先度(Business Critical)企業の業務アプリ(ERP、CRM)
低優先度(Best Effort)Web閲覧、メール、SNS
バックグラウンド最低OSアップデート、クラウドバックアップ

優先度の高い通信がネットワークをスムーズに流れるようにすることで、ユーザー体験の向上が期待できます。


2-3. 遅延・ジッタ制御

2-3-1. 遅延とジッタとは?

ネットワーク QoS において、遅延(Latency) や ジッタ(Jitter) は、特にリアルタイム通信(VoIPやオンライン会議)において重要な要素です。

用語説明
遅延(Latency)データが送信されてから届くまでの時間
ジッタ(Jitter)データの送信間隔が不規則になる現象

遅延やジッタが発生すると、音声が途切れたり、映像がカクついたりする原因となります。

2-3-2. 遅延・ジッタを抑える方法

遅延やジッタを最小限に抑えるために、以下の技術が使用されます。

技術説明
キューイング(Queuing)優先度に応じてパケットを処理する
パケットスケジューリング重い処理を優先せず、リアルタイム通信を優先的に処理
バッファリング一時的にデータを保存し、均等に送信する

例えば、企業のWeb会議システムで遅延を抑えるために、リアルタイム通信用の専用帯域を確保 することが有効です。


2-4. パケットロス制御

2-4-1. パケットロスとは?

パケットロスとは、データの一部が途中で失われる現象を指します。パケットロスが発生すると、音声や映像が乱れたり、データの転送速度が低下したりする原因となります。

状況影響
Web会議音声が途切れる、映像が停止する
オンラインゲームラグが発生、コマンドの遅延
ファイル転送転送失敗、再送の増加

2-4-2. パケットロスを防ぐ方法

パケットロスを最小限に抑えるために、以下の対策が有効です。

対策説明
FEC(Forward Error Correction)冗長データを送信し、エラーを自動修正
パケットリトライ失われたデータを再送要求する
優先キューイング重要なパケットを優先して処理

たとえば、Wi-Fi環境でのパケットロスが多発する場合は、有線LANを利用する ことで安定した通信が確保できます。

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QoSの実装方法

ネットワーク QoS を実装するには、複数の方式や技術を組み合わせる必要があります。

特に、DiffServ(Differentiated Services)とIntServ(Integrated Services) の2つのモデルは、QoSを適用する上で重要な概念です。

また、QoSを実現するための各種プロトコルや、ネットワーク機器での具体的な設定例についても理解しておく必要があります。

本記事では、ネットワーク QoS の実装方法について詳しく解説します。


3-1. DiffServ(Differentiated Services)の概要

3-1-1. DiffServとは?

DiffServ(Differentiated Services)は、ネットワーク QoS を大規模な環境で効率的に適用するための方式です。

各パケットに優先度を付与し、異なるトラフィッククラスごとに異なる処理を行います。

3-1-2. DiffServの特徴

DiffServの主な特徴は以下の通りです。

  • スケーラブルなQoS:ルーターが個々のフローを管理するのではなく、パケットごとに優先度を設定するため、ネットワーク負荷を軽減できる。
  • DSCP(Differentiated Services Code Point)の利用:IPパケットのヘッダー内にある「DSCPフィールド」を使って優先度を設定する。
  • トラフィック分類による最適化:音声、映像、データトラフィックを分類し、それぞれ異なる処理を適用。

3-1-3. DiffServの動作イメージ

DiffServでは、トラフィックを以下のように分類し、優先度を設定します。

DSCP値クラス名優先度主な用途
46(EF)Expedited ForwardingVoIP、ビデオ会議
34(AF41)Assured Forwarding企業業務アプリ(ERP、CRM)
0(BE)Best EffortWeb閲覧、メール

例えば、ビデオ会議は「Expedited Forwarding」に分類し、遅延を最小限に抑える処理を適用できます。


3-2. IntServ(Integrated Services)の概要

3-2-1. IntServとは?

IntServ(Integrated Services)は、アプリケーションごとに帯域を確保し、ネットワークの品質を保証するQoS方式です。

アプリケーションが事前に帯域を予約することで、確実な通信品質を提供できます。

3-2-2. IntServの特徴

IntServの主な特徴は以下の通りです。

  • 帯域予約の仕組み(RSVP):アプリケーションがネットワーク機器に帯域をリクエストし、必要な帯域が確保された場合のみ通信を行う。
  • 個々のフローごとに管理:DiffServとは異なり、個々の通信セッションに対してQoSを適用する。
  • 厳格なQoS保証:帯域を事前に確保するため、遅延やパケットロスを最小限に抑えられる。

3-2-3. IntServとDiffServの違い

項目DiffServIntServ
QoSの適用単位パケット単位セッション単位
スケーラビリティ高い(大規模ネットワーク向け)低い(小規模・専用ネットワーク向け)
帯域確保なし(優先制御のみ)あり(RSVPによる予約)

IntServは、帯域が確保されるため安定した通信が可能ですが、スケーラビリティに欠けるため、DiffServとの組み合わせが一般的です。


3-3. 各種プロトコルとQoSの関係

ネットワーク QoS を実装するためには、さまざまなプロトコルが活用されます。

以下に代表的なQoS関連プロトコルを紹介します。

プロトコル役割
RSVP(Resource Reservation Protocol)IntServで帯域を予約するためのプロトコル
DSCP(Differentiated Services Code Point)DiffServでパケットの優先度を設定する仕組み
802.1pVLAN環境でQoSを適用するための優先度タグ
MPLS(Multi-Protocol Label Switching)QoSを考慮したトラフィックのルーティング

特に企業ネットワークでは、MPLSを活用したQoSの適用 が一般的です。

MPLSは、従来のIPルーティングよりも優れた制御を可能にし、VoIPや映像配信の安定化に貢献します。


3-4. ネットワーク機器でのQoS設定例

ネットワーク QoS は、ルーターやスイッチなどの機器で設定することで有効化できます。

ここでは、Ciscoルーターを例にして、QoS設定の基本的な手順を紹介します。

3-4-1. DSCPを使ったQoS設定(Ciscoルーター)

以下の設定例では、VoIPトラフィックを最優先にし、他の通信よりも高い優先度を与えるQoSを適用します。

class-map VOICE
match dscp ef

policy-map QOS_POLICY
class VOICE
priority 1000
class class-default
fair-queue

interface GigabitEthernet0/1
service-policy output QOS_POLICY


設定のポイント

  • class-map VOICE:DSCP値EF(Expedited Forwarding)に該当するトラフィックを識別
  • policy-map QOS_POLICY:優先度を設定し、VoIPトラフィックに1Mbpsの帯域を確保
  • service-policy:インターフェースにQoSポリシーを適用

3-4-2. Linux環境でのQoS設定(tcコマンド)

Linuxではtc(Traffic Control)コマンドを使ってQoSを適用できます。

tc qdisc add dev eth0 root handle 1: htb default 30
tc class add dev eth0 parent 1: classid 1:1 htb rate 10mbit ceil 15mbit
tc filter add dev eth0 protocol ip parent 1:0 prio 1 u32 match ip dscp 46 0xff flowid 1:1


設定のポイント

  • htb(Hierarchical Token Bucket)を使って帯域制御
  • rate(基本帯域)とceil(最大帯域)を設定
  • match ip dscp 46でVoIPトラフィックを識別し、優先度を設定

QoS設定の手順とポイント

ネットワーク QoS を適用することで、企業や個人のネットワーク環境を最適化し、安定した通信品質を実現できます。

しかし、QoSを効果的に導入するためには、適切な計画と設定が必要です。

本記事では、ネットワーク QoS を設定するための具体的な手順とポイント を解説します。


4-1. ネットワーク要件の分析

4-1-1. QoSを導入する目的を明確にする

QoSを導入する前に、ネットワークの利用状況や課題を明確に分析 する必要があります。

以下のようなポイントを考慮しましょう。

  • ネットワークのボトルネックはどこか?
  • リアルタイム通信(VoIP、ビデオ会議)が影響を受けているか?
  • 業務で使用するアプリケーションに優先度を設定する必要があるか?

4-1-2. ネットワーク環境を把握する

QoSの設定を最適化するためには、ネットワークの現状を把握することが重要です。以下の項目を分析しましょう。

分析項目説明
帯域幅利用可能な回線の帯域(例:100Mbps, 1Gbps)
トラフィック種別音声・映像・データ通信の割合
通信の優先度どの通信を最優先にするか
ネットワーク機器ルーターやスイッチがQoSに対応しているか

例えば: 企業のネットワークで Web会議が頻繁に途切れる 場合、ビデオ通話用の帯域を確保し、SNSやファイルダウンロードの帯域を制限することで解決できます。


4-2. QoSポリシーの設計

4-2-1. トラフィック分類を決定する

QoSでは、トラフィックを分類し、それぞれに適切な処理を適用します。

以下のような分類が一般的です。

クラス優先度主な用途
高優先度(Real-Time)最優先VoIP、ビデオ会議、オンラインゲーム
中優先度(Business Critical)企業業務アプリ(ERP、CRM)
低優先度(Best Effort)Web閲覧、メール、SNS
バックグラウンド最低OSアップデート、クラウドバックアップ

4-2-2. QoSポリシーの適用例

トラフィックごとに 帯域幅を制限 したり、優先制御を適用 したりすることで、快適なネットワーク環境を構築できます。

  • VoIP(音声通話) → 高優先度、遅延を最小化するために専用帯域を確保
  • ストリーミング動画 → 適切な帯域を確保するが、VoIPより優先度は低め
  • ファイルダウンロード → 帯域を制限し、他の通信を圧迫しないようにする

4-3. ルーターやスイッチでの設定手順

QoSの設定方法は、ネットワーク機器の種類によって異なります。

ここでは、Ciscoルーター を例に、具体的な設定手順を紹介します。

4-3-1. CiscoルーターでのQoS設定

ステップ1:トラフィック分類 VoIPトラフィックを優先的に処理するために、DSCP(Differentiated Services Code Point) を使って分類します。

class-map VOICE
match dscp ef


ステップ2:ポリシーの適用 優先度を設定し、VoIPトラフィックの帯域を確保します。

policy-map QOS_POLICY
class VOICE
priority 1000
class class-default
fair-queue


ステップ3:インターフェースに適用 QoSポリシーを適用し、トラフィック管理を実施します。

interface GigabitEthernet0/1
service-policy output QOS_POLICY


4-3-2. Linux環境でのQoS設定(tcコマンド)

Linuxでは、tc(Traffic Control)コマンドを使ってQoSを設定できます。

tc qdisc add dev eth0 root handle 1: htb default 30
tc class add dev eth0 parent 1: classid 1:1 htb rate 10mbit ceil 15mbit
tc filter add dev eth0 protocol ip parent 1:0 prio 1 u32 match ip dscp 46 0xff flowid 1:1


設定のポイント

  • htb(Hierarchical Token Bucket)を使って帯域を管理
  • rate で基本帯域を設定し、ceil で最大帯域を制限
  • match ip dscp 46 でVoIPトラフィックを優先する

4-4. 設定後の効果検証方法

QoS設定を適用した後は、実際に効果が出ているかを検証することが重要です。

4-4-1. ネットワークモニタリングツールの活用

QoSが適切に機能しているか確認するために、以下のツールを使用します。

ツール説明
Wiresharkパケットキャプチャを行い、QoS設定が適用されているか確認
Ping遅延(Latency)を測定
iperf帯域の使用状況を確認
SNMPネットワーク機器のトラフィック情報を収集

4-4-2. QoSの効果を数値で評価する

QoSの効果を測定するために、設定前後のパフォーマンスを比較しましょう。

項目QoS設定前QoS設定後
VoIPの遅延120ms30ms
ビデオ会議のパケットロス率5%0.5%
帯域使用率(VoIP)低(不安定)高(安定)

例えば、VoIPの遅延が大幅に減少していれば、QoSが正常に動作していることがわかります。

QoSに関するトラブルシューティング

ネットワーク QoS を適用することで通信の品質を向上させることができますが、適切に設定されていないとトラブルの原因になる こともあります。

たとえば、QoSのポリシーが間違って適用されていたり、帯域制限の設定が厳しすぎたりすると、かえって通信が不安定になる 可能性があります。

本記事では、QoSに関するよくある問題とその原因、問題を解決するための診断手法、トラブルを未然に防ぐためのベストプラクティス について詳しく解説します。


5-1. よくある問題とその原因

QoS設定を適用したにもかかわらず、ネットワークの品質が向上しない場合、以下のような問題が考えられます。

5-1-1. QoSが正しく適用されていない

症状

  • VoIPの音声が途切れる
  • Web会議が頻繁にフリーズする
  • 特定のアプリケーションの通信が遅い

考えられる原因

  • ルーターやスイッチで QoSポリシーが適用されていない
  • DSCPタグが正しく設定されていない(DiffServが機能していない)
  • QoSの設定がネットワーク機器間で 一貫していない

5-1-2. 帯域制限の設定ミス

症状

  • トラフィックが制限されすぎて業務に支障が出る
  • 帯域を確保したはずの通信が遅い
  • 他のアプリケーションに影響を与えている

考えられる原因

  • 帯域予約(IntServ)の設定が適切でない
  • QoSの ポリシーが厳しすぎる
  • ネットワークの 全体的な帯域幅が不足している

5-1-3. キューイングの誤設定

症状

  • 音声や映像の遅延が発生する
  • 特定の通信が優先されず、ベストエフォート扱いになっている

考えられる原因

  • QoSキュー(FIFO、WRR、PQ など)の設定が適切でない
  • リアルタイム通信(VoIP、ビデオ会議)が適切なキューに分類されていない
  • 優先度の高いトラフィックが他の通信によって影響を受けている

5-2. 問題解決のための診断手法

QoSのトラブルを特定するためには、適切な診断手法を用いることが重要です。

5-2-1. QoSの適用状況を確認する

まず、QoSが正常に動作しているかを確認するために、以下のコマンドを使用します。

CiscoルーターでQoS設定を確認

show policy-map interface GigabitEthernet0/1

このコマンドを実行すると、各トラフィッククラスのパケット数や帯域使用率が表示されます。


LinuxでQoSの適用状況を確認

tc -s qdisc show dev eth0


このコマンドで、現在適用されているQoSポリシーの統計情報を確認できます。


5-2-2. ネットワークトラフィックを分析する

QoS設定が適用されているかどうかは、パケットキャプチャツールを使用して確認することができます。

ツール目的
Wiresharkパケットキャプチャを行い、DSCPタグの有無を確認
iperfQoS適用後の帯域幅を測定
SNMPルーターやスイッチのトラフィック状況を監視

WiresharkでDSCPタグを確認する方法

  1. Wiresharkを開く
  2. ip.dsfield でフィルタリング
  3. VoIPやビデオ会議のパケットに 適切なDSCP値(EFなど)が適用されているか確認

5-2-3. 帯域使用状況をモニタリングする

QoSのトラブルは 帯域の使用状況 に影響されることが多いため、リアルタイムでのモニタリングが重要です。

  • 帯域の使用率が過剰 → QoSの効果が発揮されにくい
  • 優先度の高い通信が制限されている → 設定のミスを疑う

5-3. トラブルを未然に防ぐためのベストプラクティス

QoSのトラブルを防ぐために、以下のベストプラクティスを実践しましょう。

5-3-1. QoSポリシーを定期的に見直す

ネットワークの利用状況は時間とともに変化するため、定期的にQoSポリシーを見直すことが重要です。

項目見直しのポイント
VoIPの品質音声の途切れや遅延がないか
ビデオ会議映像がスムーズに表示されるか
帯域の使用状況優先度の高いトラフィックが適切に処理されているか

5-3-2. 過剰なQoS設定を避ける

QoSの設定が細かすぎると、かえって通信が不安定になることがあります。

最小限の設定で最大限の効果を得られるよう調整 しましょう。

よくある失敗例

  • 帯域制限をかけすぎる → 逆に重要な通信が制限されてしまう
  • DSCPの設定ミス → 一部の通信だけが優先されすぎて、他の通信が極端に遅くなる

5-3-3. ネットワーク機器のQoS対応を確認する

古いネットワーク機器では、QoSの設定が適用できないことがあります。

QoSを適用する前に、ネットワーク機器がQoS対応であるか を確認しましょう。

機器QoS対応状況の確認方法
ルーターshow version コマンドでQoS機能の有無を確認
スイッチshow mls qos でQoS設定の適用状況を確認
Wi-Fi APQoS対応(WMM)が有効になっているか確認

最新のQoS動向と事例紹介

ネットワーク QoS は、従来の企業ネットワークに加え、SD-WAN、クラウド環境、IoT の分野でもますます重要性を増しています。

最新のQoS技術は、ネットワークの多様化に伴い進化を続けており、より柔軟で効率的な通信管理が求められています。

本記事では、最新のQoS動向と、各分野における適用事例 について詳しく解説します。


6-1. SD-WANにおけるQoSの最適化

6-1-1. SD-WANとは?

SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)は、従来のWAN(広域ネットワーク)よりも柔軟で効率的な通信を可能にする技術です。

従来のWANは専用回線(MPLSなど)を利用するのが一般的でしたが、SD-WANでは複数の回線(ブロードバンド、LTE、5Gなど)を組み合わせて最適な経路を選択 することができます。

6-1-2. SD-WANにおけるQoSの最適化ポイント

SD-WANでは、以下のようなQoS最適化が可能です。

QoS最適化技術説明
アプリケーション優先制御重要なアプリケーション(VoIP、Web会議)を優先する
ダイナミックパスセレクション回線品質をリアルタイムで監視し、最適な経路を選択
FEC(Forward Error Correction)パケットロスが発生しても再送不要で補正
WAN最適化データ圧縮や重複排除で帯域を効率化

例えば、Microsoft Teams や Zoom などのWeb会議のトラフィックを最優先し、SNSや動画ストリーミングの帯域を制限する ことで、スムーズな会議を実現できます。


6-2. クラウド環境でのQoS適用事例

6-2-1. クラウド環境でQoSが必要な理由

近年、多くの企業がSaaS(Software as a Service)やIaaS(Infrastructure as a Service) などのクラウドサービスを活用するようになりました。

しかし、クラウドサービスのパフォーマンスはインターネット回線の品質に依存するため、QoSを適用しないと通信が不安定になる可能性があります。

6-2-2. クラウド環境におけるQoSの適用方法

クラウド環境でQoSを適用する際には、以下の技術が活用されます。

QoS適用方法説明
MPLS + QoSクラウドへの専用線を利用し、高品質な通信を確保
SD-WANの導入インターネット経由でクラウド接続する際にQoSを適用
エンドポイントQoSクラウドアプリ(Microsoft 365など)を優先する設定

事例:クラウドERPのQoS適用 

ある企業では、クラウド型ERP(Enterprise Resource Planning)を導入したところ、ネットワーク混雑によりシステムのレスポンスが遅延。

SD-WANとQoSを適用することで、ERPの通信を優先し、快適な業務環境を実現しました。


6-3. IoT時代におけるQoSの重要性

6-3-1. IoTにおける通信の特徴

IoT(Internet of Things)の普及により、多くのデバイスがネットワークに接続されるようになりました。

IoT通信の特徴は以下の通りです。

  • リアルタイム性が求められる(産業用IoT、医療IoT)
  • 小さなデータを頻繁に送信(センサーデバイス)
  • 膨大な数のデバイスが同時に通信(スマートシティ、スマートホーム)

6-3-2. IoT向けQoSの適用ポイント

IoT環境では、用途に応じたQoSの最適化 が求められます。

IoTの用途QoS適用ポイント
医療IoT(遠隔手術)超低遅延(Ultra-Low Latency)を実現
自動運転(V2X通信)高速・高信頼な通信(5G + QoS)
スマートシティ(監視カメラ)帯域を確保し、映像品質を維持

例えば、自動運転では、1ミリ秒の遅延が事故につながる ため、超低遅延のQoS設定が不可欠です。


6-4. 最新のQoS関連技術とプロトコル

6-4-1. 5GとQoS

5Gでは、ネットワークスライシング という技術を活用することで、用途ごとにQoSを適用できます。

スライスの種類QoSの特徴用途
eMBB(Enhanced Mobile Broadband)高速通信動画ストリーミング、AR/VR
URLLC(Ultra-Reliable Low Latency Communications)超低遅延自動運転、遠隔医療
mMTC(Massive Machine Type Communications)大量接続IoT、スマートシティ

たとえば、自動運転の通信はURLLC、スマートホームのセンサーデータはmMTCに分類される ことで、それぞれ適切なQoSが適用されます。


6-4-2. AIと機械学習を活用したQoS最適化

AIを活用したQoS最適化が進んでおり、トラフィックの状況をリアルタイムで分析し、動的にQoSポリシーを変更 できる技術が登場しています。

AIを活用したQoS技術説明
トラフィック予測AIがトラフィックの増減を予測し、QoSポリシーを動的に変更
自動パケット分類AIがリアルタイムでパケットを解析し、適切なQoSクラスに分類
ネットワーク自己最適化機械学習を用いて最適な帯域割り当てを自動化

例えば、AIが過去の通信データを学習し、特定の時間帯にQoSを強化する ことで、ネットワークのパフォーマンスを向上させることができます。