運用

SLAとは?メリットとデメリットをわかりやすく解説

今回の記事では、企業が顧客に提供するサービスレベル契約(SLA)について解説します。

ビジネスにとって欠かせないITシステムやクラウドサービスが不具合を起こした場合、その影響は大きくなります。

そこで、SLAを活用することで、サービス品質を保証することができます。

企業にとって大切なサービス品質の向上につながるSLAについて、詳しく学んでいきましょう!

SLA(Service Level Agreement)とは

1-1. SLAの基本的な概念とは

SLAとは、Service Level Agreement(サービスレベル契約)の略称です。

サービス提供者と利用者との間で締結される契約で、サービス提供者が提供するサービスの品質やレベル、責任範囲などを明確に規定するものです。

SLAには、定められたサービスレベルに達しない場合にはどのような対応がなされるかが記載されています。

企業や組織において、サービス品質の向上やコスト削減、信頼関係の構築などに貢献する重要な契約書です。

1-2. SLAの主な目的とは

SLAの主な目的は、サービス提供者と利用者との間での信頼関係を構築し、サービス品質の向上やコスト削減を実現することです。

具体的には、以下のような目的があります。

SLAの目的①

サービス提供者が提供するサービスの品質やレベル、責任範囲を明確に定めることで、利用者が安心してサービスを利用できる環境を整えること

SLAの目的②

定められたサービスレベルに達しない場合には、どのような対応がなされるかを定めることで、サービス提供者と利用者との間でのトラブルを未然に防ぐこと。

SLAの目的③

サービス提供者がサービス品質を向上させるための指標となり、利用者がサービス品質を評価するための基準となること。

SLAの目的④

サービス提供者がコスト削減に努めることで、利用者に対してより低価格なサービス提供が可能となること。

1-3. SLAの種類と特徴とは

SLAには、内部SLA、外部SLA、カスタマイズSLA、一般的なSLA、グローバルSLAなどの種類があります。それぞれの特徴や用途を理解しておくことが重要です。

利用者が求めるサービス品質を確保するために、適切な種類のSLAを選択することが必要です。

SLAのメリットとデメリット

2-1. SLAのメリットとは

Service Level Agreement(SLA)は、顧客とサービスプロバイダーの間で合意されたサービスレベルを明確にすることで、多くのメリットをもたらします。

以下はその一例です。

明確な期待管理

SLAを使用することで、サービスレベルに関する明確な期待を設定することができます。

顧客はサービスプロバイダーから期待されるサービスレベルについて正確に理解し、その期待を満たすための取り組みを行うことができます。

リスク管理の最小化

SLAには、顧客とサービスプロバイダーの間で合意されたサービスレベルが明確に記載されているため、顧客はサービス提供のリスクを最小限に抑えることができます。

顧客はビジネスの継続性を保つための措置を講じることができます。

品質の向上

SLAにより、サービスプロバイダーは自社のサービス品質を向上させることができます。

サービスプロバイダーは、顧客からの要望やフィードバックを取り入れ、サービス品質を改善するための取り組みを行うことができます。

顧客満足度の向上

SLAにより、顧客は自社のビジネスにとって重要なサービスについて、サービスプロバイダーがどのような品質を提供しているかを把握することができます。

顧客は自社のビジネス目標を達成するために必要なサービスを受けることができ、顧客満足度が向上します。

2-2. SLAのデメリットとは

また、SLAにはメリットだけでなく、デメリットも存在します。以下では、そのデメリットについて見ていきます。

制約があるため自由度が低い

サービス提供者がSLAで約束したサービスレベルを実現するためには、一定の制約が必要です。

そのため、顧客側の要望には柔軟に対応できない場合があります。また、システムの改修や更新なども、SLAに反映させる必要があるため、開発スピードが遅れることがあるかもしれません。

コストが高い

SLAに基づいてサービスを提供することは、運用や監視などのコストが必要となります。

そのため、サービス提供者側にとっては、コストが増大する可能性があります。

また、顧客側にとっても、高いレベルのサービスを要求するほど、料金が高くなる場合があります。

契約内容の把握が必要

SLAは契約書として成立するため、その内容を正確に理解することが必要です。

また、契約内容が変更されることもあるため、顧客側には契約内容の把握が求められます。

メリットとデメリットを比較して、SLAを導入することの是非を検討することが重要です。

SLAの作成方法

3-1. SLAの作成手順と流れ

SLAを作成するには、一般的に以下の手順を踏む必要があります。

  1. 目的の明確化 まずは、SLAの目的を明確化することが重要です。具体的には、どのようなサービスを提供するのか、どのようなレベルで提供するのかを明確にすることが必要です。
  2. 調査と分析 サービス提供者側は、自社の運用状況や顧客からの要望などを調査し、サービスレベルを設定します。また、顧客側も、自社が必要とするサービスレベルを明確にしておくことが重要です。
  3. SLAの策定 目的と調査結果を踏まえて、具体的なSLAを策定します。SLAには、提供するサービス内容、レベル、品質基準、達成目標、報告頻度などが含まれます。
  4. 合意と契約 SLAの内容を顧客側と合意し、契約書として成立させます。契約書には、SLAの内容や達成目標、罰則条項などが含まれます。
  5. 監視と改善 SLAの実行状況を監視し、必要に応じて改善策を講じます。また、定期的なレビューや報告も行い、SLAの継続的な改善を図ります。

3-2. SLAの作成に必要な要素とは

SLAを作成する際には、以下の要素が必要です。

  • サービスレベルの定義
  • レポートや通知の頻度
  • 問題解決のプロセス
  • 契約期間と自動更新の条件
  • サービス提供者と顧客の義務と責任
  • 違反に対する罰則条項

これらの要素を明確に定義し、契約書として成立させることがSLAの作成に必要な要素です。

3-3. SLAの監視と改善方法とは

SLAの監視は、顧客が約束されたサービスを受け取っていることを確認するために重要です。

達成されたメトリックスを常に監視し、必要に応じて適切な改善を行うことで、サービスレベルの向上につながります。

SLAの監視には、以下の手順が含まれます。

3-3-1. 監視項目の定義

監視する項目を明確に定義し、それらの項目について監視するための方法を確立します。

これには、スタッフの定期的な監視、自動監視システムの使用、定期的なレポートの作成などが含まれます。

3-3-2. レポーティング

監視データをまとめてレポート化することで、達成されたSLAメトリックスについて常に把握することができます。

この情報は、改善点を見つけたり、将来的なSLAの調整に使用することができます。

3-3-3. 改善策の立案と実行

監視データを分析して、改善点を見つけ、SLAの改善策を立案します。

問題を解決するためのアクションプランの策定、適切な手順やプロセスの策定、サービス品質の向上のための改善計画などが含まれます。

3-3-4. 監視の継続的改善

SLAの監視は、継続的なプロセスであるため、常に改善の余地があります。

データを分析し、適切な改善を行うことで、常にサービスレベルの向上を図ることができます。

SLA運用における注意点

SLAを適切に運用することは、サービス提供者と顧客の双方にとって非常に重要です。

本章では、SLAを運用する上でのポイントと、SLA違反時の対処方法について解説します。

4-1. SLA運用における重要なポイントとは

SLAを運用する上で、以下のポイントに注意する必要があります。

4-1-1. 定期的なレビューと更新

SLAは常に最新の状態でなければ意味がありません。定期的にレビューを行い、必要に応じて更新を行いましょう。

4-1-2. コミュニケーションの確保

SLAは顧客とサービス提供者との間での合意事項であり、双方の理解が必要です。コミュニケーションを確保し、顧客のニーズに合わせたSLAを作成しましょう。

4-1-3. 達成可能な目標の設定

SLAに設定する目標は達成可能であることが重要です。

過剰な目標を設定してしまうと、サービス提供者はそれを達成できず、顧客から不信感を持たれることになります。

4-1-4. モニタリングと分析

SLAの運用状況をモニタリングし、分析することで、問題点を把握し改善に繋げることができます。

4-2. SLA違反時の対処方法とは

4-2-1. SLAに違反した場合

迅速かつ適切な対応が求められます。

最初に行うべきことは、違反内容を確認して、違反が発生した原因を特定することです。原因を特定したら、適切な措置を講じる必要があります。

違反の原因が第三者の影響を受けた場合は、影響を与えた第三者との連絡を取り、問題を解決するための措置を協議する必要があります。

4-2-2. SLA違反が発生した場合

顧客への説明責任も重要です。

顧客に対して、違反が発生した理由、問題の影響範囲、問題の解決策、今後の対策などを正確かつ明確に説明することが必要です。

説明が遅れたり、不十分であった場合は、信頼を失うことにつながります。

4-2-3. SLA違反の解決策

問題を迅速かつ適切に解決することが最も重要です。

SLAに違反した場合、事前に決められた補償を提供することも考慮する必要があります。補償は、顧客への謝罪やクレジットの提供など様々な形態があります。

ただし、補償を行う前に、違反の原因を正確に特定し、問題を解決することが先決です。

4-2-4. SLA違反が繰り返される場合

SLAを見直し、改善する必要があります。

問題が発生する原因がSLAの設計上の問題である場合は、SLA自体を改善する必要があります。

また、運用面での問題が原因である場合は、運用プロセスの改善が必要になる場合があります。

定期的な監視や改善作業を行い、SLA違反が繰り返されないように努める必要があります。

まとめ

5-1. SLAのまとめ

この記事では、SLAとは何か、その目的、種類、作成方法、運用における注意点について解説してきました。

SLAはサービス提供者と利用者間で合意された契約書であり、品質の担保やトラブル時の対処方法などが明確に定められています。

SLAは、サービスの信頼性や品質を向上させるために非常に重要な役割を果たしており、適切に作成し、運用することが求められます。

5-2. SLAの重要性と今後の展望

近年、クラウドサービスやSaaSの利用が増加しており、SLAがますます重要な役割を果たしています。

これらのサービスを利用する場合には、品質の担保やトラブル時の対応が明確に定められたSLAを締結することが求められます。

また、サービス提供者側も、利用者からの信頼を維持するために、適切なSLAの作成や運用を行うことが必要です。

今後は、より高度な技術やサービスが登場することにより、サービスの品質やトラブル対応に求められる水準が高まることが予想されます。そのため、SLAの重要性は今後ますます高まっていくと考えられます。

サービス提供者は、利用者のニーズに合わせた適切なSLAを提供し、信頼関係を築くことが求められます。