Wi-Fiのセキュリティ設定で「WPA2-PSK(AES)」を選ぶのが一般的と言われますが、「そもそもAESとTKIPの違いは?」「設定してもWi-Fiが不安定…」と悩んでいませんか?
実は、適切な設定や管理をしないと、通信速度の低下や不正アクセスのリスクが高まることも。
本記事では、WPA2-PSK(AES)の仕組みや最適な設定方法、接続トラブルの解決策まで詳しく解説します。
Wi-Fiの安全性を強化し、快適なネット環境を維持するためのポイントを押さえていきましょう!
この記事は以下のような人におすすめ!
- WPA2-AESとWPA2-PSKの違いが分からない人
- Wi-Fiのセキュリティについて学びたい人
- 安全なWi-Fi環境を維持する方法を知りたい人
目次
WPA2-PSK(AES)とは何か
Wi-Fiのセキュリティを考える際に、「WPA2-PSK(AES)」という言葉を目にすることがあるでしょう。
これは、現在一般的に使われている無線LANの暗号化方式の一つで、多くの家庭やオフィスで採用されています。
しかし、具体的にどのような仕組みなのか、どの程度安全なのかを理解している人は意外と少ないかもしれません。
本記事では、WPA2-PSK(AES)の基本的な仕組みを解説し、Wi-Fiのセキュリティを確保するためのポイントを紹介します。
1-1. WPA2の概要
1-1-1. WPA2とは何か?
WPA2(Wi-Fi Protected Access 2)は、Wi-Fiネットワークのセキュリティを向上させるために開発された暗号化プロトコルです。
2004年に登場し、それまでのWEP(Wired Equivalent Privacy)やWPA(Wi-Fi Protected Access)よりも強固な暗号化技術を採用しています。
WPA2には大きく分けて2つのモードがあります。
- WPA2-Enterprise:企業向けで、RADIUSサーバーを用いた認証方式を採用
- WPA2-PSK(AES):家庭や小規模オフィス向けで、事前に設定したパスワード(Pre-Shared Key)を使用
多くのルーターでは、デフォルトのセキュリティ設定として「WPA2-PSK(AES)」が選ばれています。
1-1-2. WPAとWPA2の違い
WPA2の前身であるWPAと比較すると、WPA2では**より強力な暗号化方式(AES)**を使用しており、安全性が向上しています。
以下は、WEP、WPA、WPA2の主な違いです。
セキュリティ方式 | 暗号化技術 | 安全性 |
---|---|---|
WEP | RC4(脆弱) | 非常に低い |
WPA | TKIP(改良版RC4) | 中程度 |
WPA2 | AES(高度な暗号化) | 高い |
特に、WEPは脆弱性が多く、すでに使用が推奨されていません。
一方で、WPA2は現在も広く利用されており、安全性の高い暗号化方式とされています。
1-2-1. PSKとは何か?
PSK(Pre-Shared Key)とは、日本語で「事前共有鍵」と訳され、Wi-Fiネットワークで使用するパスワードのことを指します。
WPA2-PSK(AES)では、この事前共有鍵を用いて、Wi-Fiルーターと接続するデバイスの間で通信の暗号化を行います。
家庭用のWi-Fiでは、パスワードを手入力することで、PSKによる認証と暗号化が行われ、外部からの不正アクセスを防ぎます。
1-2-2. PSK方式のメリットとデメリット
PSK方式にはいくつかの利点があります。
- 設定が簡単で、特別な機器やサーバーが不要
- ユーザーが手軽にWi-Fiを利用できる
一方で、デメリットも存在します。
- パスワードが流出すると第三者がアクセス可能
- ユーザーごとの個別認証ができないため、大規模環境には向かない
そのため、Wi-Fiのパスワードを強固にし、定期的に変更することが重要です。

1-3. AES暗号化方式の特徴
1-3-1. AESとは?
AES(Advanced Encryption Standard)は、現在のWi-Fiセキュリティで採用されている強力な暗号化方式です。
この暗号化技術は、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が策定し、世界中のネットワーク機器で利用されています。
AESは、従来のRC4やTKIPと比べて、以下の点で優れています。
- 暗号化強度が高い(128ビット、192ビット、256ビットの鍵長を選択可能)
- 解読が困難で、現在のコンピューターでは総当たり攻撃がほぼ不可能
- ハードウェアによる高速な暗号処理が可能
1-3-2. WPA2-PSK(AES)が推奨される理由
現在、Wi-Fiの暗号化方式として、WPA2-PSK(AES)が広く推奨されているのは、AESの強固なセキュリティが理由の一つです。
AESは、総当たり攻撃(ブルートフォースアタック)や、データの改ざんに対して高い耐性を持ち、一般家庭でも安全にWi-Fiを利用できる環境を提供します。
WPA2-PSK(AES)の安全性
Wi-Fiのセキュリティは、インターネットを安全に利用するために欠かせない要素です。
「WPA2-PSK(AES)」は現在広く使われている暗号化方式ですが、実際にどの程度安全なのかを理解している人は意外と少ないかもしれません。
本記事では、他のセキュリティプロトコルとの比較や、WPA2-PSK(AES)の脆弱性、最新のWPA3との違いについて詳しく解説します。
2-1. 他のセキュリティプロトコルとの比較(WEP、WPAなど)
Wi-Fiのセキュリティプロトコルは、時代とともに進化してきました。
ここでは、WEP、WPA、WPA2(AES)の違いを比較し、それぞれの特徴を解説します。
2-1-1. WEPの特徴と問題点
WEP(Wired Equivalent Privacy)は、Wi-Fiの初期の暗号化方式として1999年に登場しました。
当時は画期的な技術でしたが、以下のような深刻なセキュリティ上の問題が指摘され、現在では推奨されていません。
- 暗号化方式が脆弱であり、専用ツールを使えば数分で解読可能
- 暗号鍵が固定されており、一度漏れるとネットワーク全体が危険に晒される
- パケット改ざんが容易で、なりすまし攻撃のリスクが高い
現在、WEPは多くのWi-Fiルーターでサポートされていません。
もしWEPを使用している場合は、WPA2-PSK(AES)への移行を強く推奨します。
2-1-2. WPAとWPA2の違い
WEPの脆弱性を改善するために、2003年にWPA(Wi-Fi Protected Access)が登場しました。
WPAでは、暗号化方式として**TKIP(Temporal Key Integrity Protocol)**を採用し、一定の安全性を確保しましたが、現在では以下のような理由で非推奨となっています。
- TKIPの脆弱性が発見され、暗号化が破られるリスクがある
- WPA2-PSK(AES)と比較して安全性が低い
2004年に登場したWPA2では、暗号化方式として**AES(Advanced Encryption Standard)**が採用され、セキュリティが大幅に向上しました。
現在、多くのWi-Fiルーターでは、WPA2-PSK(AES)が標準的な設定になっています。
2-2. WPA2-PSK(AES)の脆弱性とその対策
「WPA2-PSK(AES)」は現在の標準的なWi-Fi暗号化方式ですが、完璧なセキュリティを保証するわけではありません。
ここでは、WPA2-PSK(AES)の代表的な脆弱性と、それに対する対策を紹介します。
2-2-1. KRACK攻撃とは?
WPA2には、「KRACK(Key Reinstallation Attack)」と呼ばれる脆弱性が存在します。
この攻撃は、Wi-Fiのハンドシェイク(接続時の認証手順)を悪用し、通信データを盗み見たり改ざんしたりする可能性があります。
KRACK攻撃の影響を受けると、以下のような被害が発生する恐れがあります。
- Wi-Fi経由で送信されたパスワードや個人情報の漏洩
- 攻撃者によるデータ改ざんやマルウェアの挿入
2-2-2. WPA2-PSK(AES)の安全性を高める対策
KRACK攻撃を含むWPA2-PSK(AES)の脆弱性を回避するためには、以下の対策が有効です。
- ルーターとデバイスのファームウェアを最新に保つ
KRACK攻撃に対するパッチは、多くのWi-Fiルーターやデバイスのアップデートで適用されています。
定期的にファームウェアの更新を行いましょう。 - Wi-Fiのパスワードを強固にする
WPA2-PSK(AES)は事前共有鍵(PSK)を使用するため、簡単なパスワードは総当たり攻撃(ブルートフォースアタック)の対象になります。
長く複雑なパスワードを設定することで、セキュリティを強化できます。 - WPA3への移行を検討する
WPA2の脆弱性を補うために、新しいセキュリティプロトコルである「WPA3」が登場しました。
可能であれば、WPA3対応のルーターへの買い替えを検討しましょう。
2-3. 最新のセキュリティプロトコル(WPA3)との違い
2-3-1. WPA3とは?
WPA3(Wi-Fi Protected Access 3)は、2018年に登場した最新のWi-Fiセキュリティプロトコルです。
WPA2の課題を改善し、より強固なセキュリティを提供するために開発されました。
2-3-2. WPA2-PSK(AES)とWPA3の主な違い
項目 | WPA2-PSK(AES) | WPA3 |
---|---|---|
暗号化 | AES | AES(より強固な暗号化方式) |
パスワード保護 | PSK(事前共有鍵) | SAE(Simultaneous Authentication of Equals) |
総当たり攻撃耐性 | 弱い | 強い |
オープンWi-Fiのセキュリティ | なし | 個別暗号化(OWE) |
WPA3の大きな特徴は、**SAE(Simultaneous Authentication of Equals)**という新しい認証方式を採用している点です。
これにより、WPA2-PSK(AES)のように、パスワードが総当たり攻撃で破られるリスクが大幅に低減されています。
2-3-3. WPA3への移行を検討するべきか?
現在、WPA3はまだ普及段階にあり、多くのルーターやデバイスではWPA2-PSK(AES)が主流です。
しかし、新しいWi-Fi機器を導入する際には、WPA3対応の製品を選ぶことで、より強固なセキュリティを確保できます。
特に、企業や公共のWi-Fi環境では、WPA3への移行を積極的に進めるべきでしょう。
WPA2-PSK(AES)の設定方法
Wi-Fiのセキュリティを確保するために、「WPA2-PSK(AES)」の設定は非常に重要です。
多くのルーターでは、初期設定でWPA2-PSK(AES)が有効になっていますが、場合によっては手動での設定や変更が必要になることもあります。
本記事では、ルーターでの設定手順、デバイス側での接続方法、設定時の注意点やトラブルシューティングについて詳しく解説します。
3-1. ルーターでの設定手順
WPA2-PSK(AES)の設定は、Wi-Fiルーターの管理画面から行います。
メーカーごとに画面のレイアウトは異なりますが、基本的な設定手順はほぼ共通です。
3-1-1. ルーターの管理画面にログイン
- Webブラウザを開き、ルーターのIPアドレス(一般的に 192.168.1.1 または 192.168.0.1)を入力
- ルーターの管理者アカウントでログイン(初期ユーザー名・パスワードはルーターの裏面に記載されていることが多い)
3-1-2. Wi-Fiのセキュリティ設定を変更
- 「無線LAN設定」または「Wi-Fi設定」のメニューを開く
- 暗号化方式を「WPA2-PSK(AES)」に設定(WEPやWPAが選択されている場合は変更)
- Wi-Fiパスワード(PSK)を設定
- 推奨:英数字、記号を含む12~16文字以上の強力なパスワード
3-1-3. 設定を保存してルーターを再起動
設定を保存し、Wi-Fiルーターを再起動することで、WPA2-PSK(AES)のセキュリティが適用されます。
3-2. デバイス側での接続設定
ルーター側でWPA2-PSK(AES)を設定したら、スマートフォンやPCなどのデバイスをWi-Fiに接続します。
3-2-1. スマートフォンのWi-Fi接続手順
- 設定アプリを開き、「Wi-Fi」を選択
- 接続したいWi-FiのSSID(ネットワーク名)を選択
- ルーターで設定したWi-Fiパスワード(PSK)を入力
- 「接続」をタップすると、WPA2-PSK(AES)による暗号化通信が開始される
3-2-2. Windows PCのWi-Fi接続手順
- タスクバーのWi-Fiアイコンをクリック
- 利用可能なネットワークから対象のSSIDを選択
- パスワード(PSK)を入力し、「接続」をクリック
- 「ネットワークの種類」を選択(家庭の場合は「プライベートネットワーク」推奨)
3-2-3. MacのWi-Fi接続手順
- メニューバーのWi-Fiアイコンをクリック
- Wi-Fiネットワークを選択し、パスワードを入力
- 「接続」をクリックしてWPA2-PSK(AES)での接続を確立
これで、デバイス側のWi-Fi接続設定が完了します。
3-3. 設定時の注意点とトラブルシューティング
WPA2-PSK(AES)の設定時には、いくつかの問題が発生することがあります。
ここでは、よくあるトラブルとその解決策を紹介します。
3-3-1. Wi-Fiに接続できない場合の対処法
Wi-Fiのパスワードを正しく入力しても接続できない場合、以下の点を確認しましょう。
- パスワード(PSK)が正しいか確認(大文字・小文字の違いに注意)
- Wi-Fiルーターを再起動(設定が正しく反映されることがある)
- SSIDの変更(古い設定が影響している可能性があるため、新しいSSIDを設定する)
3-3-2. 古いデバイスで接続できない場合
一部の古いデバイスでは、WPA2-PSK(AES)に対応していないことがあります。
この場合、以下の対応策を試してみましょう。
- ルーターの設定で「WPA/WPA2-PSK(AES)」の混在モードを有効にする
- デバイスのWi-Fiドライバを最新のものに更新する
3-3-3. Wi-Fiの通信が不安定な場合
WPA2-PSK(AES)の設定を行った後、Wi-Fiの通信が不安定になることがあります。
原因としては、ルーターの干渉や設定ミスが考えられます。
- ルーターの設置場所を見直す(電子レンジやBluetooth機器の近くは避ける)
- Wi-Fiのチャンネルを変更(自動設定ではなく、手動で空いているチャンネルを選ぶ)
- ファームウェアを最新に更新
特に、2.4GHz帯は混雑しやすいため、可能であれば5GHz帯を使用するのも有効な対策です。
WPA2-PSK(AES)を利用する際のベストプラクティス
Wi-Fiのセキュリティを強化するためには、WPA2-PSK(AES)を適切に設定し、定期的なメンテナンスを行うことが重要です。
暗号化方式として強力なAESを採用しているWPA2-PSK(AES)ですが、パスフレーズの設定やファームウェアの管理が不適切だと、セキュリティリスクが高まる可能性があります。
本記事では、WPA2-PSK(AES)を安全に利用するためのベストプラクティスを紹介します。
4-1. 強力なパスフレーズの作成方法
Wi-Fiのパスワード(PSK)は、ネットワークの安全性を決定づける最も重要な要素の一つです。
「簡単なパスワードを設定してしまうと、総当たり攻撃(ブルートフォースアタック)によって破られるリスク」が高まります。
ここでは、強力なパスフレーズを作成するためのポイントを解説します。
4-1-1. 強力なパスフレーズの条件
WPA2-PSK(AES)で使用するパスフレーズは、以下の条件を満たすことで、より安全性を高めることができます。
- 12文字以上(推奨16文字以上)の長さにする
- 英大文字・小文字、数字、記号を組み合わせる
- 辞書に載っている単語や一般的なフレーズ(password123、abcdef など)は避ける
- 個人情報(名前、誕生日、電話番号など)は使用しない
4-1-2. おすすめのパスフレーズ生成方法
- ランダムな文字列を使用する
例:G7m$k9z@wT8!yX3
- 意味のない単語を複数組み合わせる
例:RedTiger@5BlueOcean!
- パスワード管理ツールを活用する
- 1Password、Bitwarden、KeePassなどのツールを利用すれば、安全なパスフレーズを生成・管理できる
Wi-Fiのパスワードを適切に設定することで、WPA2-PSK(AES)のセキュリティを最大限に活かすことができます。
4-2. 定期的なパスフレーズの変更の重要性
Wi-Fiのパスフレーズを長期間変更していないと、知らないうちに第三者に利用されている可能性があります。
特に、不特定多数が利用する環境では、一定期間ごとにパスワードを変更することが推奨されます。
4-2-1. パスフレーズを変更すべきタイミング
以下のような状況では、すぐにパスフレーズを変更することをおすすめします。
- 家族や会社のメンバーが変わったとき
- 過去に共有したパスワードを使い続けているとき
- Wi-Fiの通信速度が異常に遅い場合(不正アクセスの可能性)
- 公衆Wi-Fiの近くで使っている場合(盗聴のリスク)
4-2-2. パスフレーズ変更時の注意点
Wi-Fiのパスワードを変更すると、すべての接続デバイスで再設定が必要になります。
そのため、以下の点を意識しましょう。
- 新しいパスフレーズをメモしておく(スマートフォンのメモアプリなどに記録)
- ルーターの管理画面でSSIDとともに設定を変更
- すべてのデバイスで新しいパスフレーズを入力し、接続を確認
定期的にパスワードを変更することで、WPA2-PSK(AES)のセキュリティをより強固なものにできます。
4-3. ファームウェアのアップデートとその手順
Wi-Fiルーターのファームウェア(内部ソフトウェア)は、定期的に更新されています。
特に、WPA2-PSK(AES)にはKRACK攻撃などの脆弱性が指摘されており、最新のセキュリティ対策が適用されたファームウェアを使うことが重要です。
4-3-1. ファームウェアをアップデートすべき理由
- セキュリティ脆弱性の修正(KRACK攻撃などの対策が含まれる)
- WPA2-PSK(AES)の暗号化プロセスの改善
- ルーターの動作安定性向上(Wi-Fiの接続が切れにくくなる)
4-3-2. ルーターのファームウェアアップデート手順
- ルーターの管理画面にログイン
- ブラウザで
192.168.1.1
または192.168.0.1
にアクセス - ユーザー名・パスワードを入力してログイン
- ブラウザで
- ファームウェアのバージョンを確認
- 「システム設定」または「管理」メニュー内にある「ファームウェア更新」を開く
- 最新のファームウェアをダウンロード
- ルーターのメーカー公式サイトから最新バージョンをダウンロード
- ルーターの管理画面からファームウェアをアップデート
- アップデート後にルーターを再起動
- 更新が完了すると、ルーターが自動で再起動する場合が多い
- 手動で再起動する場合は、電源を切り、数秒待ってから再びオンにする
定期的にファームウェアをアップデートすることで、WPA2-PSK(AES)のセキュリティを維持し、ネットワークの安定性を確保できます。
WPA2-PSK(AES)に関するよくある質問
「WPA2-PSK(AES)」は、現在最も広く使われているWi-Fiのセキュリティ方式ですが、設定や運用に関して疑問やトラブルが発生することがあります。
本記事では、WPA2-PSK(AES)とWPA2-PSK(TKIP)の違い、古いデバイスとの互換性、Wi-Fi接続の不安定さに関する問題と対処法について詳しく解説します。
5-1. 「WPA2-PSK(AES)」と「WPA2-PSK(TKIP)」の違い
Wi-Fiルーターのセキュリティ設定には、「WPA2-PSK(AES)」と「WPA2-PSK(TKIP)」の2種類が存在することがあります。
どちらを選ぶべきなのか、それぞれの違いを理解しておきましょう。
5-1-1. AESとTKIPの基本的な違い
項目 | WPA2-PSK(AES) | WPA2-PSK(TKIP) |
---|---|---|
暗号化方式 | AES(Advanced Encryption Standard) | TKIP(Temporal Key Integrity Protocol) |
セキュリティ強度 | 高い(推奨) | 低い(非推奨) |
通信速度 | 高速 | 低速 |
古いデバイス対応 | 非対応のものもある | 比較的対応しやすい |
AESは最新の暗号化方式であり、現在のWi-Fi環境ではWPA2-PSK(AES)が推奨されています。
一方、TKIPはWPA(Wi-Fi Protected Access)の時代に使われていた暗号化方式で、セキュリティが脆弱なため現在では非推奨です。
5-1-2. なぜWPA2-PSK(AES)が推奨されるのか?
- AESは、総当たり攻撃やパケット改ざん攻撃に対して強い耐性を持つ
- WPA2-PSK(TKIP)は脆弱性が多く、最新のWi-Fiルーターではサポートが終了している場合がある
- AESはハードウェアアクセラレーションに対応しており、通信速度が向上する
結論として、「WPA2-PSK(AES)」を選択することが最も安全であり、安定した通信が可能になります。
5-2. 古いデバイスとの互換性について
WPA2-PSK(AES)は比較的新しい暗号化方式のため、古いWi-Fiデバイスでは接続できないことがあります。
ここでは、古いデバイスがWPA2-PSK(AES)に対応しているかを確認し、互換性の問題を解決する方法を紹介します。
5-2-1. 古いデバイスがWPA2-PSK(AES)に対応しているか確認する方法
- デバイスの仕様を確認
- 製品マニュアルや公式サイトで、「WPA2-PSK(AES)」に対応しているかチェック
- ルーターの設定を変更してテストする
- 一時的に「WPA/WPA2-PSK(AES)」の混在モードを設定し、接続できるか試す
5-2-2. 古いデバイスがWPA2-PSK(AES)に対応していない場合の対処法
- Wi-Fiルーターを「WPA/WPA2-PSK(AES)」の混在モードにする
- WPA2-PSK(AES)とWPA-PSK(TKIP)の両方をサポートするモードに設定すると、古いデバイスも接続しやすくなる
- Wi-Fiアダプターを交換する
- USBタイプのWi-Fiアダプターを使用することで、WPA2-PSK(AES)に対応させることが可能
- デバイスのWi-Fiドライバを更新する
- 特にWindows PCでは、Wi-FiドライバのアップデートによってAESが利用可能になることがある
古いデバイスを使い続ける場合は、上記の方法を試してみましょう。
5-3. WPA2-PSK(AES)での接続が不安定な場合の対処法
WPA2-PSK(AES)を使用しているにもかかわらず、Wi-Fiの接続が不安定になることがあります。
この問題は、ルーターの設定や電波干渉、ファームウェアの問題などが原因となっている可能性があります。
5-3-1. ルーターの設定を確認する
- Wi-Fiのチャンネルを手動で変更する
- 2.4GHz帯は混雑しやすいため、空いているチャンネル(1、6、11など)を選ぶ
- 5GHz帯を利用できる場合は、そちらに切り替えると安定する
- WPA2-PSK(AES)が有効になっているか確認する
- 一部のルーターでは、初期設定でWPA2-PSK(AES)以外が選ばれていることがある
5-3-2. 電波干渉を防ぐ
Wi-Fiの接続が不安定になる原因の一つに、電波干渉があります。
以下のような環境では、Wi-Fiの電波が影響を受けることがあります。
- 電子レンジ、Bluetooth機器の近くにルーターがある
- 同じ周波数帯のWi-Fiが多く使用されている(特に2.4GHz帯)
解決策として、ルーターの設置場所を変える、5GHz帯を使用するなどの対策を試してみましょう。
5-3-3. ルーターのファームウェアを更新する
古いファームウェアでは、WPA2-PSK(AES)に関するバグや脆弱性が修正されていない可能性があります。
ルーターの管理画面から、最新のファームウェアを適用することで安定性が向上することがあります。
まとめ
「WPA2-PSK(AES)」は、現在最も広く使用されているWi-Fiセキュリティ方式の一つです。
AESによる強力な暗号化により、安全性が確保されていますが、完全に無敵な技術ではなく、適切な運用と継続的な対策が求められます。
ここでは、「WPA2-PSK(AES)」の利点と限界、安全なWi-Fi環境を維持するための継続的な対策について整理します。
6-1. WPA2-PSK(AES)の利点と限界
Wi-Fiのセキュリティを考える際、「WPA2-PSK(AES)」は現時点で最もバランスの取れた選択肢といえます。
しかし、技術には限界があるため、その特性を理解し、適切に活用することが重要です。
6-1-1. WPA2-PSK(AES)の利点
- AES暗号化による強固なセキュリティ
WPA2-PSK(AES)は、現在広く採用されているWi-Fi暗号化方式の中で、最も強力なセキュリティを提供します。
総当たり攻撃やパケット解析に対して高い耐性を持ち、不正アクセスを防ぐのに効果的です。 - ほとんどのWi-Fiルーターとデバイスが対応
WPA2-PSK(AES)は2004年に標準化され、多くのWi-Fiルーターやデバイスが対応しています。
特別な機器を必要とせず、一般家庭や小規模オフィスでも簡単に導入できます。 - 通信速度が高速
WPA2-PSK(AES)は、ハードウェアアクセラレーションに対応しており、通信速度を落とさずに安全なデータ転送が可能です。
これにより、動画のストリーミングやオンラインゲームなどの用途でも快適に利用できます。
6-1-2. WPA2-PSK(AES)の限界
- PSK(事前共有鍵)方式の弱点
WPA2-PSKは、ネットワークに接続するすべての端末が同じパスワードを共有する方式のため、一度パスワードが漏れると不正アクセスを防ぐことが困難になります。
企業や公共のWi-Fi環境では、ユーザーごとに個別の認証ができるWPA2-EnterpriseやWPA3の導入を検討すべきです。 - KRACK攻撃などの脆弱性
WPA2-PSK(AES)は比較的安全な方式ですが、「KRACK(Key Reinstallation Attack)」という脆弱性が発見されています。
この攻撃では、Wi-Fiのハンドシェイク(認証プロセス)を悪用し、暗号化された通信データを解読される可能性があります。
ただし、ルーターのファームウェアを最新の状態に保つことで、この脆弱性を防ぐことが可能です。 - WPA3への移行が進んでいる
WPA2-PSK(AES)は現在も広く使用されていますが、最新のWi-Fi規格であるWPA3が登場し、今後の標準となる可能性があります。
WPA3では、より強力な暗号化と個別のデバイス認証が採用され、WPA2-PSKの持つ限界を克服しています。
今後、新しいWi-Fiルーターを購入する際には、WPA3対応の機種を選択することを検討すると良いでしょう。
6-2. 安全なWi-Fi環境を維持するための継続的な対策
「WPA2-PSK(AES)」を利用するだけでは、完全なセキュリティは確保できません。
安全なWi-Fi環境を維持するためには、定期的なメンテナンスと追加のセキュリティ対策が必要です。
6-2-1. Wi-Fiパスワード(PSK)の定期的な更新
WPA2-PSK(AES)のセキュリティを維持するためには、定期的にWi-Fiパスワードを変更することが推奨されます。
特に、以下のような状況では、すぐにパスワードを変更しましょう。
- 過去に他人と共有したパスワードをそのまま使い続けている
- Wi-Fiの通信速度が異常に遅くなり、不正アクセスの可能性がある
- ルーターのログを確認し、見覚えのない端末が接続されている
パスワードを変更する際は、英数字・記号を組み合わせた12~16文字以上のパスフレーズを使用すると、安全性が向上します。
6-2-2. ルーターのファームウェアを最新の状態に保つ
ルーターのファームウェアには、セキュリティパッチやバグ修正が含まれているため、定期的なアップデートが不可欠です。
古いファームウェアのまま放置すると、KRACK攻撃などの既知の脆弱性を悪用されるリスクがあります。
ファームウェアの更新手順:
- ルーターの管理画面にログイン(
192.168.1.1
または192.168.0.1
) - 「システム設定」または「管理」メニュー内の「ファームウェア更新」を開く
- ルーターのメーカー公式サイトから最新のファームウェアをダウンロードし、アップデートを実行
定期的にファームウェアを確認し、最新の状態を保つことで、WPA2-PSK(AES)のセキュリティを最大限に活用できます。
6-2-3. WPA3対応のルーターを検討する
今後のWi-Fi環境をより安全にするためには、WPA3への移行も視野に入れるべきです。
特に、新しいWi-Fiルーターを購入する際は、「WPA3対応」のものを選ぶことで、より強固なセキュリティを確保できます。
WPA3では、「SAE(Simultaneous Authentication of Equals)」という新しい認証方式が採用されており、WPA2-PSK(AES)で問題となるパスワードの盗難や総当たり攻撃に対する耐性が強化されています。
もし新しいルーターに買い替えるタイミングであれば、WPA3対応機種を選ぶことで、より安全なWi-Fi環境を構築することが可能です。