セキュリティ

サイバーキルチェーンとは?初心者にもわかりやすく解説します!

サイバーセキュリティの脅威は日々進化し、その対策もまた同様です。

しかし、「サイバーキルチェーン」というモデルを知れば、攻撃者の一手一手を理解し、先回りする防御が可能になります。

この記事では、サイバーキルチェーンの基本から応用までを解き明かし、あなたのデジタル世界を守るための知識を提供します。

攻撃者がどのようにあなたの情報に迫るか、それをいかにして食い止めるか、その具体策を今、探究しましょう。

外資系エンジニア

この記事は以下のような人におすすめ!

  • サイバーキルチェーンとは何か知りたい人
  • サイバーキルチェーンの各ステージでどのような対策を講じるべきかわからない人
  • 組織のセキュリティ体制をサイバーキルチェーンにどう適用すれば良いかわからない人

サイバーキル チェーン入門

1-1. サイバーキルチェーンとは何か?

サイバーキルチェーンは、サイバー攻撃がどのように進行するかを説明するフレームワークです。

このモデルは攻撃の各フェーズを分析し、攻撃者が次のステップに進むために必要な条件を特定することで、サイバー攻撃をより深く理解し、それに対抗する方法を見出すことを目的としています。

サイバーキル チェーンを理解することは、組織がセキュリティ対策を計画し、実行する上で非常に重要です。

このモデルは攻撃を検出し、それに対処するための具体的なステップを提供し、セキュリティ専門家がシステムを守るために何をすべきかを明確に示します。

1-2. サイバーキル チェーンの歴史と進化

サイバーキルチェーンは、2011年にロッキード・マーティン社によって導入されました。このフレームワークはもともと軍事用語から派生したもので、サイバー攻撃のプロセスを戦略的な視点から理解するためのものでした。

その後、サイバーセキュリティのコミュニティによって広く受け入れられ、現代のサイバー攻撃に適応するために進化してきました。

特に、攻撃者がより巧妙になり、迅速に行動するようになった現在では、サイバーキルチェーンの概念もそれに合わせて更新され、拡張されています。

サイバーセキュリティの専門家はこのモデルを使用して、組織の防御体制を強化し、新たな脅威に対応するための戦略を立てています。

また、このモデルは教育の分野でも用いられ、セキュリティの専門家や将来の専門家を育成するための基礎となっています。

サイバーキルチェーンの7つのステップ

2-1. 偵察(Reconnaissance)

偵察フェーズは、サイバーキルチェーンの最初のステージであり、攻撃者が情報収集を行う段階です。

この段階では、攻撃者はターゲットに関する情報を集め、弱点や侵入経路を探ります。

公開情報、ソーシャルメディア、企業のウェブサイトなどからターゲットのシステムやネットワーク構造、従業員の情報を調査し、攻撃の足がかりとなる脆弱性を見つけ出します。

この情報は、後の攻撃段階で使用されるため、偵察を正確に行うことが成功の鍵となります。

2-2. 武器化(Weaponization)

武器化は、偵察で得た情報を基に攻撃者がマルウェアやエクスプロイト(脆弱性を悪用するためのコード)などを作成する段階です。

これらの攻撃ツールは、メールの添付ファイルやウェブサイトを通じて配布されることが多く、ターゲットのシステムに侵入するための「武器」として機能します。

2-3. 配送(Delivery)

配送ステージでは、攻撃者が武器化したマルウェアをターゲットに届けます。

フィッシングメールやウェブサイトの偽装など、さまざまな方法でマルウェアを配布します。

このステージでの配布方法は、ターゲットがそれを認識しないように巧妙に行われます。

2-4. 悪用(Exploitation)

悪用フェーズでは、配送されたマルウェアがターゲットのシステムにおいて実行され、脆弱性を悪用します。

この段階で攻撃者はシステムに「侵入」し、次のフェーズへ進むための足がかりを作ります。

2-5. インストール(Installation)

攻撃者は悪用フェーズで侵入したシステムに、マルウェアやバックドアなどをインストールします。

このソフトウェアは攻撃者がシステムを制御するためのもので、この段階を経て初めて攻撃者はターゲットのシステムに恒久的な足がかりを築くことができます。

2-6. コマンド&コントロール(Command and Control)

コマンド&コントロールフェーズでは、攻撃者はインストールしたマルウェアを通じてターゲットのシステムに指令を送ります。

これにより、攻撃者は遠隔地からターゲットのシステムを操作し、さらに内部での活動を広げることができます。

2-7. 目的の達成(Actions on Objectives)

最終ステージでは、攻撃者は具体的な攻撃目的を達成します。

データの盗難、システムの破壊、データの暗号化、データの外部への移動など、攻撃者の目的に応じた行動が取られます。

このステージで攻撃が完了し、攻撃者は目的を達成したと考えられます。

サイバーキルチェーンの批判点と限界

3-1. パーメーターセキュリティへの集中とその問題点

サイバーキル チェーンは、多くの組織にとって攻撃を理解し対策を立てるための有効なフレームワークですが、このモデルが外部からの侵入に重点を置いていることが批判されています。

現代のセキュリティ環境では、内部者による脅威や、すでに侵入を許してしまっている場合など、パーメーター以外のセキュリティが重要になっています。

クラウドサービスの普及により、伝統的なネットワークの境界が曖昧になっている現在、パーメーターセキュリティだけに依存することのリスクが高まっています。

このため、パーメーターセキュリティを超えた総合的なアプローチが求められており、エンドポイントの保護、内部の行動分析、そして異常検知システムへの投資が不可欠です。

3-2. ステップの省略や結合による変化

サイバーキル チェーンモデルは、攻撃が一定の順番で進むという前提に基づいていますが、実際には攻撃者がステップを省略したり、複数のステップを組み合わせたりするケースも多々あります。

特に、高度な攻撃者は、偵察や武器化といった初期の段階を迅速に、または同時に行うことで、セキュリティシステムを迂回します。

その結果、組織が攻撃を検知する機会が減少し、早期に対処することが困難になることがあります。

また、一部の攻撃は既に広く知られているセキュリティ対策を意識した上で設計されているため、既存の防御策を効果的に回避する可能性があります。

したがって、サイバーキルチェーンモデルをセキュリティ戦略に取り入れる際には、これらの変化を考慮し、柔軟かつ適応性のある防御体制を整えることが重要です。

サイバーキルチェーンの適用と防御策

4-1. 早期検出と対策

サイバーキル チェーンを最大限に活用するためには、攻撃の早期検出が鍵となります。

このプロセスでは、組織は攻撃者が初期段階で使用する手口を特定し、これを防ぐための対策を講じます。

例えば、偵察フェーズで使用されるフィッシング攻撃を検出するためのトレーニングや、不審なネットワークアクティビティを検知するための侵入検知システム(IDS)の利用が挙げられます。

早期検出を実現するためには、最新のセキュリティインテリジェンスを活用し、組織内のデータと通信に対する継続的な監視が必要です。

4-2. モデルを超えた防御戦略

サイバーキル チェーンは有効なガイドラインを提供しますが、現代の攻撃に対処するには、このモデルを超えた防御戦略が求められます。

例えば、ゼロトラストセキュリティモデルの採用や、従業員のセキュリティ意識を高めるための継続的な教育プログラムがあります。

また、攻撃者がシステム内に侵入した後も迅速に対応できるように、事後の対応計画を含むインシデントレスポンスプランの策定も重要です。

4-3. 教育と訓練

サイバーセキュリティの教育と訓練は、攻撃に対する防御の第一線です。

従業員に対する定期的なセキュリティ研修、フィッシング詐欺やマルウェアの認識訓練、セキュアなパスワード管理のベストプラクティスなど、組織全体のセキュリティ意識を向上させることが重要です。

また、セキュリティチームには最新の脅威と防御戦略に関する専門知識を常に更新するためのトレーニングが必要です。

教育と訓練により、従業員は自らが組織のセキュリティを支える重要な役割を果たすことを理解し、日々の業務において適切なセキュリティ対策を実施できるようになります。

ケーススタディと実例

5-1. サイバーキル チェーンの実際の適用例

サイバーキル チェーンの実際の適用例としては、大手小売企業に対する攻撃が挙げられます。

攻撃者はまず偵察段階で企業のネットワーク情報や従業員のメールアドレスを集め、フィッシングメールを通じて悪意のあるリンクや添付ファイルを配布しました。

このフィッシングメールによって一部の従業員のコンピューターがマルウェアに感染し、攻撃者はこれを足がかりにシステム内部へのアクセスを得て、重要な顧客情報を窃取することに成功しました。

この事例からは、初期段階での検出と従業員へのセキュリティ意識の重要性が浮き彫りになります。

5-2. 攻撃の阻止と対処の事例

攻撃の阻止と対処の事例としては、ある金融機関が経験した攻撃が例に挙げられます。

同機関は、不正アクセス試行を早期に検出するために高度な侵入検知システムを導入していました。

偵察段階での異常な通信を検知し、迅速にセキュリティチームが対応した結果、攻撃者の試みは武器化段階に移行する前に阻止されました。

この機関はその後、従業員のセキュリティトレーニングを強化し、システムへの不正アクセスを試みる新たな攻撃方法にも対応可能な、柔軟性のあるセキュリティ体制の構築に成功しました。

この事例は、早期検出システムと迅速な対応がいかに重要かを示しています。

まとめと今後の展望

6-1. ラテラルムーブメントの今後の傾向

ラテラルムーブメントとは、攻撃者がネットワーク内で権限を拡大し、他のシステムやデータにアクセスするために使用するテクニックです。

今後の傾向としては、IoTデバイスの普及によるネットワークの複雑化や、クラウドサービスの増加に伴い、ラテラルムーブメントの手法も進化していくことが予想されます。

攻撃者は、ますます高度な手法を使い、検出を避けながら目的を達成するでしょう。

このため、組織はネットワークセグメンテーション、異常行動検知システム、そしてAIを活用した自動化された対応策を導入することで、このような進化する脅威に対応する必要があります。

6-2. 継続的なセキュリティ対策の重要性

セキュリティは一回の対策で完了するものではなく、継続的なプロセスが不可欠です。

技術の進歩とともに新たな脅威が登場するため、セキュリティ対策も常に更新されるべきです。

これには定期的なシステムのアップデート、従業員の教育、セキュリティポリシーの見直し、そしてインシデント後のレビューと改善が含まれます。

将来的には、攻撃の自動検出と対応の精度を高めるために、マシンラーニングや人工知能の技術がセキュリティ対策においてさらに重要な役割を果たすようになるでしょう。

また、組織はサイバーレジリエンスを高め、事前に危機管理計画を策定しておくことで、攻撃が発生した際の影響を最小限に抑えることができます。