サイバー攻撃が高度化する中、従来のセキュリティ対策だけでは脅威を完全に防ぐことが難しくなっています。
NDR(Network Detection and Response)とは、ネットワークの異常をリアルタイムで検知し、迅速に対応する最新のセキュリティ技術です。
しかし、「EDRやSIEMとどう違うの?」「誤検知や運用負担は大丈夫?」と不安を感じる方も多いはず。
本記事では、NDRの仕組みや導入メリット、注意点、最適な製品選びまでを分かりやすく解説します。
この記事は以下のような人におすすめ!
- NDRとは何か知りたい人
- 他のセキュリティ対策(EDR・XDR・SIEM)とどう違うのか知りたい人
- 自社に適したNDR製品の選び方を知りたい人
目次
NDR(Network Detection and Response)とは
サイバー攻撃がますます巧妙化する中、企業のネットワークセキュリティ対策として注目されているのが NDR(Network Detection and Response) です。
NDRは、ネットワーク上の異常な挙動を検知し、迅速に対応することで、サイバー脅威を未然に防ぐセキュリティソリューションです。
ここでは、NDRの基本的な定義と、その重要性が高まっている背景について詳しく解説します。
1-1. NDRの定義
1-1-1. NDR(Network Detection and Response)とは?
NDR(Network Detection and Response) とは、ネットワークトラフィックを監視し、AIや機械学習を活用して 異常な通信やサイバー攻撃をリアルタイムで検知・対応する セキュリティ技術のことです。
従来の ファイアウォール や IPS(侵入防止システム) だけでは検出が難しい 未知の攻撃や内部からの脅威にも対応できる点が大きな特徴です。
NDRの主な役割は以下の3つです:
- ネットワークの可視化:通常のトラフィックと異常な通信を識別
- 脅威の検知:AIやルールベースの分析によるリアルタイムな異常検出
- 対応と防御:管理者へのアラート通知や自動防御による脅威の封じ込め
近年のセキュリティ対策では、 「侵入を前提とした防御」 が求められるようになり、 EDR(Endpoint Detection and Response) と並んでNDRが重要な役割を果たしています。
1-2. NDRが注目される背景
1-2-1. サイバー攻撃の高度化と新たな脅威
近年、サイバー攻撃は より巧妙かつ長期間にわたるもの(APT:Advanced Persistent Threat) が増えています。
従来の シグネチャベースのセキュリティ対策 では検出が難しく、 ゼロデイ攻撃 や 内部不正 などの脅威に対応するには、ネットワークの動的な監視が不可欠です。
また、 クラウド環境やリモートワーク の普及により、社内外をまたぐ通信が増加し、 従来の境界防御(パリメータセキュリティ)だけでは防ぎきれない 状況になっています。
このような変化に対応するため、NDRが注目されるようになりました。
1-2-2. ゼロトラスト時代の新たなセキュリティモデル
近年、企業のセキュリティ戦略として ゼロトラスト(Zero Trust) の考え方が広まっています。
ゼロトラストは、「 すべての通信を信用しない 」という前提に立ち、ネットワークの すべてのトラフィックを監視・分析すること を重視するモデルです。
この考え方に基づき、 ネットワークの異常を即座に検知・対応するNDRの重要性が高まっています。

1-2-3. NDR導入によるメリット
企業がNDRを導入する主なメリットとして、以下の3点が挙げられます:
- 未知の脅威に対応可能
→ ルールベースに頼らず、 AIや行動分析により新種の攻撃も検知 - ネットワークの可視化
→ 内部の異常な挙動を把握し、 内部不正やマルウェア感染の兆候を早期発見 - 迅速な対応が可能
→ アラート通知や自動対処 により、攻撃を未然に防ぐ
NDRの仕組みと主な機能
NDR(Network Detection and Response)とは、ネットワーク上の異常な挙動をリアルタイムで検知し、迅速に対応するセキュリティソリューションです。
その仕組みを理解するために、NDRがどのように ネットワークトラフィックを監視 し、脅威を検知・分析し、自動的に対応 するのかを詳しく解説します。
2-1. ネットワークトラフィックの監視方法
NDRの基本機能のひとつが、 ネットワークトラフィックの監視 です。
企業のネットワーク内外を流れる通信をリアルタイムで収集・分析し、通常の通信と異常な通信を判別することで、サイバー攻撃の兆候をいち早く検知します。
2-1-1. ネットワーク全体を可視化
NDRとは、ネットワークの全体像を可視化し、異常な挙動を把握できるツール です。
従来の ファイアウォール や IPS では境界部分しか監視できませんでしたが、NDRは 社内・クラウド・外部のトラフィックすべてを対象に監視 します。
これにより、 内部ネットワークの異常な動きや、境界を超えた通信の不審な振る舞い を検知できます。
2-1-2. パケットキャプチャによる詳細な解析
NDRは パケットキャプチャ を活用して、ネットワークトラフィックを詳細に分析します。
具体的には、以下のようなデータをリアルタイムで収集します:
- 通信の送信元・宛先IPアドレス
- プロトコル(HTTP, HTTPS, DNSなど)
- データの転送量・通信時間
- 通常とは異なるトラフィックの振る舞い
これらのデータを 機械学習やAI を活用して分析し、通常のパターンと異なる 異常な挙動 を特定します。

2-2. 脅威の検知と分析プロセス
NDRは、ネットワークトラフィックの 異常な挙動を自動で検知し、分析する ことで、サイバー攻撃の兆候を見つけ出します。
2-2-1. ルールベース+AIによる異常検知
NDRの脅威検知は、 シグネチャベース と AI・機械学習を活用した振る舞い分析 の両方を組み合わせて行います。
- シグネチャベース検知:既知の脅威と一致するパターンがあるかチェック
- 振る舞い分析(AI):通常の通信パターンと異なる挙動を学習し、新たな脅威を検出
- 異常検出:通常と異なる通信量や、怪しいリクエストを識別
例えば、ある端末が 深夜に大量のデータを外部サーバーに送信している 場合、NDRはこれを データ漏えいの可能性がある異常な動き として検知します。
2-2-2. 攻撃手法ごとの脅威インテリジェンス分析
NDRは、さまざまな攻撃手法を解析し、以下のような 脅威インテリジェンスデータ を活用します:
- C2(コマンド&コントロール)通信 の検知
- DNSトンネリング による隠れたデータ漏えいの解析
- ランサムウェアやマルウェア感染の兆候 の特定
これにより、NDRは ゼロデイ攻撃や内部からの不正アクセス など、従来のセキュリティ対策では見逃しやすい脅威を検知できます。

2-3. リアルタイムでの対応と自動化
NDRの強みは、脅威を検知するだけでなく、 リアルタイムで対応し、影響を最小限に抑えること です。
2-3-1. 自動アラートと管理者への通知
NDRが異常を検知すると、 即座に管理者へアラートを通知 します。
このアラートには、以下のような情報が含まれます:
- 異常を検知した端末・IPアドレス
- 疑わしい通信の詳細
- 推奨される対応策
これにより、管理者は 迅速に対処を開始できる ようになります。
2-3-2. 自動的な脅威封じ込め
NDRの高度な機能として、脅威を検知すると自動的に封じ込める機能 があります。 例えば:
- 疑わしいIPアドレスへの通信をブロック
- 異常な振る舞いをする端末をネットワークから隔離
- 外部にデータを送信しようとするプロセスを停止
これにより、管理者が対応する前に、脅威の拡散を防ぐことが可能 になります。
2-3-3. 他のセキュリティツールとの連携
NDRは EDR(Endpoint Detection and Response) や SIEM(Security Information and Event Management)などのセキュリティツールと連携できます。
これにより、ネットワークだけでなく、 エンドポイントやクラウド環境も含めた総合的な防御 を実現できます。
他のセキュリティソリューションとの比較
NDR(Network Detection and Response)とは、ネットワーク上の異常な挙動をリアルタイムで監視し、迅速に対応するセキュリティ技術です。
しかし、NDRだけではすべての脅威に対応できるわけではなく、他のセキュリティソリューションと組み合わせることで、より強固な防御体制を構築できます。
ここでは、NDRと EDR(Endpoint Detection and Response)、XDR(Extended Detection and Response)、SIEM(Security Information and Event Management) との違いや関係性について詳しく解説します。
3-1. EDR(Endpoint Detection and Response)との違い
NDRとは、ネットワークの異常を検知し、迅速に対応するためのソリューション ですが、EDRとはどのように違うのでしょうか?
それぞれの特徴を比較しながら解説します。
3-1-1. EDRとは?
EDR(Endpoint Detection and Response)とは、エンドポイント(PCやサーバーなどの端末)に対するセキュリティ対策 です。
ウイルス感染や不正アクセスが発生した際に、 端末内の挙動を分析し、マルウェアや攻撃の兆候を検出 します。
EDRの主な機能:
- 端末レベルでの脅威検知(プロセス監視・ファイル挙動の解析)
- マルウェア感染後のインシデント対応(ログ取得・フォレンジック分析)
- 端末の隔離(ネットワーク遮断)による被害の拡大防止

3-1-2. NDRとEDRの違い
比較項目 | NDR(Network Detection and Response) | EDR(Endpoint Detection and Response) |
---|---|---|
監視対象 | ネットワーク全体(パケット通信・トラフィック解析) | エンドポイント端末(PC、サーバー、モバイル端末) |
脅威の検知方法 | トラフィックの異常検知(振る舞い分析) | 端末上のプロセス・ファイルの異常検知 |
防御アプローチ | ネットワークレベルでの対応(通信遮断、異常な端末の隔離) | 端末レベルでの対応(プロセス停止、ファイル削除) |
3-1-3. NDRとEDRの組み合わせ
NDRとEDRは 相互補完的な関係 にあり、両方を組み合わせることで エンドポイントとネットワークの両方を監視できるため、より強固なセキュリティを実現 できます。
例えば、 EDRが検知できないネットワークレベルの脅威をNDRが補完 し、EDRで特定されたマルウェアの通信をNDRがブロックする、といった連携が可能です。
3-2. XDR(Extended Detection and Response)との関係性
NDRとXDRはどのような関係にあるのでしょうか? XDRは、EDRやNDRを統合した、より包括的な脅威検知・対応システム です。
3-2-1. XDRとは?
XDR(Extended Detection and Response)とは、 EDR・NDR・SIEMなど複数のセキュリティツールを統合し、脅威の検出と対応を自動化する 次世代のセキュリティソリューションです。
XDRの特徴:
- 複数のセキュリティツール(EDR、NDR、SIEM)を統合
- 異なるデータソースを活用し、より精度の高い脅威検知
- アラートの優先順位付けや、自動対応の仕組みを提供

3-2-2. NDRとXDRの違い
NDRは ネットワークレベルの異常検知と対応に特化 していますが、XDRはNDRの機能を含みつつ、 EDRやクラウド環境のセキュリティ情報も統合 する点が異なります。
比較項目 | NDR | XDR |
---|---|---|
監視対象 | ネットワーク | ネットワーク+エンドポイント+クラウド |
脅威検知の範囲 | ネットワーク通信の異常検知 | 複数のデータを統合し、高度な相関分析を実施 |
防御の自動化 | ネットワーク内の通信を制御・遮断 | 複数のセキュリティ製品と連携し、包括的な対応 |
3-2-3. NDRとXDRの連携
NDRとXDRは組み合わせて使用することで、 より強力な脅威検知・対応が可能 になります。
例えば、XDRが エンドポイントの異常とネットワークの異常を相関分析 し、 脅威の根本原因を特定 することができます。
3-3. SIEM(Security Information and Event Management)との補完関係
NDRとSIEMは、どのように連携し、企業のセキュリティを強化できるのでしょうか?
3-3-1. SIEMとは?
SIEM(Security Information and Event Management)とは、 企業のネットワーク・サーバー・セキュリティ機器のログを収集・分析し、脅威を検知するシステム です。
SIEMの特徴:
- 大量のログデータを一元管理
- 相関分析により、単体のシステムでは見逃す可能性のある脅威を特定
- コンプライアンス対応(ログの保存・監査)

3-3-2. NDRとSIEMの違い
比較項目 | NDR | SIEM |
---|---|---|
監視対象 | ネットワークトラフィック | ログデータ |
データの収集元 | ネットワーク機器・通信データ | サーバー・アプリケーション・セキュリティ機器のログ |
役割 | リアルタイムの脅威検知・対応 | 過去のデータをもとにした長期的な脅威分析 |
3-3-3. NDRとSIEMの連携
NDRとSIEMは補完関係にあり、SIEMにNDRのデータを連携することで、 ネットワークのリアルタイムな異常と、長期的な脅威トレンドの両方を分析できるようになります。
特に、 SOC(セキュリティオペレーションセンター) での セキュリティ監視の効率化 に役立ちます。
NDR導入のメリット
NDR(Network Detection and Response)とは、ネットワーク上の脅威をリアルタイムで検知・対応するセキュリティソリューションです。
従来のセキュリティ対策では見逃されやすい ネットワーク内部の異常 を発見し、迅速に対処できるため、サイバー攻撃のリスクを大幅に軽減できます。
ここでは、NDRを導入することで得られる具体的なメリット を詳しく解説します。
4-1. ネットワーク全体の可視化による脅威の早期発見
ネットワーク全体を可視化することは、サイバー攻撃を未然に防ぐうえで極めて重要です。
NDRを導入することで、企業のネットワークにおけるすべての通信の流れをリアルタイムで監視 できるようになります。
4-1-1. NDRによるネットワークの可視化とは?
NDRとは、ネットワーク全体のトラフィックをリアルタイムで監視し、異常な挙動を即座に検知できる技術 です。
通常のセキュリティ対策(ファイアウォールやIPS)では、内部ネットワークの通信が可視化されず、攻撃の兆候を見逃してしまうことがあります。
しかし、NDRを導入すると:
- 社内LAN・クラウド環境・リモートアクセスの通信を 統合的に監視 できる
- 通常とは異なるトラフィックや 異常な挙動 をリアルタイムで特定できる
- 外部からの攻撃だけでなく、内部の不審な動きも検知 できる
4-1-2. 早期発見の重要性
サイバー攻撃は 「侵入されてから検知するまでの時間」 が短ければ短いほど、被害を最小限に抑えられます。
NDRを導入することで、 攻撃者がネットワーク内で活動を開始した初期段階で異常を検知 でき、迅速な対処が可能になります。
4-2. サイバー攻撃の被害最小化
NDRを活用すると、サイバー攻撃による データ漏えいやシステム停止 のリスクを大幅に軽減できます。
4-2-1. 侵入後の攻撃を迅速に封じ込める
サイバー攻撃は 完全に防ぐことが難しい ため、侵入された後に どれだけ早く対応できるか が重要です。
NDRは、ネットワーク内部での 異常な通信を検知し、自動で封じ込める機能 を備えています。
例えば、NDRが 異常なデータ転送や不審な通信を検知 すると:
- 該当する端末を隔離 し、マルウェアの拡散を防ぐ
- 攻撃者が使用するC2サーバー(指令サーバー)との通信を遮断 する
- 管理者にアラートを即時通知 し、手動での対応をサポートする
4-2-2. ランサムウェア対策としての有効性
ランサムウェアは 感染後にネットワーク内で拡散し、重要なデータを暗号化する 攻撃手法ですが、
NDRを導入することで 感染の兆候を早期に検知し、拡散を防止 できます。
たとえば:
- 通常よりも短時間で大量のファイルが変更される → ランサムウェアの動きを検知
- 特定の端末が異常な外部通信を試みる → 攻撃者との通信をブロック
このように、NDRは「侵入された後の被害を最小限に抑える」ための重要なツール となります。
4-3. セキュリティ運用の効率化
サイバー攻撃の検知・対応には 膨大なログ分析や手作業 が必要ですが、NDRを導入することで セキュリティ運用を効率化 できます。
4-3-1. アラートの自動分類と優先度設定
セキュリティ担当者は、毎日大量のアラートを処理しなければなりません。
しかし、NDRには AIによる異常検知とアラートの優先度設定機能 が搭載されており、本当に重要な脅威のみを管理者に通知できます。
- 低リスクの異常は自動分析してログに保存
- 高リスクの脅威のみ管理者に通知
- 誤検知を減らし、運用負担を軽減
これにより、 セキュリティ担当者はより効率的に対応ができる ようになります。
4-3-2. 他のセキュリティツールとの連携
NDRは、EDRやSIEMなどのセキュリティツールと連携 できるため、運用の一元化が可能です。
例えば:
- EDRと連携 → ネットワークと端末の脅威を統合管理
- SIEMと連携 → 既存のログ管理とNDRのリアルタイム分析を組み合わせ、より高度な脅威対応が可能
これにより、企業のセキュリティ運用全体を自動化・最適化 できます。
NDR導入時の注意点とデメリット
NDR(Network Detection and Response)とは、ネットワークの異常をリアルタイムで検知し、迅速に対応するセキュリティソリューションです。
しかし、NDRを導入すればすべてのセキュリティ課題が解決するわけではなく、運用の負担増加や誤検知、既存システムとの統合性など、いくつかの課題も考慮する必要があります。
ここでは、NDR導入時に注意すべきポイントやデメリット について詳しく解説します。
5-1. 運用負担の増加と対策
NDRを導入すると、ネットワーク全体の監視が可能になりますが、その分 運用負担が増加する 可能性があります。
特に、初期設定や運用開始直後は、大量のアラート対応やチューニング作業 が必要になるケースが多いです。
5-1-1. NDR導入による運用負担の増加
NDRとは、ネットワーク全体の異常を監視し、脅威を自動的に検知する技術 ですが、検知されたアラートを適切に分析し、対応するには 一定の人的リソース が求められます。
主な運用負担として、以下の点が挙げられます。
- 大量のアラート処理:初期段階では、どのアラートが本当に危険かを判断するのに時間がかかる
- ルールのチューニング:誤検知を減らすために、NDRの設定を最適化する必要がある
- 専門知識の必要性:ネットワークトラフィックを正しく分析できるスキルが求められる
5-1-2. 運用負担を軽減する対策
NDRをスムーズに運用するためには、以下の対策を講じることが重要です。
- AI・機械学習を活用し、アラートの優先度を自動調整する
- SOC(セキュリティオペレーションセンター)やMSSP(マネージドセキュリティサービス)との連携を活用する
- 定期的なチューニングと、アラートのしきい値調整を行う
これらの対策を講じることで、運用負担を最小限に抑えながらNDRを活用 することができます。

5-2. 誤検知・過検知のリスク管理
NDRのもう一つの課題は、誤検知や過検知による不要なアラート です。
NDRとは、ネットワークの異常を検知する仕組み ですが、その基準を厳しくしすぎると、正常な通信まで「脅威」として判定してしまう 可能性があります。
5-2-1. 誤検知・過検知が発生する原因
NDRの誤検知が発生する主な原因として、以下の点が挙げられます。
- 通常の業務トラフィックが「異常」と誤判定される
例:大量データのバックアップ処理がDDoS攻撃と誤検知される - 新しい通信パターンに対応できていない
例:新規導入したクラウドサービスの通信が不審な挙動とみなされる - しきい値の設定が厳しすぎる
例:通常のファイル共有でもアラートが発生する
5-2-2. 誤検知を減らすための対策
NDRを効果的に活用するには、誤検知を最小限に抑える設定と運用が重要 です。
- チューニングの実施:最初の数ヶ月はNDRのアラートを分析し、適切なルールを設定する
- ホワイトリストの活用:通常の業務通信は事前にホワイトリスト登録して除外する
- 機械学習を活用:AIによる異常検知モデルの精度を向上させ、不要なアラートを削減する
誤検知を減らすことで、より正確なセキュリティ監視が可能 になります。
5-3. 既存システムとの統合性
NDRを導入する際にもう一つ重要なのが、既存のセキュリティシステムとの統合 です。
NDRを単独で導入すると、他のセキュリティツールと情報が分断され、効果的に活用できない場合があります。
5-3-1. 既存のセキュリティツールとの関係
多くの企業では、以下のようなセキュリティソリューションをすでに導入しています。
- ファイアウォール(FW)
- EDR(Endpoint Detection and Response)
- SIEM(Security Information and Event Management)
- XDR(Extended Detection and Response)
NDRはこれらのシステムと連携することで、より強力な脅威検知・対応を実現 できます。
5-3-2. 既存システムとの統合時の課題
NDRを導入する際、以下の課題が発生する可能性があります。
- 既存のログ管理システム(SIEM)とデータフォーマットが異なる
- 他のセキュリティツールとのAPI連携が必要
- 組織のワークフローに適した対応ルールの作成が必要
5-3-3. スムーズな統合のための対策
NDRを既存のセキュリティシステムと効果的に統合するには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- SIEMと連携し、ネットワークデータを一元管理する
- EDRやXDRと組み合わせ、端末とネットワークの脅威を統合分析する
- APIやログフォーマットの互換性を事前に確認し、システム間のデータ共有をスムーズにする
これにより、NDRを最大限活用しつつ、セキュリティ運用を統合的に管理できるようになります。
NDR導入のポイントと製品選定
NDR(Network Detection and Response)とは、ネットワーク上の異常をリアルタイムで検知し、迅速に対応するセキュリティソリューションです。
しかし、NDRの導入にあたっては、対応プロトコルの確認、運用のしやすさ、製品選定の基準 など、考慮すべきポイントがいくつかあります。
適切なNDR製品を選ぶことで、企業のネットワークセキュリティを最大限に強化 できます。
ここでは、NDR導入時の重要なポイントについて詳しく解説します。
6-1. 対応プロトコルの確認
NDRを導入する際には、監視対象のネットワークプロトコルが製品の対応範囲に含まれているか を確認する必要があります。
監視できるプロトコルが限定されていると、一部の脅威を検知できないリスク があるため、慎重に選定することが重要です。
6-1-1. NDRが対応すべき主要プロトコル
NDRとは、ネットワーク上の異常な通信をリアルタイムで検知するための技術 ですが、適切に動作させるためには、以下のようなプロトコルへの対応が求められます。
- HTTP/HTTPS:ウェブ通信の異常検知
- DNS:不審なドメインへのアクセス監視
- SMTP/IMAP/POP3:メール経由の攻撃検知
- SMB/NFS:ファイル共有経由のマルウェア検出
- SSH/RDP:リモートアクセスの不正利用監視
6-1-2. 暗号化通信(SSL/TLS)への対応
近年では、多くの通信が SSL/TLSによって暗号化 されています。
そのため、NDR製品が TLS復号機能 を持っているか、または プロキシやSSLインスペクションと連携可能か を確認することが重要です。
- TLS 1.2/1.3対応の確認
- SSLインスペクション機能の有無
- 既存のプロキシやファイアウォールとの連携性
NDR製品によっては、暗号化通信を十分に解析できないものもあるため、事前に仕様を確認 しましょう。
https://study-sec.com/wp-content/uploads/82c89932c57e3634cca9822a979b7d14.pdf6-2. 運用のしやすさとサポート体制
NDRを導入しても、運用が難しくては 適切なセキュリティ対策が実現できません。
そのため、管理のしやすさや、サポート体制を事前に確認しておくことが重要です。
6-2-1. NDRの管理画面と運用のしやすさ
NDRの管理画面が 直感的に操作できるか、また アラートの処理が効率的に行えるか を事前に確認しましょう。
- UI/UXのわかりやすさ
- 直感的なダッシュボード
- 必要な情報が一目で分かる設計
- アラートのフィルタリング機能
- 重要度の高いアラートを優先的に表示
- 不要な誤検知を除外する機能
- ログの管理・分析機能
- 長期間のログ保存が可能か
- 他のSIEM製品との連携がスムーズか
6-2-2. ベンダーのサポート体制
NDRを運用する上で、ベンダーのサポート体制も重要です。
特に、専門知識を持つエンジニアが社内にいない場合、適切なサポートを受けられるかどうかが運用の成否を左右します。
- 日本語対応のサポート窓口の有無
- 24時間365日の対応が可能か
- トラブル発生時の復旧支援やパッチ提供
また、製品導入時のトレーニングや、定期的なバージョンアップの提供 についても確認しておきましょう。
6-3. 自社環境に適した製品の選び方
NDR製品を選定する際には、自社のネットワーク環境やセキュリティポリシーに適しているか を考慮する必要があります。
6-3-1. オンプレミス型とクラウド型の選択
NDRには オンプレミス型とクラウド型 の2種類があり、自社の環境に適したものを選ぶことが重要です。
- オンプレミス型NDR
- 社内ネットワークの監視に適している
- 高度なカスタマイズが可能
- ハードウェアの導入・管理が必要
- クラウド型NDR
- リモートワーク環境やクラウドサービスを監視可能
- 初期コストが低く、スケーラビリティが高い
- ベンダー依存の部分がある
自社のネットワーク環境に応じて、最適なNDR製品を選定しましょう。
6-3-2. 他のセキュリティツールとの連携
NDR単体ではなく、既存のセキュリティツールと統合できるかどうか も重要なポイントです。
特に、以下のようなツールとの連携を確認しましょう。
- EDR(Endpoint Detection and Response):端末のセキュリティ監視との統合
- SIEM(Security Information and Event Management):ログ管理・相関分析
- XDR(Extended Detection and Response):包括的な脅威管理
NDRを導入することで、他のセキュリティ対策と連携し、より効果的な防御体制を構築できるかどうかを検討する ことが重要です。