「NAS(ネットワークアタッチトストレージ)」という言葉を聞いたことはあるけれど、「外付けHDDと何が違うの?」「どのモデルを選べばいいの?」と悩んでいませんか?
NASはデータの一元管理やバックアップに便利なだけでなく、メディアサーバーやリモートアクセスなど、家庭やビジネスで活躍する多機能ストレージです。
本記事では、NASの基本から選び方、設定方法、セキュリティ対策、活用事例までをわかりやすく解説。
初心者でもすぐに導入・活用できるように、具体的なポイントを詳しく紹介します。
この記事は以下のような人におすすめ!
- ネットワークアタッチトストレージ(NAS)とは何か知りたい人
- NASと外付けHDDの違いがわからない人
- NASの選び方がわからない人
目次
1. ネットワークアタッチトストレージ(NAS)とは
ネットワークアタッチトストレージ(NAS)は、ネットワークに直接接続して利用するストレージのことです。簡単に言えば、家やオフィスのLAN(ローカルネットワーク)上に設置された「共有できる外付けHDD」のようなものです。
複数のユーザーやデバイスが同時にアクセスできるため、データの保存・管理・共有を効率的に行うことができます。
個人利用から企業利用まで幅広く活用されており、ファイル共有、バックアップ、メディアストリーミングなど、さまざまな用途に対応しています。
近年では、リモートアクセス機能を搭載したNASも増えており、自宅やオフィス以外の場所からでもインターネット経由でデータにアクセスできるのが特徴です。
1-1. NASの基本概念
NASは、ネットワークを介して複数のユーザーやデバイスが共有できるストレージです。通常、PCに外付けするHDDやSSDはUSBやThunderboltで接続しますが、NASはLAN(イーサネット)に接続することで、同じネットワークにいるすべてのデバイスがアクセス可能になります。
NASは専用のOSを持ち、ユーザー管理やアクセス権の設定、RAIDによるデータ保護など、一般的な外付けHDDにはない高度な機能を備えています。さらに、クラウドストレージと異なり、ローカルネットワーク内で動作するため、インターネットに依存せず高速なデータ転送が可能です。
シンプルなNASは家庭用として手軽に使えますが、企業向けの高機能モデルでは仮想マシンの運用やデータベースの管理もできるほどの性能を持つものもあります。
1-2. NASの主な用途とメリット
NASは、データ管理を効率化し、安全かつ便利にファイルを共有できるストレージとして、家庭やビジネスで活躍します。主な用途とメリットを以下に紹介します。
1-2-1. 主な用途
- ファイル共有とコラボレーション
家族やチームメンバー間でファイルを簡単に共有可能。アクセス権の設定もでき、必要な人だけが特定のデータにアクセスできます。 - データのバックアップ
パソコンやスマホのデータを自動バックアップし、データ消失のリスクを軽減。定期的なバックアップスケジュールを設定できるので、手間なくデータを保護できます。 - メディアサーバーとしての利用
音楽や動画を保存し、PCやスマホ、テレビでストリーミング再生可能。特にPlexやDLNA対応のNASなら、家庭内のエンタメ環境を格段に向上させます。 - リモートアクセス
自宅やオフィスのNASに外出先からアクセスできるため、クラウドストレージのように利用可能。プライバシーを確保しながら、必要なデータにどこからでもアクセスできます。
1-2-2. NASのメリット
- 複数のデバイスで共有できる
PC、スマホ、タブレットなど、異なるデバイスから同じデータにアクセスできるため、利便性が向上。 - データの安全性が高い
RAID機能により、HDDが故障してもデータを保護できる仕組みを採用。バックアップ機能も充実しているため、重要なデータを安全に管理できます。 - クラウドストレージよりコストを抑えられる
大容量のデータを保存する場合、月額費用が発生するクラウドストレージよりも、長期的に見るとNASの方が経済的。 - カスタマイズ性が高い
追加のHDDスロットやアプリケーションを利用できるモデルもあり、用途に応じた設定が可能。
NASは単なるストレージではなく、データの安全性・利便性を大幅に向上させるツールとして、多くのシーンで活用されています。
1-3. NASと他のストレージ(外付けHDD、SAN)との違い
NASと混同されやすいストレージとして、外付けHDDやSAN(ストレージエリアネットワーク)があります。それぞれの違いを明確にしておきましょう。
1-3-1. 外付けHDDとの違い
項目 | NAS | 外付けHDD |
---|---|---|
接続方法 | ネットワーク(LAN) | USB・Thunderbolt |
共有 | 複数デバイスで同時利用可能 | 1台のPCに直接接続 |
機能 | ユーザー管理、RAID、バックアップ機能あり | 単純なストレージ |
拡張性 | HDDの追加やクラウド連携が可能 | 基本的に拡張不可 |
NASはネットワーク経由で複数のデバイスがアクセスできるのに対し、外付けHDDはUSB接続のため、1台のPCでしか使用できません。また、外付けHDDはシンプルなストレージ機能しか持ちませんが、NASはバックアップ機能やRAIDによるデータ保護が可能です。
1-3-2. SANとの違い
項目 | NAS | SAN |
---|---|---|
対象 | 小規模~中規模(家庭・小規模オフィス向け) | 大規模(エンタープライズ向け) |
接続方法 | イーサネット(LAN) | 専用ストレージネットワーク(ファイバーチャネルなど) |
パフォーマンス | 比較的低コストで導入可能 | 高速・高コスト |
運用 | 簡単に設定・管理可能 | 専門的な知識が必要 |
SAN(ストレージエリアネットワーク)は、企業向けの高性能ストレージシステムであり、大規模なデータセンターやサーバールームで利用されます。一方、NASは家庭や中小企業向けの手軽なソリューションで、導入や運用が簡単な点が特徴です。
2. NASの仕組みと構成要素
NAS(ネットワークアタッチトストレージ)は、単なるデータ保存用のHDDとは異なり、小型のコンピュータのように動作します。
データの保存・共有だけでなく、さまざまな機能を実現するために、ハードウェア、ソフトウェア(オペレーティングシステム)、ネットワークプロトコルが組み合わされています。
本章では、NASの仕組みを理解するために、それぞれの構成要素について詳しく解説します。
2-1. ハードウェア構成(CPU、メモリ、ストレージ)
NASは、一般的なPCやサーバーと同じように、CPU、メモリ、ストレージ(HDDまたはSSD)などのハードウェアコンポーネントで構成されています。
それぞれの役割を見ていきましょう。
2-1-1. CPU(プロセッサ)
NASの処理能力を決める重要な要素です。
家庭用のシンプルなNASではARMプロセッサが採用されることが多く、低消費電力ながら十分なパフォーマンスを提供します。一方、企業向けの高性能NASでは、IntelやAMD製のx86 CPUが搭載されており、仮想マシンやデータベースの運用にも耐えられる性能を持ちます。
【CPUの選び方】
- 家庭用・小規模オフィス向け: ARMプロセッサ(低コスト・低消費電力)
- ビジネス・クリエイター向け: Intel Celeron / Pentium(動画編集・バックアップ向き)
- エンタープライズ向け: Intel Xeon / AMD Ryzen(仮想化・大量データ処理)
2-1-2. メモリ(RAM)
NASがスムーズに動作するために必要なメモリ容量。メモリが多いほど、多くのユーザーが同時にアクセスしてもスムーズに動作します。特に、仮想マシンの運用や大容量データの転送を行う場合、最低でも4GB以上のRAMを搭載するのが望ましいでしょう。
【メモリのポイント】
- 2GB以下 → 家庭向けの簡単なデータ共有用途
- 4GB以上 → 複数ユーザーでのファイル共有、ストリーミング
- 8GB以上 → ビジネス利用、大規模データ処理、仮想化
2-1-3. ストレージ(HDD / SSD)
NASの心臓部ともいえるストレージには、大きく分けてHDDとSSDがあります。
- HDD(ハードディスク) → 大容量・低コスト。大量のデータを保存したい場合に最適。
- SSD(ソリッドステートドライブ) → 高速なデータ転送・低消費電力。動画編集や高負荷な業務に向いている。
【ストレージ選びのポイント】
- RAID対応モデルを選べば、データの冗長性が向上(RAID 1, RAID 5 など)。
- **エンタープライズ向けHDD(NAS専用HDD)**を選ぶと、24時間365日運用に耐えられる。
2-2. ソフトウェアとオペレーティングシステム
NASは、ストレージ機能だけでなく、データ管理やアクセス制御を行うための**専用OS(オペレーティングシステム)**を搭載しています。NASのOSによって、操作性や機能の豊富さが変わるため、選択する際には重要なポイントになります。
2-2-1. 主なNASオペレーティングシステム
OS名 | 主要メーカー | 特徴 |
---|---|---|
DSM(DiskStation Manager) | Synology | 直感的なUI、アプリ豊富、家庭用~ビジネス向け |
QTS / QuTS hero | QNAP | 高機能、仮想化・Docker対応、エンタープライズ向けも充実 |
TrueNAS | 自作NAS用 | オープンソース、ZFS対応、エンタープライズ向け |
TOS(TerraMaster OS) | TerraMaster | シンプル設計、小規模オフィス向け |
2-2-2. NAS OSの主な機能
- ユーザー管理・アクセス制御
- ユーザーごとにアクセス権限を設定できる
- グループ管理で部署ごとにフォルダを分けられる
- バックアップ機能
- クラウドストレージと連携(Google Drive, Dropbox, OneDriveなど)
- 他のNASや外付けHDDへの自動バックアップ
- アプリの追加
- PlexやDLNAを使ったメディアサーバー機能
- Dockerや仮想マシンを利用した高度な運用
NASのOSは、単なるストレージ機能だけでなく、さまざまな付加機能を提供するため、選ぶ際には自分の用途に合ったものを選びましょう。
2-3. ファイル共有プロトコル(SMB、NFS、AFPなど)
NASは、異なるデバイスやOS間でスムーズにファイル共有を行うために、ファイル共有プロトコルを使用します。代表的なプロトコルには、SMB、NFS、AFPなどがあり、それぞれ用途や互換性が異なります。
主要なファイル共有プロトコル
プロトコル | 主な用途 | 互換性 |
---|---|---|
SMB(Server Message Block) | Windowsの標準共有プロトコル | Windows, Mac, Linux |
NFS(Network File System) | Linux/UNIX環境でよく使用 | Linux, macOS |
AFP(Apple Filing Protocol) | macOSの旧来のファイル共有 | macOSのみ |
各プロトコルの特徴
- SMB(Windows標準)
- WindowsユーザーならSMBが最も使いやすい
- MacやLinuxでも対応可能だが、Windowsほど最適化されていない
- NFS(Linux / UNIX向け)
- 高速なファイル共有が可能
- Linuxや仮想マシン環境でよく使われる
- AFP(Apple向け)
- macOSの古いバージョンで使用されていたが、現在はSMBに置き換えられつつある
- Macユーザーが旧NASを使用する場合に互換性の問題を考慮
NASを導入する際は、自分の使うOSや環境に適したファイル共有プロトコルを確認することが重要です。
特に、異なるOS間でのファイル共有を行う場合、SMBを基本としつつ、NFSやAFPを補助的に使うのが一般的な方法です。
3. NASの主な機能と活用方法
NAS(ネットワークアタッチトストレージ)は、単なるデータ保存装置ではなく、家庭やビジネスのデータ管理を効率化するための強力なツールです。
本章では、NASの主要な機能と、それをどのように活用できるかを詳しく解説します。
3-1. データの集中管理と共有
NASの最大のメリットの一つは、複数のデバイス間でデータを一元管理できることです。
家庭やオフィスでは、PC、スマホ、タブレットなど、さまざまなデバイスを使う機会が増えていますが、それぞれにデータが分散すると、ファイルの管理が煩雑になりがちです。
NASを使えば、すべてのデータを一箇所に集約し、どのデバイスからでもアクセス可能にできます。
データの共有が簡単に
- 家族間で写真や動画を共有できる
- 会社のチームメンバーがプロジェクトの資料を共同編集できる
- NASのフォルダに保存したデータを、PCやスマホから簡単にアクセス可能
アクセス権を細かく設定
- 家族・チーム内でフォルダごとにアクセス権を設定し、不要なデータの閲覧を防げる
- 例えば、「家族写真フォルダは全員閲覧可」「仕事用のフォルダは自分だけアクセス可」などの設定が可能
NASを導入することで、データを分散させることなく一元管理し、必要なときにスムーズにアクセスできる環境を構築できます。
3-2. バックアップとリカバリ機能
データのバックアップは、突然のトラブル(PCの故障、ウイルス感染、誤削除など)から大切なデータを守るために不可欠です。
NASには、多彩なバックアップ機能が搭載されており、定期的にデータを保存し、万が一の際に復旧できる仕組みを作ることができます。
NASのバックアップ方法
- PCやスマホのデータを自動バックアップ
- Windowsなら「Windowsバックアップ」、Macなら「Time Machine」と連携可能
- スマホの写真や動画も自動でNASに保存
- NAS内のデータを別の場所にバックアップ
- 外付けHDDにバックアップ(ローカルバックアップ)
- クラウドストレージ(Google Drive、Dropboxなど)と同期(クラウドバックアップ)
- 別のNASにバックアップ(NAS to NAS)
- RAIDによるデータ保護
- RAID 1(ミラーリング):同じデータを2つのHDDに保存し、片方が壊れても復旧可能
- RAID 5/6:データの一部を分散して保存し、1~2台のHDDが故障してもデータを保持
リカバリ(復元)機能も充実
- 誤って削除したデータを復元できる「スナップショット」機能
- ウイルスやランサムウェア被害時に過去のデータを復元可能
NASを活用すれば、「PCが壊れたけどデータが無事だった」「過去のデータを復元できた」という安心感を得ることができます。
3-3. メディアサーバーとしての活用(写真、音楽、動画のストリーミング)
NASは、家庭内のメディアサーバーとしても活躍します。音楽、写真、動画をNASに保存しておけば、PCやスマホ、テレビなどで簡単に視聴できます。
NASをメディアサーバーとして使うメリット
- 大容量のデータを保存可能(外付けHDDと違い、家族全員がアクセスできる)
- テレビやスマホでストリーミング再生(直接NASのデータを再生できる)
- 動画や音楽を外出先からも視聴(リモートアクセス機能を活用)
主要なメディアサーバー機能
機能 | できること |
---|---|
Plex Media Server | NASに保存した映画やドラマを、スマホやテレビで視聴 |
DLNA対応 | PlayStation、スマートTV、Fire TV Stickでメディアを再生 |
音楽ストリーミング | iTunesやSpotifyのように、NASから直接音楽を再生 |
たとえば、リビングのテレビで家族旅行の動画を再生したり、スマホからNASに保存した音楽を聴いたりすることができます。
自宅のエンタメ環境をアップグレードしたいなら、NASのメディアサーバー機能は必須です。
3-4. リモートアクセスとクラウド連携
NASは、自宅やオフィスだけでなく、外出先からもデータにアクセスできるのが魅力です。
まるで「自分専用のクラウドストレージ」のように使えるため、Google DriveやDropboxの代替としても利用できます。
リモートアクセスの主な方法
- 専用アプリ(Synology QuickConnect、QNAP myQNAPcloud など)
- 外出先からスマホやPCでNASにアクセス
- まるでクラウドストレージのように使える
- VPNを利用
- NASにVPNサーバーを設定すれば、安全にリモートアクセスが可能
- 公共Wi-Fiを使うときも安心してアクセスできる
- クラウド連携
- Google DriveやDropboxと同期可能
- NAS内のデータをクラウドにバックアップし、データの二重保護が可能
NASのリモートアクセスを使うメリット
- 仕事のファイルにどこからでもアクセスできる
- 旅行先からスマホで自宅のNASに保存した写真を確認
- 友人やクライアントと大容量ファイルを共有(クラウドストレージの容量制限なし)
NASをクラウドと組み合わせることで、セキュリティを確保しつつ、利便性の高いデータ管理環境を構築できます。
4. NASの選び方と導入ポイント
NASを導入する際に重要なのは、自分の用途に合ったモデルを選ぶことです。
家庭用とビジネス用では求められるスペックや機能が異なり、また、ストレージ容量やデータ保護の仕組み(RAID)の選択も重要です。
本章では、NASを選ぶ際のポイントを詳しく解説します。
4-1. 用途別のNAS選定基準(家庭用、ビジネス用)
NASには家庭向けのシンプルなモデルから、企業向けの高性能なモデルまでさまざまな種類があります。
用途に応じた選び方のポイントを見ていきましょう。
4-1-1. 家庭用NASの選び方
- 主な用途: 写真・動画の保存、メディアサーバー、データのバックアップ
- 必要なスペック:
- CPU: 低~中性能(ARMやIntel Celeronクラス)
- メモリ: 2GB~4GB
- ストレージ: 1~4ベイ(最大4台のHDD搭載可)
- 主な機能: DLNA対応、スマホアプリ連携、リモートアクセス
- おすすめの家庭用NAS:
- Synology DS220+(使いやすいUI、ストリーミング機能充実)
- QNAP TS-230(コスパ抜群、メディアサーバー向け)
4-1-2. ビジネス用NASの選び方
- 主な用途: ファイル共有、バックアップ、仮想マシン運用、大規模データ管理
- 必要なスペック:
- CPU: 高性能(Intel Core i3以上、AMD Ryzen、Xeon)
- メモリ: 8GB以上(仮想マシンを運用するなら16GB以上推奨)
- ストレージ: 4ベイ以上(RAID構成が可能なモデル)
- 主な機能: 高速LAN(10GbE対応)、iSCSI、VM対応、クラウド連携
- おすすめのビジネス用NAS:
- Synology DS923+(高性能、クラウドバックアップ連携が強い)
- QNAP TS-673A(AMD Ryzen搭載、仮想マシン運用に最適)
4-2. ストレージ容量と拡張性の考慮
NASを選ぶ際は、ストレージ容量と将来的な拡張性を考慮することが重要です。
ストレージは足りなくなると買い替えが必要になるため、最初に余裕を持った選択をするのが理想です。
4-2-1. ストレージ容量の目安
使用目的 | 推奨容量 |
---|---|
写真やドキュメントの保存 | 2TB~4TB |
動画保存・メディアサーバー | 4TB~10TB |
企業のデータ管理・バックアップ | 10TB以上 |
仮想マシン運用・大規模データ管理 | 20TB以上 |
4-2-2. 拡張性を考慮するポイント
- ドライブベイ数(HDD/SSDを搭載できるスロット)
- 1~2ベイ: 小規模向け(家庭用・個人向け)
- 4ベイ以上: 拡張性が高く、RAID構成が可能(ビジネス向け)
- 8ベイ以上: 大規模データ管理向け
- 外部ストレージとの連携
- USBやeSATAポートがあると、外付けHDDを追加可能
- クラウドストレージとの連携で、NASの容量を補える
4-3. RAID構成とデータ保護
NASの強みの一つが、RAID(複数のHDDを組み合わせてデータを守る技術)によるデータ保護です。RAID構成を選ぶことで、HDDの故障時にデータを失うリスクを低減できます。
4-3-1. 主要なRAID構成
RAIDレベル | 必要HDD数 | 特徴 |
---|---|---|
RAID 0 | 2台以上 | 高速だがデータ保護なし |
RAID 1 | 2台 | ミラーリング(データを二重に保存) |
RAID 5 | 3台以上 | 1台故障してもデータを維持 |
RAID 6 | 4台以上 | 2台故障してもデータを維持 |
RAID 10 | 4台以上 | RAID 1+RAID 0で高速&安全 |
4-3-2. おすすめのRAID選択
- 家庭用: RAID 1(HDDが1台壊れてもデータを保持)
- ビジネス用: RAID 5 or 6(安全性と容量のバランスが良い)
- 高パフォーマンスが必要な環境: RAID 10(速度と安全性の両立)
RAIDを活用することで、HDDの故障リスクに備えながら安全にデータを運用できます。
4-4. メーカー別の特徴とおすすめモデル
NASを提供する主要メーカーは複数ありますが、それぞれ特徴が異なります。以下に代表的なメーカーの特徴をまとめました。
4-4-1. 主要NASメーカーの比較
メーカー | 特徴 | おすすめモデル |
---|---|---|
Synology | 使いやすいUI、アプリが豊富、家庭用~企業用まで対応 | DS220+(家庭用) / DS923+(企業向け) |
QNAP | 高性能、カスタマイズ性が高い、仮想マシン対応 | TS-464(家庭用) / TS-873A(企業向け) |
Buffalo | 国内サポートが充実、コスパが良い | LS720D(家庭用) / TS5410DN(企業向け) |
Western Digital (WD) | シンプルで安価なモデルが多い | My Cloud EX2 Ultra(家庭用) |
4-4-2. おすすめの選び方
- 初心者向け: Synology(UIが分かりやすく、アプリが豊富)
- 高性能を求めるなら: QNAP(仮想マシンや高機能アプリが充実)
- コスパ重視: Buffalo(国内メーカーでサポートが手厚い)
- 手軽に使いたい: WD(シンプルで安価なモデルが多い)
5. NASの設定と運用管理
NASは購入後に適切な設定を行うことで、安全かつ快適に運用することができます。本章では、NASの初期設定から、ユーザー管理、メンテナンス、トラブルシューティングまで、日常的な運用に役立つ情報を詳しく解説します。
5-1. 初期設定とネットワーク接続
NASを使い始める際に、まず行うべき基本的な設定について解説します。
適切な設定を行うことで、スムーズにデータ共有やバックアップが可能になります。
5-1-1. NASの物理設置と電源接続
- NAS本体を安定した場所に設置する(振動が少なく、温度変化が少ない場所が理想)
- 電源アダプターを接続し、HDDをセットする(RAIDを組む場合は、最初に適切なHDDを用意)
5-1-2. ネットワーク接続とIPアドレス設定
- LANケーブルをルーターまたはスイッチに接続し、ネットワークに接続
- DHCP(自動IP割り当て)を使用するか、固定IPアドレスを設定して安定したアクセスを確保
- NASの管理画面(Synology DSMやQNAP QTSなど)にブラウザからアクセスし、初期セットアップを行う
5-1-3. ストレージの初期設定
- RAIDの設定を選択(RAID 1, RAID 5, RAID 6 など用途に応じて)
- ファイルシステムの選択(Btrfs, ext4 など)
- フォルダの作成と共有設定(データを整理しやすいフォルダ構成を決める)
5-2. ユーザー管理とアクセス権設定
NASは複数のユーザーがデータを共有できるため、適切なユーザー管理とアクセス権設定を行うことが重要です。
5-2-1. ユーザーアカウントの作成
- 管理者(Admin)アカウントを設定し、パスワードを強固にする
- 各ユーザーごとに個別のアカウントを作成し、一括管理
5-2-2. アクセス権の設定
- フォルダごとにアクセス制限を設定(例:「写真フォルダは家族全員OK」「仕事フォルダは自分だけ」など)
- 読み取り専用、書き込み可など、細かい権限を設定してセキュリティを強化
5-2-3. グループ管理の活用
- 家族・チーム単位でグループを作成し、アクセス管理を簡単にする
- 例:「家族グループは写真フォルダにアクセス可能」「営業チームは特定のビジネスデータフォルダのみ利用可能」
適切なユーザー管理を行うことで、データの誤削除や不正アクセスを防ぐことができます。
5-3. ファームウェアの更新とメンテナンス
NASを長期間安全に運用するためには、定期的なファームウェアの更新とメンテナンスが欠かせません。
5-3-1. ファームウェアの更新方法
- NASメーカーの管理画面から最新のファームウェアを確認
- 自動更新を有効にするか、手動でアップデートを適用
- 更新後は必ず動作確認を行い、問題がないかチェック
5-3-2. 定期的なHDDの健康チェック
- S.M.A.R.T.診断を実施し、HDDの異常を早期発見
- NAS管理画面の「HDDの状態確認」から、エラーレートや動作時間をチェック
- 異常が見られた場合は、すぐにバックアップを取り、HDD交換を検討
5-3-3. システムのクリーンアップ
- 不要なファイルや古いバックアップデータを削除し、ストレージの空き容量を確保
- ログやキャッシュの整理を行い、動作を軽快に保つ
ファームウェアやHDDの健康管理を怠ると、データ損失やNASの動作不良につながるため、定期的にチェックする習慣をつけましょう。
5-4. トラブルシューティングとサポート情報
NASを運用していると、ネットワークトラブルやアクセス権の問題など、さまざまなトラブルに遭遇することがあります。
ここでは、よくあるトラブルと解決方法を紹介します。
5-4-1. NASにアクセスできない場合の対処法
- ネットワークの接続を確認(LANケーブルやWi-Fiの状態)
- NASのIPアドレスを確認し、固定IPの設定を見直す
- ファイアウォールやアンチウイルスソフトの影響をチェック(ブロックされている場合は例外設定を追加)
5-4-2. ファイルが消えた・アクセスできない場合
- NASのログを確認し、削除された履歴があるかチェック
- バックアップデータやスナップショット機能を利用してデータを復元
- アクセス権の設定ミスがないかを確認し、適切な権限を付与
5-4-3. HDDの異常やNASの動作が遅い場合
- S.M.A.R.T.診断を実施し、HDDの故障がないかチェック
- RAIDの再構築を行う(RAID 1/5/6/10などの設定を確認)
- 不要なアプリやキャッシュを削除し、システム負荷を軽減
5-4-4. メーカーのサポートを活用
- NASメーカー(Synology、QNAP、Buffaloなど)の公式フォーラムやFAQを活用
- トラブルが解決しない場合は、メーカーのカスタマーサポートに問い合わせ
トラブル時に慌てないためにも、バックアップを定期的に取ることが重要です。
NASを長く安全に使うために、適切なメンテナンスとトラブル対応を心がけましょう。
6. NASのセキュリティ対策
NASは便利なストレージ機器ですが、適切なセキュリティ対策を行わないと、不正アクセスやデータ漏洩、ウイルス感染などのリスクにさらされる可能性があります。
本章では、NASを安全に運用するための重要なセキュリティ対策を詳しく解説します。
6-1. データ暗号化とアクセス制御
NASに保存されたデータを安全に保つためには、データ暗号化と適切なアクセス制御が必要です。
不正アクセスを防ぎ、情報漏洩のリスクを最小限に抑えるための対策を紹介します。
6-1-1. データ暗号化の重要性
- AES-256などの強力な暗号化を利用し、データを安全に保管
- ボリューム暗号化(ディスク全体を暗号化)とフォルダ単位の暗号化の選択
- 万が一、HDDが盗まれた場合でも、暗号キーがなければデータが復元されない
6-1-2. NASのアクセス制御設定
- 管理者アカウントのパスワードを強固にする(英数字+記号を組み合わせた強力なパスワードを使用)
- ユーザーごとにアクセス権を設定(特定のフォルダへのアクセス制限)
- 二要素認証(2FA)を有効にする(ログイン時に追加の認証コードを要求)
- IPアドレス制限を設定し、不審なアクセスをブロック
適切なアクセス制御を行うことで、不正アクセスを未然に防ぐことができます。
6-2. ウイルス対策とマルウェア防御
NASもウイルスやマルウェアの脅威にさらされる可能性があるため、適切な対策を講じることが重要です。
6-2-1. ウイルス対策の基本
- NASにはアンチウイルスソフトを導入し、定期的にスキャンを実施
- 自動スキャン設定を有効にし、リアルタイムでマルウェアを検出
- 不審なファイルのアップロードを自動でブロックする設定を活用
6-2-2. ランサムウェア対策
- 重要なフォルダには書き込み制限を設定(不要なユーザーによる変更を防止)
- スナップショット機能を有効化(万が一感染した場合でも、過去の状態に復元可能)
- 外部ネットワークからの直接アクセスを制限し、悪意のある攻撃を防ぐ
NASは個人情報や機密データを保管するための重要なデバイスであるため、定期的なウイルス対策とランサムウェア対策を徹底することが必要です。
6-3. バックアップ戦略と災害対策
データを安全に保つためには、NASだけに依存せず、バックアップの多重化と災害対策を行うことが重要です。
6-3-1. バックアップルール
データを確実に保護するために、「3-2-1ルール」に従ったバックアップ戦略を採用しましょう。
- 3つのデータコピーを保持する(オリジナル+バックアップ2つ)
- 2種類の異なるメディアに保存する(NAS+外付けHDD / NAS+クラウド)
- 1つはオフサイト(別の場所)に保存する(災害時に備えたバックアップ)
6-3-2. NASのバックアップ方法
- クラウドストレージとの同期(Google Drive、Dropbox、OneDrive など)
- 外付けHDDへのバックアップ(定期的な手動/自動バックアップ設定)
- 別のNASへのレプリケーション(NAS to NASのデータ複製機能を活用)
6-3-3. 災害対策(停電・地震・火災対策)
- UPS(無停電電源装置)を導入し、停電時のデータ損失を防ぐ
- 耐震・防火設備を整え、物理的なリスクを最小限にする
- クラウドやオフサイトにデータを保存し、災害時にも復旧可能にする
バックアップと災害対策を徹底することで、万が一の事態でも大切なデータを守ることができます。
6-4. 最新のセキュリティ脅威と対処法
NASを取り巻くセキュリティ環境は常に変化しており、新たな脅威が次々と登場しています。
ここでは、最新の脅威とその対策を紹介します。
6-4-1. NASを狙う最新のサイバー攻撃
- ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃) → 弱いパスワードが狙われる
- ゼロデイ攻撃 → 未修正の脆弱性を狙った攻撃
- NASを標的としたランサムウェア → NAS内のデータを暗号化して身代金を要求


6-4-2. 最新のセキュリティ対策
- ファームウェアを常に最新の状態に保つ(最新の脆弱性を修正)
- 強力なパスワード+二要素認証(2FA)を設定する
- NASの外部アクセスを制限し、VPN経由でのアクセスに統一する
- ログ監視を有効にし、不審なアクセスをリアルタイムで検知
6-4-3. 緊急時の対応策
- 定期的なバックアップを取っておく(ランサムウェアに感染してもデータを復旧可能)
- 疑わしいメールやファイルを開かない(フィッシング攻撃の回避)
- 不審な動作を検知した場合は、すぐにネットワークから切断し、管理画面でログを確認
NASはデータの集中管理ができる反面、セキュリティリスクも高いため、最新の脅威に対応するための対策を継続的に行うことが重要です。

8. NASに関するよくある質問(FAQ)
NASは便利なストレージシステムですが、導入前や運用中に疑問やトラブルが発生することがあります。
ここでは、NASに関する一般的な疑問や、トラブル時の解決策、性能を向上させるためのヒントを詳しく解説します。
8-1. NASの導入に関する一般的な疑問
NASを初めて導入する際、多くの人が疑問に思う点について解説します。
8-1-1. NASと外付けHDDの違いは?
NASはネットワーク経由で複数のデバイスと共有できるストレージであり、外付けHDDはUSBなどでPCに直接接続するストレージです。
主な違いは以下の通りです。
項目 | NAS | 外付けHDD |
---|---|---|
接続方法 | LAN(ネットワーク接続) | USB、Thunderbolt |
共有 | 複数デバイスで同時アクセス可能 | 1台のPCのみ |
機能 | RAID、リモートアクセス、バックアップ機能あり | シンプルなストレージ |
8-1-2. NASのセットアップは難しい?
最近のNASは初心者でも簡単に設定できるようになっています。
- Synology DSMやQNAP QTSなどの管理画面は直感的な操作が可能
- セットアップウィザードが用意されており、初期設定もスムーズ
- スマホアプリからの設定・管理も可能
初心者でも、手順を追って設定すれば問題なく導入できます。
8-1-3. NASを選ぶ際に重要なポイントは?
用途に応じたNASの選び方を簡単にまとめると以下の通りです。
- 家庭用: 2~4ベイ、ミドルスペックのCPU(Intel Celeronクラス)
- 小規模オフィス: 4ベイ以上、RAID 5/6対応、高速ネットワーク対応
- クリエイター・開発者: 8ベイ以上、高速SSD対応、10GbE LAN対応
導入前に用途を明確にしておくと、最適なモデルを選びやすくなります。
8-2. トラブル時の対処法
NASを運用していると、さまざまなトラブルに遭遇することがあります。
ここでは、よくあるトラブルとその解決策を紹介します。
8-2-1. NASにアクセスできない(ネットワーク接続エラー)
- NASの電源・LANケーブルの接続を確認(物理的な問題がないかチェック)
- ルーターやスイッチの再起動を試す(ネットワークの問題をリセット)
- IPアドレスを確認し、固定IPを設定する(DHCPで変更されていないかチェック)
- セキュリティソフトやファイアウォールの設定を見直す(アクセスがブロックされていないか)
8-2-2. データが消えた・アクセスできない
- スナップショット機能が有効か確認(過去のデータを復元可能)
- RAIDの状態をチェック(HDD障害が発生していないか)
- バックアップがある場合は復元を試す
8-2-3. NASの動作が遅い・転送速度が低下した
- LANケーブルの規格を確認(Cat6以上推奨)
- HDDの健康状態を確認(エラーログをチェック)
- 不要なアプリやサービスを停止し、負荷を軽減
定期的なメンテナンスを行うことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
8-3. 性能向上のためのヒント
NASの性能を最大限に引き出すためのポイントを紹介します。
8-3-1. ネットワーク速度を向上させる
- ギガビットLAN(1GbE)ではなく、10GbE対応のNASを選ぶ
- ルーターやスイッチも高速対応のものに変更
- LANケーブルはCat6a以上を使用し、ボトルネックを解消
8-3-2. キャッシュ機能を活用する
- SSDキャッシュを追加することで、読み書き速度を向上
- NVMe SSDスロット搭載モデルを選び、キャッシュとして活用
8-3-3. RAID設定を最適化する
- RAID 0を選ぶと速度は向上するが、データ保護はされないため注意
- RAID 10を選べば、速度とデータ保護を両立できる
8-3-4. ファームウェア・アプリの最新化
- 定期的にファームウェアを更新し、最適なパフォーマンスを維持
- 不要なアプリを無効化し、CPU・メモリ負荷を軽減
適切なチューニングを行うことで、NASの性能を最大限に活用できます。