「Mydoom」という名前を聞いたことがありますか?
2004年に発見され、史上最速で拡散したマルウェアとして世界を震撼させた「Mydoom」。
感染するとPCがスパムメールの踏み台になり、DDoS攻撃の一端を担う危険なウイルスでした。
しかし、「Mydoomは現在も危険なのか?」「感染してしまったらどうすればいい?」と不安に思う方も多いはず。
本記事では、Mydoomの仕組み・被害・駆除方法・防御策までを分かりやすく解説します。
あなたのPCは大丈夫ですか? 今すぐ確認し、対策を講じましょう。
この記事は以下のような人におすすめ!
- Mydoomとは何か知りたい人
- Mydoomに感染するとどうなる?PCの異常な動作が気になる人
- Mydoomの感染を防ぐには?安全なメールの見分け方が知りたい人
目次
Mydoomとは何か
Mydoomは、2004年に発見されたコンピューターウイルス(ワーム)で、史上最も急速に拡散したマルウェアの一つです。
このウイルスは、感染したコンピューターから大量のスパムメールを送信し、特定のウェブサイトやサーバーを攻撃する「DDoS攻撃(分散型サービス拒否攻撃)」を仕掛けることで知られています。
企業や個人ユーザーに大きな被害をもたらし、セキュリティの重要性を再認識させるきっかけとなったMydoomですが、その仕組みや拡散経路について詳しく解説していきます。
1-1. Mydoomの概要
1-1-1. Mydoomとは?
Mydoomは、電子メールを媒介にして拡散するワーム型のマルウェアです。
感染したコンピューターは、不正なプログラムを実行し、外部の攻撃者からリモート操作を受ける可能性があります。
主な特徴
特徴 | 説明 |
---|---|
拡散方法 | 電子メールの添付ファイル(.zipや.exe形式など)を開くことで感染 |
攻撃手法 | DDoS攻撃を仕掛け、特定のサーバーやウェブサイトをダウンさせる |
リモートアクセス機能 | 攻撃者が感染したPCにリモートアクセスし、不正操作が可能 |
スパムメールの送信 | 感染PCを利用して、さらに多くのスパムメールを拡散 |
1-1-2. Mydoomが注目された理由
Mydoomは、以下の理由から世界的な関心を集めました。
- 史上最速の拡散速度
Mydoomは、発見から数時間でインターネット上に爆発的に拡散しました。その拡散スピードは、当時のコンピューターウイルスの中でも群を抜いていました。 - MicrosoftやSCOグループへの攻撃
Mydoomは、MicrosoftやSCOグループ(UNIXの開発企業)を標的としたDDoS攻撃を仕掛ける目的で作られたと言われています。 - 大規模な経済的損失
Mydoomによる企業のシステムダウンや生産性の低下により、数十億ドル規模の損失が発生したとされています。

1-2. 発見と拡散の歴史
1-2-1. Mydoomの発見
Mydoomは、2004年1月26日 に初めて発見されました。このウイルスの感染が急速に拡大したことから、セキュリティ研究者たちはただちに解析を開始しました。
発見当時の状況
- Mydoomは、主にWindows OS を標的にしていた。
- 感染後、PC内のアドレス帳からメールアドレスを収集し、自動的に感染メールを送信。
- 急速に拡散し、過去最速のワーム として記録される。

1-2-2. 拡散のメカニズム
Mydoomの拡散は、主に電子メールを利用して行われました。以下のような手口で、ユーザーを騙して感染させる仕組みでした。
- 電子メールに偽装したメッセージを送信
- 件名例: 「Error」「Mail Delivery System」「Test」 など
- メール本文には、「重要な情報が添付されています」などと記載されている。
- 添付ファイルを開くことで感染
- 添付ファイルは、拡張子が
.zip
や.exe
などの実行ファイル。 - ユーザーがファイルを開くと、ウイルスがシステムに侵入。
- 添付ファイルは、拡張子が
- 感染したPCからさらに拡散
- アドレス帳のメールアドレスを利用し、新たなスパムメールを送信。
- ネットワーク全体に広がり、多くのPCが感染。
1-2-3. Mydoomの影響範囲
Mydoomは、企業や個人ユーザーに甚大な被害をもたらしました。特に、以下の分野で深刻な影響が出ました。
分野 | 影響 |
---|---|
企業のITシステム | DDoS攻撃により、企業のサーバーがダウン |
個人ユーザー | 感染PCがスパムメールの踏み台となり、個人情報の漏洩リスクが増加 |
金融機関 | 銀行やオンライン決済サービスの業務に支障をきたす |
セキュリティ業界 | 大量のウイルス感染に対応するため、各社が緊急アップデートを実施 |
Mydoomの技術的詳細
Mydoomは、単なるコンピューターウイルスではなく、非常に高度な感染手法と動作メカニズムを備えたワーム型マルウェアです。
特に、電子メールを介した感染方法や、感染後の動作メカニズムが特徴的であり、これにより史上最速で拡散したマルウェアの一つとなりました。
本章では、Mydoomの侵入手法と、感染後にどのように動作するのかを詳しく解説します。
2-1. 感染手法
2-1-1. Mydoomの主な感染経路
Mydoomの感染経路は主に電子メールですが、P2P(ピア・ツー・ピア)ネットワークやリモートアクセス機能を悪用した拡散方法も報告されています。
感染手法 | 説明 |
---|---|
電子メール | 悪意のある添付ファイルを含むメールを送信し、ユーザーが開封すると感染 |
P2Pファイル共有 | Kazaaなどのファイル共有ネットワークを介して感染ファイルを拡散 |
リモートバックドア | 感染PCにバックドアを作成し、攻撃者が遠隔操作可能に |
2-1-2. 電子メールによる感染の仕組み
Mydoomの最も一般的な感染手法は電子メールの添付ファイル です。
この手法は、当時流行していた他のワーム(例:Sobig、Bagle)と類似していますが、Mydoomは特に高速な拡散能力を持っていました。
- 偽装されたメール
- 件名例:
- Mail Delivery System
- Test
- Error
- Status
- メール本文例:
- 「あなたのアカウントで問題が発生しました」
- 「重要なファイルが添付されています」
- 件名例:
- 添付ファイルの実行
- Mydoomは
.zip
や.exe
形式の添付ファイルを使用。 - ユーザーがファイルを開くと、ウイルスがPCに感染。
- Mydoomは
- 自己拡散
- 感染すると、PC内のメールアドレス帳から連絡先を収集。
- 収集したアドレスに感染メールを大量送信 し、さらなる拡散を図る。
2-1-3. P2Pネットワークを悪用した感染
当時流行していたファイル共有ネットワーク「Kazaa」を利用して、Mydoomは不正な実行ファイルを拡散しました。
感染PCは、偽のファイルをネットワーク上にアップロードし、他のユーザーがダウンロードすることで感染が広がりました。
- ファイル名を偽装
- 人気のあるソフトウェアや音楽ファイルを装った偽ファイルを拡散。
- 例:
WinRAR.exe
、setup.zip
など。
- ダウンロード後に自動実行
- ユーザーが偽ファイルを開くと、ウイルスがシステムに侵入。
2-2. 動作メカニズム
2-2-1. 感染後の動作フロー
Mydoomは、感染後に複数の攻撃活動 を実行します。その主な動作メカニズムは以下の通りです。
- 自身のコピーを作成
- システムフォルダにウイルスのコピーを作成し、PCが再起動しても動作するように設定。
- バックドアの作成
- TCPポート(通常は
3127
)を開放し、外部からリモートアクセス可能に。
- TCPポート(通常は
- スパムメールの送信
- PC内のメールアドレス帳からアドレスを収集し、感染メールを大量送信。
- DDoS攻撃の実行
- 特定のウェブサイトやサーバーを標的にし、アクセスを集中させて機能を停止させる。
- 自己削除
- 一定期間後に自身を削除し、証拠を隠す。
2-2-2. バックドア機能とリモート制御
Mydoomの厄介な点は、感染したPCにバックドアを作成し、攻撃者がリモート操作できる ことです。
このバックドアを利用して、攻撃者は以下のような不正行為を行うことが可能でした。
- 感染PCをボットネットの一部として利用
- 攻撃者が遠隔操作し、スパムメールの踏み台として使用。
- DDoS攻撃の実行端末として利用。
- 個人情報の窃取
- キーロガーなどを仕込み、IDやパスワードを盗み取る。
- 追加のマルウェアをインストール
- Mydoom感染後に、別のマルウェアをダウンロードして感染拡大。
2-2-3. DDoS攻撃のターゲット
Mydoomは、特定の企業や組織を標的にDDoS攻撃 を仕掛けるように設計されていました。
標的 | 攻撃の目的 |
---|---|
SCOグループ | UNIX関連の知的財産権をめぐる論争が原因で攻撃された可能性あり |
Microsoft | マイクロソフトのWebサイトをダウンさせるDDoS攻撃を実行 |
2-2-4. 自己削除機能
Mydoomには、一定の期間が経過すると自己削除する機能 が備わっていました。これにより、感染の痕跡を隠し、ウイルス対策ソフトによる検出を回避しようとしました。
- 一部の亜種では、特定の日付になると自己削除。
- ただし、すでに開かれたバックドアはそのまま残り、リモート攻撃が可能。
Mydoomの影響と被害
Mydoomは、2004年に発見されて以来、世界中で深刻な影響を及ぼしたマルウェアの一つです。
その感染速度の速さと攻撃範囲の広さにより、多くの企業や政府機関が被害を受け、インターネット全体に大きな混乱をもたらしました。
本章では、Mydoomの世界的な被害状況と、経済的損失について詳しく解説します。
3-1. 世界的な被害状況
3-1-1. Mydoomによる被害の規模
Mydoomは、発見後わずか24時間以内に数百万台のPCに感染し、インターネット全体に大きな混乱を引き起こしました。
その感染拡大のスピードは、当時のどのウイルスよりも速く、「史上最も急速に拡散したマルウェア」として記録されています。
Mydoomの被害規模(2004年時点)
項目 | 被害内容 |
---|---|
感染PC数 | 約200万台以上のコンピューターが感染 |
拡散速度 | 発見から24時間以内に数百万台のPCへ感染拡大 |
影響を受けたメールトラフィック | 世界のメールトラフィックの約30%がMydoom関連のスパムに占拠 |
DDoS攻撃の標的 | SCOグループ、Microsoftなどの大手企業が攻撃を受ける |
このように、Mydoomの感染は企業・政府機関・個人ユーザーを問わず広範囲に影響を及ぼしました。
3-1-2. 影響を受けた地域
Mydoomは、特定の国や地域に限定されず、全世界で広範囲にわたる被害 を引き起こしました。
特に、インターネットの普及率が高い以下の地域では深刻な影響が報告されました。
地域 | 主な被害 |
---|---|
アメリカ | 大手IT企業のサーバーがDDoS攻撃を受け、業務が停止。政府機関も影響を受ける。 |
ヨーロッパ | 多くの企業のメールシステムがMydoomのスパム攻撃によりダウン。 |
アジア | 企業や個人のPCが感染し、スパムメールの踏み台として利用される。 |
ロシア | 一部のハッカーがMydoomの派生版を作成し、新たな攻撃を展開。 |
特にアメリカとヨーロッパでは、大手企業や政府機関がMydoomのDDoS攻撃の標的となったことで、被害が拡大しました。
3-1-3. 影響を受けた業界
Mydoomは、個人ユーザーだけでなく、企業や特定の業界にも甚大な影響を与えました。
業界 | 影響 |
---|---|
IT企業 | 大手ソフトウェア企業がDDoS攻撃の標的となり、サービス停止。 |
金融機関 | オンラインバンキングシステムが不安定になり、取引の遅延が発生。 |
電子メールサービス | 大量のスパム送信により、メールサーバーの負荷が急増し、ダウンするケースも。 |
政府機関 | 一部の政府機関が攻撃を受け、ネットワーク障害が発生。 |
このように、Mydoomは世界規模でITシステムに混乱をもたらし、サイバーセキュリティの重要性を再認識させる出来事となりました。
3-2. 経済的損失
3-2-1. Mydoomによる経済的被害
Mydoomの感染により、企業や政府機関がシステム障害やデータ損失に見舞われ、数十億ドル規模の経済的損失 が発生しました。
Mydoomによる主な経済的損失
項目 | 被害額 |
---|---|
総被害額 | 約380億ドル(約4兆円) |
企業の損失 | システム復旧費用・業務停止による損害が数十億ドル規模 |
個人ユーザーの損害 | 感染PCの修復費用、個人データの盗難など |
この被害額は、サイバー攻撃による損害としては当時過去最大級のものであり、Mydoomが歴史的なマルウェアであることを示しています。
3-2-2. 企業の被害事例
特に、MydoomのDDoS攻撃の標的となったSCOグループとMicrosoftは大きな被害を受けました。
- SCOグループ
UNIX関連の知的財産権をめぐる訴訟を抱えていたSCOグループは、MydoomのDDoS攻撃により公式ウェブサイトがダウンしました。これにより、数百万ドルの損害が発生し、企業の信用にも悪影響を及ぼしました。 - Microsoft
Mydoomの感染が拡大した当時、Microsoftはすでにサイバー攻撃の標的になっていました。MydoomによるDDoS攻撃の影響で、一部のサービスが不安定になり、企業のセキュリティ対策に多額のコストがかかる結果となりました。
3-2-3. 復旧と対策にかかった費用
Mydoomの感染拡大を食い止めるために、企業や政府機関は多額のセキュリティ対策費用を投じました。
- ウイルス対策ソフトの導入・更新
- メールフィルタリングシステムの強化
- IT部門の緊急対応による追加コスト
- 感染したPCの修復やOSの再インストール
これらの対策により、Mydoomの被害は次第に収束していきましたが、その影響は長期にわたって残りました。
Mydoomの検出と駆除
Mydoomは、その感染速度の速さとDDoS攻撃機能を備えた危険なマルウェアです。
感染すると、PCの動作が不安定になったり、スパムメールの踏み台として利用されたりする可能性があります。
そのため、早期にMydoomの感染を検出し、適切な駆除手順を実行することが重要です。
本章では、Mydoomの感染の兆候を確認する方法と、安全に削除するための手順について詳しく解説します。
4-1. 感染の兆候と確認方法
4-1-1. Mydoomに感染すると現れる兆候
Mydoomに感染したPCには、以下のような兆候が現れることが多いです。
もし、複数の兆候が確認された場合は、速やかに対処する必要があります。
感染の兆候 | 説明 |
---|---|
PCの動作が遅くなる | Mydoomがバックグラウンドで動作し、CPUやメモリを大量に消費するため、PCのパフォーマンスが著しく低下する。 |
大量のスパムメールが送信される | 感染したPCが勝手にスパムメールを送信し、メールサーバーの負荷が増大する。 |
インターネット接続が不安定になる | DDoS攻撃を実行するためにネットワークトラフィックが増加し、インターネットの速度が低下する。 |
特定のWebサイトにアクセスできなくなる | Mydoomは、Microsoftやウイルス対策ソフトのWebサイトへのアクセスをブロックすることがある。 |
不審なプロセスの実行 | taskmgr.exe (タスクマネージャー)で不明なプロセスが実行されている。 |
4-1-2. 感染を確認する方法
感染の兆候が見られた場合、以下の手順でMydoomに感染しているかを確認できます。
1. タスクマネージャーで不審なプロセスをチェック
Ctrl + Shift + Esc
を押してタスクマネージャーを開く。- 「プロセス」タブ で、以下のような不審なプロセスが動作していないかを確認する。
taskmon.exe
winlogon.exe
(本来のWindowsプロセスではなく、不正に動作している場合)Explorer.exe
(偽装されたもの)
2. Windowsのレジストリを確認
Mydoomは、感染するとWindowsのレジストリにエントリを作成します。以下の手順で確認できます。
Windows + R
を押し、regedit
と入力し、レジストリエディタ を開く。- 以下のキーをチェックし、不審な値が登録されていないか確認する。
HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Run
Explorer.exe
やTaskmon.exe
のような、不審な値が追加されている場合は感染の可能性が高い。
3. セキュリティツールでスキャン
最新のウイルス対策ソフトを使用して、システム全体をスキャンすることでMydoomの感染を確認できます。
推奨ツール:
- Windows Defender
- Malwarebytes
- Norton AntiVirus
- McAfee VirusScan
4-2. 駆除手順とツール
4-2-1. Mydoomを安全に削除する手順
Mydoomに感染していることが確認された場合、以下の手順でウイルスを駆除します。
手順 1. PCをセーフモードで起動
Mydoomは通常の起動時に実行されるため、セーフモードでPCを起動し、駆除作業を行います。
- PCを再起動し、起動中に
F8
キーを押す。 - 「セーフモードとネットワーク」 を選択。
手順 2. タスクマネージャーで不審なプロセスを終了
Ctrl + Shift + Esc
を押し、タスクマネージャーを開く。taskmon.exe
やexplorer.exe
などの不審なプロセスを選択し、「タスクの終了」 をクリック。
手順 3. レジストリの修正
Windows + R
を押してregedit
と入力し、レジストリエディタを開く。- 以下のキーを削除する。
HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Run\Taskmon
regedit
を閉じる。
手順 4. 感染ファイルの削除
エクスプローラー
を開き、以下のパスを確認する。
C:\Windows\System32\Taskmon.exe C:\Windows\System32\Explorer.exe
- これらのファイルを削除する。
手順 5. ウイルス対策ソフトでフルスキャン
最後に、ウイルス対策ソフトを使用してPC全体をスキャンし、残存している可能性のあるMydoomの痕跡を削除します。
4-2-2. Mydoom駆除に役立つツール
Mydoomを安全に削除するために、以下のツールを活用すると効果的です。
ツール名 | 特徴 |
---|---|
Malwarebytes | 強力なマルウェア検出機能を備え、Mydoomの駆除に有効 |
Norton Power Eraser | 高度なスキャン機能を搭載し、ルートキットやバックドアを削除 |
Microsoft Safety Scanner | Windows向けのウイルススキャンツールでMydoomの検出に有効 |
Kaspersky Virus Removal Tool | 駆除専門のツールで、感染PCを安全にクリーンアップ |
Mydoomからの防御策
Mydoomは、電子メールやP2Pネットワークを通じて急速に拡散するマルウェアであり、一度感染するとスパムメールの踏み台にされたり、DDoS攻撃の実行端末として利用されたりする危険性があります。
そのため、事前に感染を防ぐ対策を講じることが非常に重要です。
本章では、Mydoomの感染を防ぐための具体的な予防策と、効果的なセキュリティソフトの活用方法について詳しく解説します。
5-1. 予防策とベストプラクティス
Mydoomの感染を防ぐためには、日常的なセキュリティ対策の強化が不可欠です。
以下の予防策を実践することで、Mydoomだけでなく、類似のマルウェアからもシステムを守ることができます。
5-1-1. 電子メールのセキュリティ対策
Mydoomは、電子メールの添付ファイル を開くことで感染します。そのため、メールを受信する際には以下の点に注意が必要です。
- 送信元が不明なメールの添付ファイルを開かない
- Mydoomは偽装メールを使用して感染を広げるため、送信元が不明なメールは削除するのがベスト。
- 特に、以下のような件名のメールには注意。
Error
Mail Delivery System
Test
Status
- 添付ファイルの拡張子を確認する
- Mydoomの感染に使われるファイルは
.zip
や.exe
の形式が多い。 .scr
や.pif
などの実行可能ファイルも危険。
- Mydoomの感染に使われるファイルは
- HTMLメールの自動実行を無効化
- メールソフトの設定で、「外部画像の自動読み込み」を無効にすることで、悪意のあるスクリプトの実行を防げる。
5-1-2. OSとソフトウェアの最新アップデートを適用
Mydoomは、Windows OSの脆弱性を利用して感染するケースがあります。そのため、以下の対策を徹底しましょう。
- Windows Updateを定期的に実行する
- セキュリティパッチを適用し、脆弱性を修正。
- アプリケーションの最新版を利用
- 特に、メールソフトやブラウザ(Google Chrome、Firefox、Microsoft Edge)などを最新のバージョンに保つ。
5-1-3. ファイアウォールの設定を強化
Mydoomは感染後にバックドアを開放し、攻撃者にリモートアクセスを許可する可能性があります。これを防ぐために、以下の設定を行いましょう。
- Windows Defender ファイアウォールを有効化
- 不審な通信をブロックし、外部からの攻撃を防ぐ。
- TCPポート3127をブロック
- Mydoomは、リモートアクセス用にTCPポート3127を開放するため、これをファイアウォールで遮断。
5-1-4. USBメモリやP2Pファイル共有のリスク管理
Mydoomは、P2Pファイル共有ソフト(例:Kazaa)を悪用して感染を広げることもあります。
- 信頼できるサイト以外からのファイルダウンロードを禁止
- P2Pソフトを使用しない、または利用時にウイルススキャンを行う
- USBメモリを使用する前にウイルスチェックを実行
5-2. セキュリティソフトの活用方法
Mydoomの感染を防ぐためには、適切なセキュリティソフトを導入し、正しく設定する ことが不可欠です。
以下に、セキュリティソフトの選び方や最適な設定方法を解説します。
5-2-1. Mydoom対策に適したセキュリティソフトの選び方
Mydoomの感染防止・駆除に効果的なセキュリティソフトは以下の通りです。
セキュリティソフト | 主な機能 |
---|---|
Windows Defender(Microsoft) | Windows標準搭載のセキュリティソフト。リアルタイム保護が有効。 |
Malwarebytes | 高度なマルウェア検出機能を備え、Mydoomの駆除に効果的。 |
Norton 360 | AIを活用した脅威検知機能を搭載。ファイアウォール設定も可能。 |
Kaspersky Internet Security | 不審な動作を監視し、バックドア型マルウェアの侵入を防止。 |
ESET Internet Security | 軽量で動作が速く、スパムメール対策機能も充実。 |
5-2-2. 効果的なセキュリティソフトの設定方法
セキュリティソフトをインストールしただけでは、完全な防御にはなりません。
以下の設定を行うことで、Mydoomの感染リスクをさらに低減できます。
1. リアルタイム保護を有効化
- Mydoomは電子メールを介して感染するため、リアルタイム保護を必ずオンにする。
- 設定項目:「リアルタイムスキャン」または「常時監視」機能を有効化
2. スケジュールスキャンの設定
- 毎週1回以上、PC全体のフルスキャンを実施。
- 設定例:
- フルスキャン:毎週日曜日の深夜(PCの負荷が少ない時間帯)
- クイックスキャン:毎日1回(起動時)
3. メールフィルタリング機能の有効化
- スパムメールにマルウェアが添付されている可能性が高いため、迷惑メールの自動振り分け を設定。
- 設定項目:「フィッシング詐欺対策」「不正メールの検出」機能をオンにする
4. ファイアウォール設定の最適化
- Mydoomのバックドア機能を防ぐため、外部からの不要な接続をブロック する。
- 設定項目:
- 不要なポート(例:3127番ポート)の閉鎖
- 「未知のアプリケーションからの通信をブロック」 設定を有効化
Mydoomの現在とその後
Mydoomは2004年に発見され、史上最も急速に拡散したマルウェアとして大きな話題となりました。
当時は、電子メールを介した感染やDDoS攻撃を行うことで、企業や個人ユーザーに甚大な被害をもたらしました。
しかし、20年以上が経過した現在、Mydoomの影響はどのようになっているのでしょうか?
本章では、Mydoomの現在の脅威レベルと、類似したマルウェアについて詳しく解説します。
6-1. 現在の脅威レベルと類似マルウェア
6-1-1. Mydoomの現在の影響力
Mydoomの大規模感染は2004年~2005年にピークを迎えましたが、現在でも一部の感染PCが活動を続けていることが確認されています。
特に、古いシステムを使用している環境では、Mydoomが引き続き潜伏している可能性があります。
Mydoomの現在の影響
項目 | 現在の状況 |
---|---|
感染PCの数 | 極めて少数。主に企業の古いシステムや更新されていないPCに残存。 |
スパムメールの発信 | 依然として一部の感染PCからMydoom経由のスパムが送信されている。 |
DDoS攻撃の活動 | 2004~2005年のピーク時と比べると、ほぼ沈静化。 |
ウイルスの新種・変異 | 現在はMydoomの直接的な亜種はほぼ存在せず、より高度なマルウェアが主流。 |
現在では、最新のウイルス対策ソフトがMydoomを簡単に検出・駆除できるため、過去ほどの脅威ではありません。
しかし、脆弱なシステムを標的とした攻撃の一環として、Mydoomのような古いワームが使われることがあるため、注意は必要です。
6-1-2. Mydoomに類似したマルウェア
Mydoomの手法(メールを使った拡散・DDoS攻撃・バックドア機能)を踏襲し、現在も活動しているマルウェアが存在します。
以下に、Mydoomと類似の特徴を持つ代表的なマルウェアを紹介します。
Mydoomに類似したマルウェア
マルウェア名 | 特徴 |
---|---|
Bagle(バグル) | 2004年に発見。Mydoomと同じく、電子メールの添付ファイルを利用して拡散。スパムボットネットの構築が目的。 |
Sobig(ソービッグ) | Mydoomの前身とも言えるワーム型ウイルス。感染するとスパムメールの踏み台となる。 |
Storm Worm(ストームワーム) | 2007年に登場。Mydoomと同じ手口で拡散し、ボットネットを形成する。 |
Emotet(エモテット) | 近年の代表的なマルウェア。電子メールを利用して拡散し、ランサムウェアなどを送り込む。 |
TrickBot(トリックボット) | 金融情報を盗むマルウェア。Mydoomのようなバックドア機能を持ち、企業を標的にすることが多い。 |
6-1-3. 現在のマルウェアの進化とMydoomの違い
Mydoomが登場した2004年当時のマルウェアは、単純な拡散とDDoS攻撃が主な目的でした。
しかし、現代のマルウェアは、より巧妙で多機能化しています。
比較項目 | Mydoom(2004年) | 現代のマルウェア(2020年代) |
---|---|---|
拡散手法 | 電子メールの添付ファイル | フィッシング、ゼロデイ攻撃、USB感染 |
目的 | スパム送信、DDoS攻撃 | 個人情報盗難、ランサムウェア、企業攻撃 |
検出の難しさ | 比較的簡単に検出可能 | AIを使った検出回避、ポリモーフィック型で進化 |
特に近年では、「Emotet」のようにメールを介して感染し、他のマルウェアを送り込む手法が増えています。
これは、Mydoomの拡散手法と似ていますが、より高度な攻撃手法を取り入れています。
6-1-4. Mydoomの教訓と今後の対策
Mydoomの感染拡大は、セキュリティ意識の低いユーザーが多かったことが一因でした。その教訓を活かし、現在では以下のような対策が重視されています。
- 電子メールのフィルタリング強化
- フィッシングメールやマルウェアの添付ファイルを自動検出・隔離する技術の導入。
- AIによる脅威検知
- Mydoomのような単純なワームではなく、AIを活用して新しい脅威を検出する仕組みが普及。
- ゼロトラストセキュリティ
- すべてのネットワーク通信を信頼せず、常に認証を要求する「ゼロトラスト」の考え方が重要視されている。