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VLANとは?初心者でもわかる仕組みと設定方法を完全解説!

「VLANって聞いたことあるけど、実はよくわかっていない…」「設定したのに通信できない」「セキュリティに強いネットワークを作りたい」——そんな悩みはありませんか?

この記事では、VLANの基本から設定方法、よくあるトラブルの対処法、セキュリティ強化のポイントまで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。

外資系エンジニア

この記事は以下のような人におすすめ!

  • VLANとは何か知りたい人
  • 具体的にどのような動作をするのか知りたい
  • どのような場面で利用する技術なのか知りたい

VLANの基礎を知ろう

1-1. VLANとは何か?

1-1-1. ネットワークの分割と論理的グループ化の仕組み

VLAN(Virtual Local Area Network)とは、日本語で「仮想LAN」と訳され、ネットワークを論理的に分割するための技術です。物理的には同じスイッチに接続されている端末でも、VLANを使えば異なるネットワークグループとして機能させることができます。

つまり、ケーブルを変えずに、スイッチ上の設定だけでネットワークの構造を変えられるのがVLANの特徴です。

1-1-2. 実際の活用シーンから理解するVLAN

具体的な活用例としては、次のようなケースが挙げられます。

  • 部署ごとのネットワーク分離
    営業部、技術部、人事部といった部署ごとにVLANを分け、不要な通信を遮断します。
  • 来客用ネットワークの隔離
    社内LANと来客用Wi-FiをVLANで分けることで、社内データへのアクセスを防止します。
  • トラフィックの最適化
    音声通信(VoIP)や映像配信といった用途ごとにVLANを分け、帯域を確保します。

このように、VLANはセキュリティとネットワークパフォーマンスを両立させる鍵となります。


1-2. なぜVLANが必要なのか?

1-2-1. ネットワーク効率化とセキュリティの観点から見るメリット

VLANを導入することで、次のような効果が得られます。

  • ブロードキャストの抑制
    ネットワーク全体に不要な通信が広がるのを防げます。
  • 障害の影響範囲を限定
    VLAN単位でネットワークを分割することで、障害の拡大を防止できます。
  • 柔軟な構成変更
    物理的な配線を変えずに、ネットワーク構成を論理的に調整できます。

これらは特に大規模な企業ネットワークで有効ですが、小規模ネットワークでも十分に恩恵があります。

1-2-2. 企業ネットワークにおけるVLANの重要性

現代の企業では、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まっています。VLANを使えば、業務ごとにネットワークを分離し、アクセス権を制御することでセキュリティレベルを向上させることができます。

また、ネットワーク管理の視点でも、VLANにより構成が明確になり、障害時の対応やメンテナンスもスムーズになります。


1-3. VLANの種類と特徴

1-3-1. ポートベースVLAN、タグVLAN、MACアドレスVLANの違いと使い分け

VLANには複数の方式があります。それぞれの違いと適用シーンを以下にまとめます。

VLANの種類特徴適した用途
ポートベースVLANスイッチのポート単位でVLANを割り当てる小規模ネットワーク、簡単な管理
タグVLAN(IEEE 802.1Q)フレームにタグを付けてVLAN情報を伝える複数スイッチをまたぐ構成
MACアドレスベースVLAN接続端末のMACアドレスでVLANを識別ノートPCなど移動端末に対応

それぞれの方式には利点と制限があるため、ネットワーク規模や運用方針に応じて適切なVLAN方式を選ぶことが重要です。

VLANの仕組みを理解しよう

2-1. VLANタグとIEEE 802.1Qとは?

2-1-1. VLANタグの構造と意味

VLANタグとは、イーサネットフレームの中に追加される情報で、そのフレームがどのVLANに属するかを示すものです。特に広く使われているのが「IEEE 802.1Q」という規格で、このタグはフレームに追加され、スイッチ間でのVLAN情報の共有に使われます。

VLANタグの構造は以下のようになっています。

フィールド名ビット数説明
TPID(Tag Protocol Identifier)16bit0x8100で固定。タグ付きフレームの識別子
PCP(Priority Code Point)3bitQoS(通信優先度)制御用
DEI(Drop Eligible Indicator)1bit廃棄可能なフレームの識別
VLAN ID12bitVLANを識別する番号(1〜4094)

つまり、VLANタグによって、複数のスイッチが接続された環境でも、正確にVLANを識別しネットワークを論理的に分割することが可能になります。

2-1-2. タグ付きフレームの動きとトランクポートの役割

VLANタグは、基本的にスイッチ間で通信を行う「トランクポート」と呼ばれるポートで利用されます。以下のように機能します。

  • タグ付きフレーム(tagged frame):複数のVLAN情報を持ち、トランクポートを通過する際に使用される
  • アンタグフレーム(untagged frame):タグが付いておらず、アクセスポート(端末が直接つながるポート)で使用される

トランクポートは、1本のケーブルで複数のVLANのフレームを運ぶことができるため、大規模なネットワーク構成には不可欠です。したがって、タグ付きフレームとトランクポートを理解することは、VLAN構成の基礎となります。


2-2. VLAN間通信の仕組み

2-2-1. レイヤ3スイッチとルーターを使った通信方法

VLANは論理的にネットワークを分割するため、異なるVLAN間では直接通信できません。異なるVLAN間で通信を行うためには、ルーティングが必要です。

このルーティングには主に以下の2つの方法があります。

  • ルーターを使う方法(ルーター・オン・ア・スティック)
    1つの物理インターフェースにサブインターフェースを作成し、各VLANに対応させてルーティングを行う
  • レイヤ3スイッチを使う方法
    VLANごとにインターフェースを設定し、スイッチ内部で直接ルーティングを行う(高速で効率的)

どちらの方法を使うかは、ネットワークの規模や性能要件によって異なります。

2-2-2. Inter-VLANルーティングの基本と実装例

Inter-VLANルーティングとは、異なるVLAN間の通信を可能にするためのルーティング技術です。たとえば、営業部(VLAN 10)と開発部(VLAN 20)の端末同士が通信できるようにするには、以下のような構成になります。

【例:レイヤ3スイッチを使ったInter-VLANルーティングの設定概要】

interface vlan 10
ip address 192.168.10.1 255.255.255.0

interface vlan 20
ip address 192.168.20.1 255.255.255.0

ip routing

このように、VLANごとに仮想インターフェースを設定し、IPアドレスを割り当てた上で「ip routing」を有効にすることで、異なるVLAN間の通信が可能になります。

したがって、VLANタグによってネットワークを分離し、Inter-VLANルーティングによって必要な通信を制御することが、VLAN運用の基本かつ重要なポイントとなります。

VLANの設定方法をマスターしよう

3-1. 基本的なVLAN設定ステップ

3-1-1. VLAN作成、ポート割り当て、トランク設定の手順解説

VLANの設定には、いくつかの基本的なステップがあります。以下の3つの操作が基本です。

  1. VLANの作成
  2. ポートへのVLAN割り当て
  3. トランクポートの設定(必要に応じて)

これらのステップを順に実行することで、スイッチ上で論理的にネットワークを分離する「VLAN環境」が構築されます。

たとえば、VLAN 10(営業部用)とVLAN 20(技術部用)を作成し、それぞれにポートを割り当てることで、通信が分離されます。また、複数のスイッチ間で同じVLANを共有する場合は「トランクポート」の設定が必要です。

3-1-2. スイッチ設定の一般的な流れ

VLANの設定は、基本的に以下のような流れで行われます。

1. スイッチにログイン
2. VLANを作成
3. ポートにVLANを割り当てる(アクセスモード設定)
4. トランクポートを設定(必要に応じて)

この基本的な流れを覚えておくことで、VLAN設定に必要な作業をスムーズに行えるようになります。


3-2. Cisco製スイッチを例にしたVLAN設定

3-2-1. CLIでのVLAN設定手順(例付き)

Ciscoスイッチでは、CLI(コマンドラインインターフェース)を使用してVLANの設定を行うのが一般的です。以下は、よく使われるVLAN設定の例です。

Switch> enable
Switch# configure terminal
Switch(config)# vlan 10
Switch(config-vlan)# name SALES
Switch(config-vlan)# exit

Switch(config)# interface FastEthernet0/1
Switch(config-if)# switchport mode access
Switch(config-if)# switchport access vlan 10
Switch(config-if)# exit

Switch(config)# interface GigabitEthernet0/1
Switch(config-if)# switchport mode trunk
Switch(config-if)# switchport trunk allowed vlan 10,20
Switch(config-if)# exit

このように、VLANの作成 → ポート割り当て → トランク設定という順序で進めることがポイントです。

3-2-2. よくある設定ミスとその防止策

VLAN設定でよくあるトラブルには、以下のようなものがあります。

よくあるミス原因対策
通信できないVLAN未作成・ポート未割り当てVLANの存在確認、show vlanで検証
トランク設定ミスVLANがトランクに許可されていないswitchport trunk allowed vlanの設定確認
VLAN IDの不一致スイッチ間で異なるID使用VLAN IDを統一して管理する

これらのトラブルを未然に防ぐには、設定後に必ず確認コマンド(show vlan, show interfaces trunkなど)を使用して、正しく設定されているかチェックすることが重要です。

VLAN導入時に考えるべき設計ポイント

4-1. VLAN設計の基本ルール

4-1-1. VLAN IDと命名規則の決め方

VLANを設計する際に最初に考えるべきなのが、「VLAN ID」と「名前(VLAN名)」のルール化です。

  • VLAN IDは、1〜4094までの範囲で設定可能ですが、予約されたID(1や1002〜1005など)を避け、ユーザー定義用の2〜1001または1006〜4094の範囲を使うのが一般的です。
  • 命名規則は、後々の管理のしやすさに直結します。たとえば、以下のように部門名や用途を含めた名前にすると視認性が高まります。
VLAN IDVLAN名(例)用途
10VLAN_SALES営業部用
20VLAN_DEV開発部用
99VLAN_MANAGEMENT管理ネットワーク

このように、命名規則を統一することで、運用中のトラブル時も迅速に状況を把握できるようになります。

4-1-2. 規模に応じた設計戦略

ネットワークの規模によって、VLAN設計のアプローチは異なります。

  • 小規模ネットワーク:部門ごとのシンプルなVLAN分割で十分
  • 中〜大規模ネットワーク:階層型のVLAN設計(例:アクセス・ディストリビューション・コア層)を検討
  • 多拠点構成:VLANの統一とトランク構成を意識した設計が必要

また、今後の拡張性も見越して、VLAN IDの予約や、用途別VLAN(VoIP用、監視用など)の設計も考慮するとよいでしょう。


4-2. ネットワーク構成とVLANの組み合わせ

4-2-1. 物理構成と論理構成の整合性

VLANは「論理的なネットワーク分割」ですが、それを活かすには物理構成との整合性が欠かせません。つまり、どのフロア・部屋・ラックにどのVLANを割り当てるかを、スイッチの物理配置と一致させることが重要です。

例えば、物理的には同じスイッチに接続していても、別のVLANに割り当てられている端末は通信できません。逆に、物理的に離れていてもトランクで接続されていれば、同じVLANで通信可能です。

したがって、設計段階で「どの端末をどのVLANに割り当てるか」と「そのVLANがどのスイッチ間を通過するか」を明確にしておきましょう。

4-2-2. 冗長性やセキュリティを考慮した構成例

VLAN設計では、冗長性セキュリティも重要な観点です。以下にその例を紹介します。

【冗長性の考慮ポイント】

  • コアスイッチを2台構成してVLANトラフィックの経路を冗長化
  • トランクリンクを複数経路で確保して障害時も通信を維持

【セキュリティの考慮ポイント】

  • 管理系VLAN(例:VLAN 99)を一般端末と分離し、アクセス制限を強化
  • 来客用ネットワークを別VLANにし、社内ネットワークとの通信を遮断

このように、VLANをうまく設計することで、可用性の高いネットワーク構築とセキュリティの強化を同時に実現できます。

VLANトラブルシューティング術

5-1. VLANでよくあるトラブルと対処法

5-1-1. 通信できないときの確認ポイント

VLANを運用していると、「なぜか通信できない」というトラブルに直面することがあります。こうした問題が発生した際は、以下のポイントを順番に確認することで、原因を効率的に特定できます。

通信不能時のチェックリスト:

  • 該当ポートに正しいVLANが割り当てられているか?
  • スイッチ間のトランクポートが正しく設定されているか?
  • 対象のVLANがすべてのスイッチ上で作成されているか?
  • 物理接続に問題はないか?(ケーブル・リンク状態)

このように、構成全体を俯瞰しながらチェックを進めることが、VLANトラブルを解決する近道です。

5-1-2. VLAN設定ミスのパターンと対応策

VLAN設定に関するトラブルは、実は基本的な設定ミスが原因であることが多いです。以下のようなパターンは特に頻出です。

トラブルの例原因対応策
ポートにVLANが割り当てられていないVLAN設定の漏れshow vlanで確認し、割り当てる
トランクポートでVLANが許可されていないallowed vlanの設定不足switchport trunk allowed vlanを再確認
VLAN IDの不一致スイッチ間でIDが異なる同一のVLAN IDを使用し統一

このようなトラブルは設定手順を丁寧に確認することで防ぐことができます。したがって、設定後の検証は必須です。


5-2. トラブル時に使える確認コマンド

5-2-1. Ciscoスイッチなどで使える便利な確認コマンド

Cisco製のスイッチでVLAN設定をトラブルシュートする際には、以下のコマンドが非常に役立ちます。

コマンド概要
show vlan brief各ポートのVLAN割り当てを確認
show interfaces trunkトランクポートの状態と許可VLANを確認
show running-config現在の設定内容全体を確認
show interfaces statusポートのリンク状態や接続デバイス情報を表示

これらのコマンドを活用することで、VLAN関連の設定ミスや物理的なトラブルを迅速に発見することができます。

5-2-2. 実際のログで見る問題の切り分け方

トラブルシューティングでは、単に設定を見るだけでなく、状況に応じてログを確認することも重要です。以下は、VLANトラブルの診断で役立つ実例です。

【ログ診断の一例】

%LINK-3-UPDOWN: Interface FastEthernet0/1, changed state to down

このようなログが出力されていた場合、ケーブル抜けやスイッチの再起動、ポートのシャットダウンなどが原因である可能性があります。

また、show loggingコマンドを使えば、スイッチ内のシステムメッセージを確認できるため、タイミングと原因の関連性を把握するのに有効です。

VLANとセキュリティ対策

6-1. VLANで強化するネットワークセキュリティ

6-1-1. 業務部門ごとのネットワーク分離の効果

VLANは、セキュリティ対策として非常に効果的な機能を持っています。その中でも特に重要なのが「部門単位でのネットワーク分離」です。

企業ネットワークでは、部署や役割によって扱う情報の機密性が異なります。たとえば、人事部門と営業部門ではアクセスできるシステムが異なるのが一般的です。そこでVLANを使えば、以下のようなセキュリティ対策が実現できます。

  • 部署間のアクセス制御:不要な通信を遮断し、情報漏洩リスクを低減
  • アクセスログの明確化:ネットワークごとにログを管理しやすくなる
  • ネットワークトラブルの切り分け:影響範囲が限定され、復旧が早くなる

つまり、VLANを使って業務部門ごとにネットワークを分離することで、「最小権限の原則」をネットワークレベルで実現できるのです。

6-1-2. ブロードキャスト抑制や外部攻撃防止への応用

VLANは、単なるネットワーク分離だけでなく、ブロードキャストの抑制外部攻撃の影響範囲の最小化にも役立ちます。

以下に、VLANを活用したセキュリティ強化の具体例を示します。

セキュリティ対策VLANの活用方法効果
ブロードキャスト制限VLANごとにブロードキャストを隔離無駄な通信トラフィックを削減し、ネットワークの安定性が向上
外部攻撃の遮断来客用ネットワークをVLANで分離社内LANへの不正アクセスを防止
管理ネットワークの保護VLAN管理用に専用IDを割り当て管理系機器へのアクセス制限が可能

このように、VLANは構成次第でセキュリティ強化のツールとしても非常に有効です。特に近年では、内部からの脅威(内部犯行やウイルス感染)も増えているため、ネットワーク構成によるセキュリティ対策は不可欠です。