インターネットを安全に利用するために欠かせない「暗号技術」。
その中でも共通鍵暗号方式とは、送信者と受信者が同じ鍵を使ってデータを暗号化・復号する仕組みのことです。
高速で効率的な処理が可能ですが、鍵の管理や配布には注意が必要です。
「共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式はどう違うのか?」「AESやDESの違いが知りたい」「安全な鍵の管理方法を学びたい」と悩んでいませんか?
本記事では、共通鍵暗号方式の仕組みや種類、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
暗号技術の基礎を理解し、より安全なセキュリティ対策を実現しましょう。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 共通鍵暗号方式とはどのような仕組みの技術なのか知りたい人
- 公開鍵暗号方式と共通鍵暗号方式の違いがわからない
- メリットとデメリットが知りたい
共通鍵暗号方式の基本
1-1. 共通鍵暗号方式とは
共通鍵暗号方式とは、暗号化と復号に同じ鍵を使用する暗号技術のことです。
これは「対称鍵暗号方式」とも呼ばれ、古くから使われている暗号方式の一つです。
送信者と受信者の双方が同じ鍵を持つことで、データを安全にやり取りできます。
例えば、企業が顧客の個人情報を暗号化して保存する際や、オンラインバンキングで安全に通信を行う際に利用されます。
共通鍵暗号方式の代表的なアルゴリズムには、以下のようなものがあります。
アルゴリズム | 特徴 |
---|---|
DES | 56ビットの鍵を使用するが、現在では安全性が低いとされる |
AES | 現在最も広く使われる強力な暗号方式 |
Blowfish | 可変長の鍵を使用し、処理速度が速い |
共通鍵暗号方式の基本的な仕組み
共通鍵暗号方式では、暗号化と復号のプロセスに同じ鍵を使用します。
具体的な流れは以下の通りです。
- 送信者がデータを暗号化する
- 送信者は共通の鍵を使って平文(暗号化されていないデータ)を暗号文に変換する。
- 暗号文を受信者に送信する
- ネットワーク上を暗号文が流れるため、仮に第三者に傍受されても内容は分からない。
- 受信者が復号する
- 受信者は送信者と同じ鍵を使って暗号文を元の平文に戻す。
このように、共通鍵暗号方式はシンプルで高速な暗号化が可能ですが、鍵の管理に注意が必要です。
次のセクションでは、共通鍵暗号方式がどのように発展してきたのか、その歴史を詳しく解説します
https://study-sec.com/wp-content/uploads/9fd1bbcc10454220dd70fd1743e72f67.pdf1-2. 共通鍵暗号方式の歴史と背景
共通鍵暗号方式の歴史は古く、古代文明の時代から情報を守る手段として発展してきました。
例えば、古代ローマでは「シーザー暗号」と呼ばれる単純な置換暗号が使用されていました。
1-2-1. 共通鍵暗号方式の起源
歴史上、暗号技術は軍事や政治の世界で重要な役割を果たしてきました。
特に以下の暗号方式は、共通鍵暗号方式の発展に大きな影響を与えました。
- シーザー暗号(紀元前1世紀)
- 文字を一定のルールに従ってずらす単純な暗号方式
- ヴィジュネル暗号(16世紀)
- 複数の置換暗号を組み合わせた方式で、より解読が難しくなった
- エニグマ暗号(20世紀)
- 第二次世界大戦でドイツ軍が使用した高度な暗号機
1-2-2. コンピュータ時代の共通鍵暗号方式
コンピュータの発展とともに、共通鍵暗号方式はより高度なものへと進化しました。
年代 | 主要な暗号技術 |
---|---|
1970年代 | 米国で**DES(Data Encryption Standard)が標準化される |
1990年代 | DESの安全性が低下し、AES(Advanced Encryption Standard)が登場 |
2000年代以降 | AESが広く採用され、暗号技術の基盤となる |
現代では、多くのWebサービスや銀行取引でAESが使用されており、私たちの身近なところで共通鍵暗号方式が活用されています。
このように、共通鍵暗号方式は時代とともに進化し続けており、今後もさらなる改良が進められるでしょう。
共通鍵暗号方式の仕組み
共通鍵暗号方式とは、送信者と受信者が同じ鍵を使ってデータを暗号化・復号する方式です。
この方式の最大の特徴は、処理が高速である点ですが、鍵の管理に注意が必要になります。
ここでは、共通鍵暗号方式の具体的な仕組みについて解説します。
2-1. 暗号化と復号のプロセス
共通鍵暗号方式の基本的な動作は、「暗号化」と「復号」の2つのプロセスに分かれます。
この仕組みを理解することで、どのようにデータが守られているのかを把握できます。
2-1-1. 暗号化のプロセス
暗号化とは、平文(暗号化されていないデータ)を、第三者に読まれないように暗号文に変換する処理です。
このプロセスの流れは以下の通りです。
- 平文を準備
- 例として、「Hello, World!」というメッセージを暗号化する場合を考えます。
- 共通鍵を使って暗号化
- 共通鍵を用いて、暗号アルゴリズム(例:AES)でデータを変換します。
- 暗号文が生成される
- 例えば、「e3v#K9s!8Lp%」のような意味不明なデータになります。
- 暗号文を送信
- ネットワーク上を流れるのは暗号文のため、第三者が傍受しても内容を理解できません。
2-1-2. 復号のプロセス
復号とは、暗号化されたデータ(暗号文)を元の平文に戻す処理のことです。
受信者は送信者と同じ共通鍵を使って、以下のようにデータを復元します。
- 暗号文を受信
- 例:「e3v#K9s!8Lp%」という暗号文を受信。
- 共通鍵を使って復号
- 送信者と同じ共通鍵を用いて復号処理を実行。
- 元の平文に戻る
- 例:「Hello, World!」に復元される。
このように、共通鍵暗号方式では、送信者と受信者が共通の鍵を持つことでデータの暗号化・復号が可能になります。
しかし、鍵が第三者に漏れるとデータが解読されるため、鍵の管理が重要になります。
2-2. 使用される鍵の種類と特徴
共通鍵暗号方式では、鍵の長さや方式によってセキュリティレベルが異なります。
ここでは、代表的な鍵の種類とその特徴を解説します。
2-2-1. 鍵の長さとセキュリティ
共通鍵暗号方式では、鍵の長さ(ビット数)が長くなるほど安全性が高まります。
主な鍵長とその特徴を以下の表にまとめました。
鍵長(ビット) | 代表的な暗号方式 | 特徴 |
---|---|---|
56ビット | DES | 現在では脆弱とされ、使用が推奨されない |
128ビット | AES-128 | 高速かつ高い安全性を持つ |
256ビット | AES-256 | 極めて高い安全性を誇る |
なぜ鍵が長いほど安全なのかというと、総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)による解読が難しくなるからです。
例えば、56ビットのDESは数時間で解読可能ですが、256ビットのAESは現代のスーパーコンピュータを用いても解読に数十億年かかると言われています。
2-2-2. 固定鍵と動的鍵
共通鍵暗号方式では、鍵の運用方法によって以下の2種類に分類されます。
- 固定鍵(Static Key)
- 常に同じ鍵を使用する方式。管理が簡単だが、鍵が漏れた場合にリスクが大きい。
- 動的鍵(Dynamic Key)
- 一定期間ごとに鍵を変更する方式。セキュリティが向上するが、管理が複雑になる。
例えば、Wi-FiのWPA2暗号方式では定期的に鍵を変更する動的鍵を使用することで、通信の安全性を高めています。
共通鍵暗号方式の種類
共通鍵暗号方式とは、1つの鍵を送信者と受信者で共有し、データを暗号化・復号する方式です。
この方式にはいくつかの種類がありますが、大きく分けて「ブロック暗号」と「ストリーム暗号」の2つのタイプに分類されます。
それぞれの特徴を理解することで、どのような場面で利用されているのかが分かります。
3-1. ブロック暗号とストリーム暗号
共通鍵暗号方式には、「ブロック暗号」と「ストリーム暗号」という2つの暗号方式があります。
どちらも共通鍵を使って暗号化を行う点では同じですが、暗号化の方法が異なります。
暗号方式 | 特徴 | 代表的なアルゴリズム | 主な用途 |
---|---|---|---|
ブロック暗号 | 一定のデータ単位(ブロック)ごとに暗号化 | AES, DES, Blowfish | ファイル暗号化、データベース暗号化 |
ストリーム暗号 | 連続するデータを1ビットまたは1バイト単位で暗号化 | RC4, ChaCha20 | 音声通信、リアルタイム通信 |
それでは、それぞれの暗号方式について詳しく解説します。
3-1-1. ブロック暗号とは
ブロック暗号とは、一定のデータサイズ(ブロック単位)ごとに暗号化を行う方式です。
例えば、AES(Advanced Encryption Standard)では、128ビット(16バイト)単位でデータを暗号化します。
ブロック暗号の仕組み
- データをブロック単位に分割
- 例えば、64バイトのデータを暗号化する場合、16バイトずつに分割(AESの場合)。
- 各ブロックを共通鍵で暗号化
- それぞれのブロックが暗号化され、異なる暗号文が生成される。
- 暗号化されたブロックを結合して送信
- 全てのブロックを暗号化した後、1つの暗号文として送信する。
ブロック暗号のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
---|---|
高い安全性を確保できる | データのサイズが小さい場合、無駄なパディングが発生する |
大容量データの暗号化に適している | 暗号化・復号に比較的時間がかかる |
ブロック暗号は、データの一貫性を保ちつつ暗号化できるため、ファイルの暗号化やデータベースのセキュリティ向上に広く使用されています。
3-1-2. ストリーム暗号とは
ストリーム暗号とは、データを1ビットまたは1バイト単位で逐次暗号化する方式です。
リアルタイムでデータを処理できるため、通信の暗号化に適しています。
ストリーム暗号の仕組み
- 共通鍵を元に鍵ストリームを生成
- 鍵ストリームとは、暗号化に使用される疑似乱数列のこと。
- 平文と鍵ストリームをXOR演算で暗号化
- 各ビットまたはバイトを鍵ストリームと組み合わせて変換。
- リアルタイムで暗号文を送信
- データが即座に暗号化され、送信される。
ストリーム暗号のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
---|---|
高速に処理でき、リアルタイム通信に適している | 鍵ストリームが完全にランダムでないと脆弱性が生じる |
パディングが不要でデータ量が増えにくい | 鍵が再利用されると解読されやすい |
ストリーム暗号は、Wi-FiのWEPやTLSの一部など、通信の暗号化に広く使われています。
共通鍵暗号方式のメリットとデメリット
共通鍵暗号方式とは、1つの鍵を共有してデータを暗号化・復号する方式です。
この方式はシンプルで高速な処理が可能である一方、鍵の管理に課題があります。
ここでは、共通鍵暗号方式のメリットとデメリットを詳しく解説します。
4-1. メリット:高速な処理速度と効率性
共通鍵暗号方式の最大のメリットは、暗号化と復号の処理が高速であり、効率的にデータを保護できることです。
この特性により、多くのシステムで利用されています。
4-1-1. 高速な処理速度
共通鍵暗号方式は、公開鍵暗号方式と比べて暗号化・復号の処理が非常に高速です。
なぜなら、共通鍵暗号方式は対称鍵暗号方式とも呼ばれ、数学的な計算が比較的単純だからです。
例えば、以下のような環境では、高速な暗号処理が求められます。
- リアルタイム通信(オンライン通話、ライブストリーミング)
- 大容量データの暗号化(クラウドストレージ、データベース暗号化)
- 組み込み機器(IoTデバイス、スマートフォン)
AES(Advanced Encryption Standard)を例にすると、以下のような処理速度の違いがあります。
暗号方式 | 1秒あたりの処理速度 |
---|---|
AES(共通鍵暗号方式) | 1GB以上のデータを暗号化可能 |
RSA(公開鍵暗号方式) | 数MBのデータを暗号化するのに数秒かかる |
このように、共通鍵暗号方式は処理速度の速さが圧倒的なため、リアルタイム性が求められる場面で活用されます。
4-1-2. 効率的なリソース消費
共通鍵暗号方式は、計算処理が比較的シンプルなため、CPUやメモリの消費が少なく済むというメリットもあります。
特に、組み込み機器やスマートフォンなど、限られたリソースで動作するデバイスに適しています。
例えば、IoTデバイスでは以下のような理由から共通鍵暗号方式が利用されます。
- 計算負荷が軽いため、バッテリー消費が抑えられる
- 低スペックなハードウェアでも実装可能
- データの転送速度が速いため、リアルタイム通信に適している
このように、共通鍵暗号方式は高速で効率的にデータを暗号化・復号できるため、多くのシステムやデバイスで利用されているのです。
4-2. デメリット:鍵の管理と配布の課題
共通鍵暗号方式には、高速で効率的というメリットがある一方で、鍵の管理と配布が難しいという大きな課題があります。
この課題を解決しない限り、安全な暗号通信を実現することはできません。
4-2-1. 鍵の安全な管理が難しい
共通鍵暗号方式では、送信者と受信者の両方が同じ鍵を持つ必要があります。
そのため、以下のようなリスクが発生します。
- 鍵が漏洩すると、すべての通信が解読される
- 悪意のある第三者が鍵を盗む可能性がある
- 鍵の保管方法が適切でないと、内部犯行のリスクが高まる
例えば、企業の社内ネットワークで共通鍵暗号方式を使用する場合、もし従業員の誰かが鍵を外部に持ち出してしまうと、機密情報が漏洩する危険があります。
このようなリスクを防ぐためには、以下のような対策が必要です。
鍵の定期的な変更(一定期間ごとに新しい鍵を配布)
鍵の保存場所を限定(USBなどの物理デバイスに保存し、不正アクセスを防ぐ)
アクセス制御を厳格化(鍵にアクセスできる人を制限する)
4-2-2. 鍵の配布が難しい
共通鍵暗号方式のもう1つの大きな課題は、安全に鍵を配布するのが難しいことです。
なぜなら、暗号通信を行う前に、鍵そのものを相手に渡さなければならないからです。
例えば、以下のような場面で鍵の配布が問題になります。
- インターネット越しに鍵を送る場合、盗聴のリスクがある
- 多数のユーザーと鍵を共有する場合、管理が複雑になる
- 新しい通信相手ごとに鍵を配布する必要があるため、運用負担が大きい
特に、企業のネットワークでは、多くの社員が通信を行うため、それぞれに異なる共通鍵を配布すると、管理の手間が増大します。
この問題を解決するために、一般的には以下のような方法が採用されます。
鍵配送のために公開鍵暗号方式を併用する(鍵交換プロトコルの利用)
鍵管理システム(KMS)を導入する(クラウド上で鍵を一元管理)
VPNやTLSなどの安全な通信経路を確保する(鍵の盗聴を防ぐ)
例えば、TLS(SSL)通信では、最初に公開鍵暗号方式を使って鍵を交換し、その後の通信は共通鍵暗号方式で高速に処理する仕組みになっています。
このように、公開鍵暗号方式と組み合わせることで、鍵の配布の課題を解決することができます。
共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式の比較
共通鍵暗号方式とは、1つの鍵を共有して暗号化・復号を行う方式ですが、これとは異なる暗号方式として公開鍵暗号方式があります。
この二つの暗号方式は、それぞれ異なる特性を持ち、用途によって使い分けられています。
ここでは、共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式の違いについて詳しく解説します。
5-1. 公開鍵暗号方式との違いと使い分け
共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式は、どちらもデータを安全にやり取りするための仕組みですが、鍵の扱い方に大きな違いがあります。
5-1-1. 共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式の主な違い
この二つの暗号方式の違いを表にまとめました。
項目 | 共通鍵暗号方式 | 公開鍵暗号方式 |
---|---|---|
鍵の種類 | 同じ鍵を送信者と受信者で共有 | 公開鍵と秘密鍵の2つを使用 |
鍵の管理 | 鍵を事前に共有する必要がある | 公開鍵は自由に配布可能、秘密鍵は保持 |
処理速度 | 高速 | 計算量が多いため遅い |
用途 | 大量のデータ暗号化、リアルタイム通信 | 鍵の配布、電子署名、認証 |
安全性 | 鍵が漏洩するとすべてのデータが解読される | 秘密鍵が漏れない限り安全 |
共通鍵暗号方式は、暗号化・復号の処理が高速であるため、大量のデータを効率的に暗号化するのに適しています。
一方、公開鍵暗号方式は、鍵の管理が容易で、安全に鍵をやり取りできるという利点がありますが、計算量が多いため処理速度が遅くなります。
5-1-2. 具体的な使い分け
共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式は、それぞれの特性を活かし、適切な場面で使い分けられます。
特に、両者を組み合わせることで、より安全かつ効率的な暗号通信を実現できます。
共通鍵暗号方式が適しているケース
- リアルタイム通信(ビデオ通話、オンラインゲーム)
- 大量のデータを暗号化する場合(ファイルの暗号化、クラウドストレージ)
- リソースが限られたデバイス(IoT機器、スマートフォン)
公開鍵暗号方式が適しているケース
- 鍵の配布(TLS/SSLによる安全な通信の確立)
- 電子署名(電子契約、メールの送信者認証)
- 本人確認(認証)(デジタル証明書の発行、マイナンバーカードの認証)
例えば、インターネット通信で広く使われるTLS/SSLでは、まず公開鍵暗号方式を用いて共通鍵を安全に交換し、その後のデータ通信は共通鍵暗号方式で行われます。
これにより、鍵の配布の問題を解決しつつ、高速な通信を実現しています。
共通鍵暗号方式の具体例
共通鍵暗号方式とは、1つの鍵を共有してデータを暗号化・復号する方式ですが、その中でも特に広く利用されている暗号アルゴリズムがいくつか存在します。
暗号技術の進化とともに、古いアルゴリズムからより安全な新しいアルゴリズムへと移行が進んでいます。
ここでは、代表的な共通鍵暗号方式のアルゴリズムについて詳しく解説します。
6-1. 代表的なアルゴリズムの紹介(DES、AESなど)
共通鍵暗号方式には、歴史的に重要なものから現在主流となっているものまで、さまざまなアルゴリズムがあります。
ここでは、特に有名な3つのアルゴリズムであるDES(Data Encryption Standard)、AES(Advanced Encryption Standard)、Blowfishを紹介します。
アルゴリズム | 鍵長 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|---|
DES | 56ビット | かつての標準暗号方式だが、現在は脆弱 | 過去の金融システム、古いデバイス |
AES | 128/192/256ビット | 現在の標準暗号方式、高い安全性と高速処理 | Webセキュリティ、Wi-Fi、ファイル暗号化 |
Blowfish | 32~448ビット | 柔軟な鍵長、高速な処理 | パスワード管理、VPN |
6-1-1. DES(Data Encryption Standard)
DES(データ暗号化標準)は、1977年に米国政府によって標準化された共通鍵暗号方式です。
当時は非常に強力な暗号として使用されていましたが、現在ではコンピュータの処理能力の向上により、簡単に解読できるとされています。
DESの主な特徴
- 56ビットの鍵長を持つ
- ブロック暗号方式を採用(64ビット単位で暗号化)
- 現在では安全性が低いため使用は推奨されていない
1990年代後半には、ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)によって短時間で解読可能になったため、現在ではほとんど使用されていません。
その後、DESの強化版として「3DES(トリプルDES)」が開発されましたが、それでも安全性が十分でないと判断され、AESへの移行が進んでいます。
6-1-2. AES(Advanced Encryption Standard)
AES(高度暗号化標準)は、現在最も広く利用されている共通鍵暗号方式です。
2001年に米国国立標準技術研究所(NIST)によって標準化され、現在では世界中の暗号システムで利用されています。
AESの主な特徴
- 鍵長を128ビット、192ビット、256ビットの3種類から選択可能
- DESよりも強力な暗号方式で、高速な処理が可能
- ブロック暗号方式を採用(128ビット単位で暗号化)
- 現在の暗号技術において最も安全とされている
AESは、高い安全性と高速な処理能力を両立しているため、さまざまな分野で利用されています。
例えば、以下のような用途で活用されています。
- TLS/SSL通信(インターネットの暗号化)
- Wi-Fiの暗号化(WPA2、WPA3)
- スマートフォンやパソコンのデータ暗号化
- オンラインバンキングや電子決済のセキュリティ
現在のところ、AESはスーパーコンピュータを用いた攻撃でも解読が困難であるため、最も信頼性の高い共通鍵暗号方式として広く採用されています。
6-1-3. Blowfish
Blowfishは、1993年にブルース・シュナイアーによって開発された共通鍵暗号方式で、柔軟な鍵長と高速な処理が特徴です。
特に、パスワード管理やVPN(仮想プライベートネットワーク)などの用途で利用されています。
Blowfishの主な特徴
- 鍵長を32ビット~448ビットの範囲で選択可能
- 高速な暗号化処理が可能
- 特許に縛られず、自由に利用できる
- セキュリティは比較的高いが、AESほどの安全性はない
Blowfishは、AESの登場以前には広く使われていましたが、現在ではAESが主流になり、新規のシステムではあまり採用されていません。
しかし、一部のパスワード管理システムやVPNソフトウェアでは、依然としてBlowfishが使用されています。