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VRRPとは?企業ネットワークの冗長化に必須の技術を初心者向けに解説!

「VRRPとは?」と検索したあなたは、ネットワークの冗長化に悩んでいませんか?
ルーターが1台しかないと、故障時に通信が途絶えてしまうリスクがあります。

そんな問題を解決するのがVRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)です。VRRPを導入すれば、障害時にも自動でルーターが切り替わり、安定したネットワークを維持できます。

本記事では、VRRPの仕組みや設定方法、他の冗長化プロトコルとの違い、活用事例、導入時の注意点まで徹底解説!

「VRRPを理解し、実際に活用したい」と考えている方は、ぜひ最後までお読みください。

外資系エンジニア

この記事は以下のような人におすすめ!

  • VRRPとは何か知りたい人
  • VRRPの導入メリットが知りたい人
  • どのような環境でVRRPが効果を発揮するのか知りたい人

VRRPの基本

1-1. VRRPとは何か

VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)は、ネットワークの冗長性を確保するためのプロトコルです。

通常、ルーターが1台しかない場合、そのルーターが故障すると通信が途絶えてしまいます。

VRRPを導入すると、複数のルーターを1つの仮想ルーターとして動作させ、万が一の障害時にも自動で切り替えることでネットワークの継続性を維持できます。

1-1-1. VRRPの定義

VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)は、ネットワーク機器の冗長構成を実現するためのプロトコルであり、RFC 5798 で標準化されています。

VRRPを使用すると、複数のルーターをグループ化し、仮想的に1つのルーターとして機能させることができます。

これにより、1台のルーターに障害が発生しても、別のルーターが即座に引き継ぎ、通信の中断を防ぐことができます。

1-1-2. VRRPの目的

VRRPの主な目的は、ネットワークの可用性を向上させ、単一障害点(Single Point of Failure, SPOF)を回避することです。企業ネットワークやデータセンターでは、ルーターの障害による通信断は大きな影響を及ぼします。VRRPを活用することで、重要なシステムの信頼性を高め、障害時にもユーザーが意識することなくネットワークを利用できる環境を提供します。

1-2. VRRPの歴史と標準化

VRRPは1990年代後半に策定され、現在ではネットワークの冗長化技術として広く採用されています。

インターネットの発展に伴い、企業ネットワークの安定性が求められるようになり、VRRPはその解決策として生まれました。

1-2-1. VRRPの開発経緯

VRRPは、もともとCiscoのHSRP(Hot Standby Router Protocol)に対抗する形で開発されました。

HSRPはCisco独自の技術であったため、異なるベンダー間で相互運用ができるオープンなプロトコルとしてVRRPが標準化されました。

これにより、異なるメーカーのルーター間でも冗長化が可能となり、ネットワークの設計自由度が向上しました。

1-2-2. VRRPの標準化団体

VRRPは、IETF(Internet Engineering Task Force)によって標準化されており、最初のバージョンはRFC 2338として1998年に公開されました。

その後、IPv6対応やセキュリティ強化を目的として改良が加えられ、現在はRFC 5798が最新の規格となっています。

IETFは、VRRPの運用改善や新機能の追加を継続的に行い、ネットワーク技術の進化に対応しています。

VRRPの仕組み

2-1. 仮想ルーターの概念

VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)は、ネットワークの可用性を向上させるための技術です。通常、ネットワークのデフォルトゲートウェイには1台のルーターが設定されますが、そのルーターが故障すると通信が途絶えてしまいます。

VRRPを利用すると、複数のルーターを仮想ルーターとしてグループ化し、1つのIPアドレスを共有することで、障害発生時にスムーズな切り替えを実現できます。

2-1-1. 仮想ルーターとは何か

仮想ルーターとは、VRRPを用いて複数のルーターを1つのルーターとして扱う仕組みです。

仮想ルーターには仮想IPアドレス(Virtual IP, VIP)が設定され、ネットワーク上の端末(クライアント)はこの仮想IPをデフォルトゲートウェイとして利用します。

これにより、どのルーターが実際に通信を処理しているかを意識することなく、安定したネットワーク接続を維持できます。

2-2. マスターとバックアップの役割

VRRPでは、仮想ルーターを構成するルーターのうち、実際に通信を処理するルーターをマスタールーターと呼びます。

一方、マスタールーターがダウンした際にバックアップとして待機し、切り替えを行うルーターをバックアップルーターと呼びます。

2-2-1. マスタールーターの機能と役割

マスタールーターは、VRRPグループ内で最も優先度の高いルーターが自動的に選出されます。

このルーターは、仮想IPアドレスを実際のインターフェースにバインドし、クライアントの通信を処理します。

マスタールーターは定期的にVRRPパケットを送信し、自身が正常に動作していることをバックアップルーターに通知します。

2-2-2. バックアップルーターの機能と役割

バックアップルーターは、通常時は待機状態にありますが、マスタールーターからのVRRPパケットが一定期間受信できなくなると、自動的にマスターに昇格します。

この仕組みにより、ルーターの障害時にもネットワークの通信を維持できるようになっています。

2-3. 優先度と選出プロセス

VRRPでは、複数のルーターの中からどのルーターをマスターにするかを決定するために、**優先度(Priority)**という概念が導入されています。各ルーターには優先度が設定され、最も高い優先度を持つルーターがマスタールーターとし

て選ばれます。

2-3-1. ルーターの優先度設定

VRRPの優先度は、0〜255の範囲で設定可能です。

デフォルトでは優先度100に設定されていますが、特定のルーターを優先的にマスターにしたい場合は、より高い数値を設定することで調整できます。

また、物理インターフェースの状態(例えばWAN側がダウンした場合)に応じて優先度を変更することも可能です。

2-3-2. マスター選出の仕組み

VRRPのマスター選出は以下のルールに基づいて行われます:

  1. 最も高い優先度を持つルーターがマスターになる
  2. 優先度が同じ場合は、IPアドレスが最も高いルーターがマスターになる
  3. 現在のマスタールーターがダウンした場合、次に優先度の高いルーターがマスターに昇格する

この仕組みにより、ネットワークが安定して動作し、障害発生時にもスムーズにフェイルオーバーが実現できます。

VRRPの設定方法

3-1. 基本的な設定手順

VRRPを導入することで、ネットワークの冗長性を確保し、障害発生時のダウンタイムを最小限に抑えることができます。

ここでは、VRRPの基本的な設定項目と手順について説明します。

3-1-1. VRRPの基本設定項目

VRRPを構成する際には、以下の項目を設定する必要があります。

  • VRRPグループの作成
    • 複数のルーターをVRRPグループとしてまとめる
  • 仮想IPアドレス(Virtual IP)の設定
    • クライアントがデフォルトゲートウェイとして利用する仮想IPを設定
  • 優先度(Priority)の設定
    • マスタールーターを決定するために各ルーターに優先度を指定(0~255)
  • プリエンプト機能の有効化
    • より高い優先度を持つルーターが存在する場合、自動的にマスターを切り替えるかどうか
  • VRRPアドバタイズメント間隔
    • マスターがバックアップルーターへ通知を送る頻度(通常1秒間隔)

3-1-2. VRRPの基本設定手順

  1. ルーターのインターフェースを設定bashコピーする編集するinterface GigabitEthernet0/1
  2. VRRPグループを作成し、仮想IPを設定bashコピーする編集するvrrp 1 ip 192.168.1.1
  3. 優先度を設定(デフォルトは100、数値が高いほど優先)bashコピーする編集するvrrp 1 priority 150
  4. プリエンプト機能の有効化bashコピーする編集するvrrp 1 preempt
  5. 設定を保存bashコピーする編集するwrite memory

この手順を実行することで、VRRPによる冗長化を実現できます。

3-2. 設定例(Cisco機器の場合)

Ciscoルーターでは、VRRPの設定は比較的シンプルで、「vrrp」コマンドを使用して設定します。

ここでは、具体的なCisco機器での設定例を紹介します。

3-2-1. Ciscoルーターでの具体的な設定例

以下の例では、2台のルーター(Router A、Router B)をVRRPグループ1として設定し、マスタールーターとバックアップルーターを構成します。

Router A(マスター)

interface GigabitEthernet0/1
ip address 192.168.1.2 255.255.255.0
vrrp 1 ip 192.168.1.1
vrrp 1 priority 150
vrrp 1 preempt
vrrp 1 authentication mypass

Router B(バックアップ)

interface GigabitEthernet0/1
ip address 192.168.1.3 255.255.255.0
vrrp 1 ip 192.168.1.1
vrrp 1 priority 100
vrrp 1 authentication mypass


この設定では、Router Aが優先度150であるため、マスタールーターとして動作し、Router Bがバックアップとして待機します。

3-3. 設定時の注意点

VRRPの設定はシンプルですが、いくつかのポイントに注意しないと意図した動作をしない可能性があります。ここでは、設定時に留意すべき点とトラブルシューティングについて説明します。

3-3-1. 設定時に留意すべきポイント

  1. 仮想IPアドレス(VIP)はサブネット内で一意であることを確認
    • 仮想IPアドレスが他のデバイスと競合すると、通信に問題が発生します。
  2. 全ルーターでVRRPグループ番号を統一する
    • VRRPグループ番号が異なると、バックアップルーターが正常に動作しません。
  3. VRRPアドバタイズメント間隔を適切に設定
    • 短すぎるとトラフィック負荷が増え、長すぎるとフェイルオーバーの遅延が発生。
  4. プリエンプト機能を適切に設定
    • ネットワークの安定性を重視する場合は無効化し、マスターがダウンした後もバックアップが継続して稼働するように設定するとよい。

3-3-2. トラブルシューティング

  • VRRPが正常に動作しない場合
    • show vrrp コマンドで状態を確認
    • debug vrrp で詳細ログを取得
  • バックアップルーターがマスターに昇格しない場合
    • VRRPの優先度設定を見直す
    • VRRPアドバタイズメントの送受信がブロックされていないか確認(ACLやファイアウォール設定を確認)

他の冗長化プロトコルとの比較

ネットワークの冗長化を実現するプロトコルはVRRPだけではありません。

Ciscoが独自に開発したHSRP(Hot Standby Router Protocol)、負荷分散機能を持つGLBP(Gateway Load Balancing Protocol)、BSD系OSで使われる**CARP(Common Address Redundancy Protocol)**など、用途や環境に応じてさまざまなプロトコルが存在します。

ここでは、それぞれの違いを比較し、VRRPとのメリット・デメリットを解説します。

4-1. HSRPとの違い

HSRP(Hot Standby Router Protocol)は、Cisco独自の冗長化プロトコルで、VRRPと非常に似た動作をします。

しかし、VRRPとは異なり、Ciscoの機器でのみ動作するため、異なるメーカーのルーターを混在させたネットワーク環境では使用できません。

4-1-1. HSRPとVRRPの比較と違い

比較項目HSRPVRRP
ベンダーCisco独自オープンスタンダード(IETF)
マスターの呼称アクティブルーターマスタールーター
優先度のデフォルト値100100
プリエンプト機能デフォルト無効デフォルト有効
グループ番号0〜2550〜255
マルチキャストアドレス224.0.0.2224.0.0.18

VRRPのメリット

  • ベンダー非依存のため、Cisco以外のルーターでも使用可能
  • プリエンプト機能がデフォルトで有効になっているため、優先度の高いルーターが自動的にマスターになる

HSRPのメリット

  • Ciscoルーターを使用している環境では、より細かい設定や最適化が可能
  • HSRPバージョン2ではIPv6サポートが強化されている

4-2. GLBPとの違い

GLBP(Gateway Load Balancing Protocol)は、Ciscoが開発した負荷分散機能を持つ冗長化プロトコルです。

VRRPやHSRPは1台のルーターのみがマスター(アクティブ)として動作するのに対し、GLBPは複数のルーターが同時にパケットを処理できるという点が大きな違いです。

4-2-1. GLBPとVRRPの比較と違い

比較項目GLBPVRRP
ベンダーCisco独自オープンスタンダード(IETF)
負荷分散可能(複数ルーターで処理)不可(マスター1台のみ)
マスターの呼称アクティブバーチャルゲートウェイ(AVG)マスタールーター
グループ内ルーターの役割AVG + AVF(アクティブバーチャルフォワーダー)マスターとバックアップ
IPv6対応ありあり

VRRPのメリット

  • オープンスタンダードのため、どのメーカーのルーターでも利用可能
  • 負荷分散機能はないが、シンプルな構成で動作するため設定が容易

GLBPのメリット

  • 複数のルーターが同時に通信を処理できるため、負荷分散が可能
  • Ciscoルーターの環境では、冗長化と同時にトラフィックの最適化ができる

4-3. CARPとの違い

CARP(Common Address Redundancy Protocol)は、オープンソースのOS(FreeBSD、OpenBSD、pfSenseなど)で利用される冗長化プロトコルです。

VRRPに似た動作をしますが、ライセンスフリーであり、BSD系のネットワーク機器やファイアウォールで広く使用されています。

4-3-1. CARPとVRRPの比較と違い

比較項目CARPVRRP
ベンダーBSD系OS向け(オープンソース)オープンスタンダード(IETF)
対応OSFreeBSD, OpenBSD, pfSense などルーター全般
マルチキャスト不使用224.0.0.18
セキュリティパスワード認証ありパスワード認証なし
使用ライセンスBSDライセンス(無料)RFC標準(特許あり)

VRRPのメリット

  • BSD系OS以外の環境でも利用可能
  • ネットワーク機器メーカーが広く採用しており、業務システムにも対応しやすい

CARPのメリット

  • オープンソースでライセンスの制約がないため、無料で利用可能
  • パスワード認証機能を持つため、セキュリティ面でVRRPより優れている

VRRPの活用事例

VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)は、ネットワークの可用性を向上させるための重要な技術であり、多くの企業やデータセンター、ISP(インターネットサービスプロバイダー)で広く活用されています。

ここでは、それぞれの環境でVRRPがどのように利用されているのか、具体的な事例を紹介します。

5-1. 企業ネットワークでの導入例

企業内ネットワークでは、ルーターやファイアウォールの冗長構成が求められます。

特に、社内LANや支社間接続でVRRPを導入することで、障害時にも業務を継続できる環境を構築できます。

5-1-1. 企業内ネットワークでのVRRP活用事例

  • 拠点ルーターの冗長化
    • 本社と支社をVPNで接続している場合、VRRPを使用してデフォルトゲートウェイを冗長化することで、通信の安定性を向上。
  • 社内Wi-Fiの安定運用
    • 無線LANコントローラーとVRRPを組み合わせることで、Wi-Fi環境が途切れず、オフィス内の通信を安定化。
  • ファイアウォールの高可用性
    • インターネット接続用のファイアウォールをVRRPで冗長化し、1台が故障しても即座にバックアップ機器に切り替わる仕組みを構築。

導入メリット

  • ルーター障害時の業務停止リスクを低減
  • 社内ネットワークの安定性向上
  • ファイアウォールのダウンタイムを最小化

5-2. データセンターでの活用

データセンターでは、大量のサーバーやネットワーク機器を管理し、24時間365日の安定稼働が求められます。

VRRPを利用することで、ルーターやスイッチの障害時にも通信を途切れさせることなく運用できます。

5-2-1. データセンターにおけるVRRPの利用方法

  • コアスイッチの冗長化
    • データセンター内の主要なスイッチにVRRPを設定し、万が一の障害時にもトラフィックが適切にルーティングされるようにする。
  • サーバーファームの冗長ネットワーク
    • WebサーバーやDBサーバーにアクセスする際のゲートウェイをVRRPで冗長化し、負荷分散しながら運用。
  • 外部接続の安定化
    • インターネットや他のデータセンターとの接続をVRRPで冗長化し、障害時の通信断を防止。

導入メリット

  • データセンター内のネットワーク障害リスクを軽減
  • サーバー間の通信を安定化
  • 外部との接続が途切れない冗長構成を実現

5-3. ISPでの導入事例

インターネットサービスプロバイダー(ISP)では、大規模なネットワーク環境を管理し、多くのユーザーに安定した接続を提供する必要があります。

VRRPは、ISPのバックボーンネットワークの冗長化において重要な役割を果たします。

5-3-1. インターネットサービスプロバイダーでのVRRP活用例

  • バックボーンルーターの冗長化
    • ISPのコアネットワークでVRRPを使用し、バックボーンルーターがダウンした場合にも即座に代替ルーターが処理を引き継ぐ。
  • 顧客向けネットワークの可用性向上
    • 企業向け専用線や光回線サービスにおいて、VRRPを活用して顧客のゲートウェイを冗長化し、サービスの停止を防ぐ。
  • DNSサーバーやDHCPサーバーの接続安定化
    • ISPが運用するDNSサーバーやDHCPサーバーのゲートウェイをVRRPで冗長化し、ユーザーが常に安定したネットワーク環境を利用できるようにする。

導入メリット

  • ISPのバックボーンネットワークの信頼性向上
  • 企業顧客向けの安定したネットワークサービスを提供可能
  • ネットワークの冗長性を強化し、障害時の影響を最小化

VRRPのメリットとデメリット

VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)は、ネットワークの冗長性を高めるために広く利用されています。

しかし、すべての環境に適しているわけではなく、導入にはいくつかの注意点もあります。

ここでは、VRRPのメリット、デメリット、導入時に考慮すべきポイントについて詳しく解説します。

6-1. VRRPの利点

VRRPを導入することで、ネットワークの可用性が向上し、障害発生時の影響を最小限に抑えることができます。

6-1-1. VRRPを導入することで得られるメリット

  1. ネットワークの冗長性を確保できる
    • 単一障害点(SPOF)を回避し、ルーターの障害時にも通信を維持。
    • マスタールーターのダウン時にはバックアップルーターが自動的に昇格し、ネットワークのダウンタイムを削減。
  2. オープンスタンダードでベンダーに依存しない
    • HSRP(Cisco独自)とは異なり、VRRPはオープンスタンダードのため、異なるメーカーのルーター間でも運用可能。
  3. 仮想IPアドレスの利用でシームレスなフェイルオーバー
    • クライアント側でデフォルトゲートウェイを変更する必要がなく、ネットワークの切り替えがスムーズに行われる。
  4. 設定が比較的シンプル
    • 基本的な設定手順(仮想IP設定・優先度設定・プリエンプト機能の有効化)だけで導入可能。
  5. ロードバランシングと組み合わせて活用可能
    • VRRP単体では負荷分散機能はないが、OSPFやBGPと組み合わせることでトラフィックの最適化が可能

6-2. VRRPの課題と制限

VRRPは便利なプロトコルですが、いくつかのデメリットや導入時の注意点があります。

6-2-1. VRRPのデメリットや注意点

  1. 負荷分散機能がない
    • VRRPはあくまで冗長化を目的としたプロトコルであり、GLBPのようにトラフィックを複数のルーターに分散する機能はない
  2. VRRPの設定ミスによる通信トラブル
    • 優先度設定やプリエンプト機能の使い方を誤ると、マスターが頻繁に切り替わり、ネットワークが不安定になる可能性がある。
  3. VRRPアドバタイズメント間隔の影響
    • 通常1秒間隔でVRRPのパケットを送信しているが、設定によっては切り替えが遅れることもある。
    • 短くしすぎるとネットワーク負荷が増加するため、適切な間隔に調整する必要がある
  4. IPv6環境ではVRRPv3が必要
    • VRRPはIPv4向けに開発されたプロトコルであり、IPv6対応のためにはVRRPv3を使用する必要がある
  5. セキュリティリスク
    • VRRPには認証機能が標準では搭載されていないため、不正なVRRPパケットを送信することで、意図しないルーターがマスターに昇格する可能性がある。
    • セキュリティを強化するために、管理インターフェースのアクセス制御やVRRPパケットのフィルタリングを実施することが推奨される。

6-3. 導入時の考慮事項

VRRPを導入する際には、どのようなネットワーク環境に適用するのかを事前に検討し、適切な設定を行うことが重要です。

6-3-1. VRRP導入時に検討すべきポイント

  1. どのルーターをマスターにするかを決定
    • 通信の安定性を考慮し、スペックの高いルーターを優先度の高いマスターに設定することが望ましい。
  2. プリエンプト機能の適用を慎重に判断
    • ネットワークの安定性を重視する場合は、プリエンプトを無効化することで、頻繁なマスター切り替えを防ぐ。
    • マスターに適したルーターを手動で設定する場合は、プリエンプトを有効にすることで自動切り替えを確保
  3. フェイルオーバーの速度調整
    • VRRPのアドバタイズメント間隔をネットワークの要件に応じて調整し、適切なフェイルオーバー時間を確保する。
  4. セキュリティ対策
    • VRRPのトラフィックを制限し、不要なVRRPパケットをブロックするACLを設定
    • 不正なマスター昇格を防ぐために、VRRPパケットの認証機能を追加(Cisco機器では可能)
  5. ネットワーク全体の設計との整合性
    • OSPFやBGPなどのルーティングプロトコルとVRRPの連携を考慮し、冗長構成の最適化を図る。