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SaaS SLAとは?初心者でもわかる契約前に絶対確認すべきポイント徹底解説!

SaaSを導入する際、価格や機能ばかりに目が行きがちですが、実は見落とされがちな「SaaS SLA(サービス品質保証契約)」こそ、失敗しない選定のカギです。

本記事では、SaaS SLAの基礎から、契約前にチェックすべきポイント、最新のセキュリティSLA動向までをわかりやすく解説します。

外資系エンジニア

この記事は以下のような人におすすめ!

  • SLA(サービスレベルアグリーメント)とは何か知りたい人
  • SaaS SLAの意味や仕組みがわからず、契約内容をどう確認すべきか悩んでいる
  • SLA違反が発生した際の補償内容が知りたい人

目次

SaaS SLA の基礎知識

SaaS(Software as a Service)を導入する際、見落としてはいけない重要な契約の一つが「SLA(サービスレベルアグリーメント)」です。

この章では、SaaS SLAとは何か、そしてそれに関連する用語についてわかりやすく解説します。

1-1. SLA(Service Level Agreement)とは何か

SLAとは、「サービスレベルアグリーメント(Service Level Agreement)」の略で、日本語では「サービス品質保証契約」と訳されることが多い用語です。

特にSaaSサービスにおいてのSLA(SaaS SLA)は、サービス提供者(ベンダー)と利用者(企業や個人)の間で、どのような品質レベルでサービスを提供するのかを明文化した合意事項のことを指します。

1-1-1. SaaS SLAで定められる主な項目

SaaS SLAでは、以下のような項目が定められるのが一般的です:

項目名内容
可用性(稼働率)月間の稼働率が99.9%など、システムが使える時間の割合
応答時間問い合わせへの初期対応までの時間
サポート体制問い合わせ可能な時間帯やサポート手段(メール・電話など)
障害対応障害発生時の対応時間・報告義務など
バックアップデータ保護や復元体制について

つまり、SaaS SLAは、利用者にとって安心してクラウドサービスを導入するための「品質の保証書」のようなものです。

1-1-2. なぜSaaS SLAが重要なのか?

SaaSはインターネット経由で利用するクラウドサービスであるため、オンプレミスと異なり、常に「提供者に依存する」構造になります。したがって、以下のような理由から、SaaS SLAを確認・合意しておくことが重要です。

  • サービス停止時の対応を明確にするため
  • ビジネス継続性(BCP)を保つため
  • ベンダー選定の基準として使うため
  • 法的トラブルを未然に防ぐため

その結果、SaaS導入時には、価格や機能だけでなく、SLAの内容を比較・確認することが失敗しないSaaS選定のカギとなります。


1-2. 関連用語の整理:SLI、SLO、信頼性、可用性など

SaaS SLAを理解する上で欠かせないのが、「SLI」や「SLO」といった関連用語です。

これらはSLAの中身を定量的に表現するために使用される専門用語ですが、初心者にも理解できるように順を追って説明します。

1-2-1. SLI(Service Level Indicator)とは?

SLIとは、サービスの品質を数値で測定するための「指標(インジケーター)」です。
例えば以下のようなものがあります:

  • 月間の稼働率(99.95%など)
  • 平均レスポンスタイム(例:200ms未満)
  • サポート対応までの時間

SLIは、サービスがどの程度の品質で運用されているかを測る「物差し」です。

1-2-2. SLO(Service Level Objective)とは?

SLOは、SLIに基づいて設定された「目標値(Objective)」です。
たとえば、SLIが「稼働率」であれば、そのSLOは「99.9%以上の稼働率を維持すること」のようになります。

つまり、SLIが「今の状態の測定値」で、SLOは「目標として合意した値」と理解するとよいでしょう。

1-2-3. 信頼性と可用性の違いとは?

「信頼性(Reliability)」と「可用性(Availability)」は似ている言葉ですが、意味は異なります。

  • 信頼性:長期間にわたってトラブルなく動作し続けられるか
  • 可用性:必要なときにサービスを利用できる状態にあるか

SaaS SLAでは、特に「可用性」が重視される傾向があります。なぜなら、システムが止まってしまうと、業務そのものが止まってしまうからです。

SLA の主要な構成要素(何を契約・保証すべきか)

SaaS SLAでは、サービスの「品質」や「信頼性」を具体的に示すために、いくつかの重要な構成要素が定義されます。

この章では、SaaS SLAにおいて必ず押さえておくべき5つの要素について、実務に即してわかりやすく解説します。

2-1. 可用性(稼働率)と稼働時間・停止時間の定義

SaaS SLAにおいて最も基本的かつ重要なのが「可用性(Availability)」です。

2-1-1. 可用性とは?

可用性とは、サービスが「どれだけの時間、正常に利用できるか」を示す指標です。多くのSaaS SLAでは、次のような稼働率が定義されます:

可用性のレベル稼働率月間の停止可能時間(目安)
99.99%約4.4分
99.9%約43分
99.0%約7.3時間

つまり、可用性が高いほど、業務の中断リスクが低くなるということです。

2-1-2. 稼働時間と停止時間の定義に注意

SaaS SLAでは「停止」と見なされる条件が明記されています。たとえば、

  • 一部の機能だけが使えない場合も「停止」と定義するか?
  • メンテナンス時間は可用性の計算に含めるか?

このような定義次第で、SLA違反となるかどうかが変わるため、契約書の中で明確に確認することが非常に重要です。


2-2. 性能・応答時間・負荷時の対応(レスポンス/遅延など)

SaaS SLAでは、単に「動いているか」だけでなく、「快適に使えるか」も重要な評価軸です。

2-2-1. 応答時間(レスポンス時間)の定義

応答時間とは、ユーザーが操作をしてからシステムが反応するまでの時間を指します。例えば、

  • ログイン後の画面表示速度
  • データ検索の完了までの時間

などがこれに該当します。

2-2-2. 負荷時の性能維持

アクセス集中時にも性能が保たれるかは、業務継続性に直結します。そのため、SaaS SLAでは、ピーク時の応答時間や、遅延が許容される範囲なども定められることがあります。


2-3. サポート体制・運用監視・障害対応プロセス

障害が起きたとき、迅速かつ的確に対応されることも、SaaSサービスの品質に直結します。

2-3-1. サポート体制の明確化

SaaS SLAでは、次のようなサポート関連の項目が定義されます:

  • サポート対応時間(例:平日9:00〜18:00、日本語対応など)
  • 問い合わせ手段(電話、メール、チャットなど)
  • 初動対応までの時間

2-3-2. 障害対応とエスカレーションルール

障害の深刻度に応じて、対応までの時間が変わるケースもあります。

障害レベル内容初期対応目標
高(重大)サービスが全面停止30分以内に連絡
中(重要)一部機能が利用不可1時間以内
低(軽微)操作方法の質問など24時間以内

このように、障害対応のスピードと手順があらかじめ定義されていることで、利用者は安心してサービスを使うことができます。


2-4. データ保護・バックアップ・災害復旧(災害対策)

SaaSでは、すべてのデータがクラウド上に保存されるため、データの安全性や復旧性もSaaS SLAの重要な要素です。

2-4-1. データバックアップの体制

バックアップの頻度や保存期間、復元可能なタイミングが定義されていることが望ましいです。例:

  • 自動バックアップ:1日1回
  • 保管期間:30日間
  • 復元対応時間:48時間以内

2-4-2. 災害復旧(DR:Disaster Recovery)

地震や火災などの物理的災害、または大規模障害時の復旧体制もSaaS SLAに含まれることがあります。

  • データセンターの冗長化
  • 別リージョンへのフェイルオーバー体制

これにより、予期せぬ事態でも業務を再開できる「BCP(事業継続計画)」を支援します。


2-5. セキュリティ要件(暗号化・アクセス制御・監査ログ等)

最後に、情報セキュリティに関する取り決めも、SaaS SLAの中でますます重要性を増しています。

2-5-1. 暗号化とアクセス制御

以下のようなセキュリティ対策が明記されることが一般的です:

  • 通信のSSL/TLS暗号化
  • 管理者権限の制限
  • IPアドレス制限

2-5-2. ログの取得と監査体制

利用ログや操作履歴の取得、アクセス監査体制についても、透明性のある運用のためにSLAに記載されるべきです。

その結果、ユーザーは自社の情報資産がどのように守られているかを定量的に確認できるようになります。

SLA の設定基準とベストプラクティス

SaaS SLAを策定・確認する際には、単に項目を並べるだけではなく、どのような基準で設定すべきかを理解しておくことが重要です。

この章では、業界標準の稼働率、業務に応じた基準の差別化、そして実際のモデルSLAの事例について紹介します。

3-1. 一般的な業界水準:稼働率 99.9%/99.99%等

SaaS SLAにおいて最もよく使われる数値指標が「稼働率(可用性)」です。

3-1-1. 稼働率の意味と目安

稼働率は、サービスが正常に稼働している時間の割合を示します。以下は、一般的な業界で採用されている水準の例です。

稼働率停止可能時間(月間)停止可能時間(年間)
99.0%約7.3時間約87時間
99.9%約43.8分約8.76時間
99.99%約4.4分約52.6分
99.999%約26秒約5.3分

つまり、稼働率が1桁上がるごとに、システムが止まるリスクは劇的に下がります。
ただし、その分、サービス提供側のコストや技術力も求められるため、すべてのSaaSで99.999%を実現しているわけではありません。

3-1-2. 稼働率以外の評価指標

SaaS SLAでは稼働率だけでなく、以下のような追加指標も設定されることがあります。

  • 平均レスポンスタイム
  • サポート初期対応までの時間
  • 障害時の復旧時間(RTO)とデータ損失許容時間(RPO)

これらを組み合わせることで、より実践的で信頼性の高いSLAが構築されます。


3-2. 利用用途/業務重要度による差のつけ方

SaaS SLAは、すべてのサービスに同じ基準を適用すればよいわけではありません。用途や業務の重要性によって、柔軟に設定基準を変える必要があります。

3-2-1. 業務の重要性に応じた設定例

サービス用途想定される重要度推奨されるSLA
財務管理システム高(致命的)稼働率99.99%以上、RTO1時間以内
社内チャット中(業務に支障)稼働率99.9%、RTO4時間以内
社員研修ツール低(影響小)稼働率99.0%、RTO24時間以内

このように、業務に直結するクリティカルなサービスほど、SaaS SLAの要求水準を高く設定する必要があります。

3-2-2. 利用者・提供者間の合意が鍵

一方的に厳しいSLAを要求するのではなく、「提供側が実現可能なレベル」と「利用側が求める品質レベル」のバランスを取ることが、健全なSaaS SLAの運用には欠かせません。


3-3. モデルSLA・事例紹介

実際のSaaS企業がどのようにSLAを定めているのかを知ることで、自社に適した基準を見つけやすくなります。

3-3-1. 有名SaaSのSLA事例

以下は、主要なSaaSサービスの公開SLAの一例です(執筆時点の情報に基づく)。

サービス名公開SLA(稼働率)備考
Google Workspace99.9%月次単位での計測、SLA違反時はクレジット補償
Microsoft 36599.9%各サービス単位で稼働率を明記
Salesforce99.9%Trustサイトでリアルタイムの稼働状況を公開

3-3-2. モデルSLAの構成例

SaaSベンダーがSLA文書を作成する場合、以下のような構成が一般的です:

  • はじめに(SLAの目的と範囲)
  • サービス品質指標(稼働率、応答時間など)
  • 測定方法と報告体制
  • SLA違反時の補償内容(返金/サービスクレジットなど)
  • 除外事項(メンテナンス/外部要因など)

このようなモデルを参考にしながら、自社の業務ニーズとバランスを取りつつ、現実的なSaaS SLAを構築することが、失敗しないサービス選定につながります。

SLA 違反時・例外時の取り扱い

どれほど優れたSaaSサービスでも、100%完全な稼働は保証できません。だからこそ、SaaS SLAには「違反が起きたときにどう対応するか」が明確に定められている必要があります。
この章では、SLA違反時の補償制度、例外規定、そして違反の報告・検証方法について具体的に解説します。


4-1. 補償・罰則・返金・クレジットなどの制度

SaaS SLAにおける「補償」は、サービス品質が契約基準を下回った場合のリスク対応として非常に重要です。

4-1-1. クレジット制度とは?

多くのSaaSプロバイダーは、SLA違反が発生した場合、月額利用料の一部を「サービスクレジット」として返還する仕組みを採用しています。

例えば以下のようなモデルがあります:

稼働率(月間)クレジット割合(返金相当)
99.9%以上0%(正常)
99.0%〜99.9%10%
95.0%〜99.0%25%
95.0%未満50%またはそれ以上

このように、稼働率が低下すればするほど、返金・補償の割合が高くなる設計が一般的です。

4-1-2. 罰則条項とその注意点

一部の契約では、金銭的な補償以外にも、以下のような罰則が定められる場合もあります:

  • 次回契約更新時の割引
  • SLA再交渉の義務
  • 特定機能の提供強化

ただし、提供者と利用者のパワーバランスによっては、こうした罰則が含まれていないケースもあるため、契約前の確認が非常に重要です。


4-2. 免責事項・責任制限・フォースマジュール等

SaaS SLAでは、「すべての障害が補償対象になるわけではない」という前提も押さえておきましょう。

4-2-1. よくある免責事項

以下は、SaaS SLAによく記載される免責事項の例です:

  • 利用者側のネットワーク障害や設定ミス
  • 計画された定期メンテナンス
  • 第三者によるDDoS攻撃や自然災害
  • OSやブラウザの互換性問題

つまり、サービス提供者がコントロールできない要因による停止は補償の対象外となることが多いです。

4-2-2. フォースマジュール(不可抗力)の扱い

「フォースマジュール条項」とは、自然災害、戦争、テロ、政府の命令など、予測不能かつ回避不可能な事態によるサービス停止を免責する条項です。

この条項があることで、提供者側が法的責任を負わなくなるケースがあるため、利用者側は「どこまでが不可抗力とされるのか」をよく確認することが求められます。


4-3. SLA 違反の報告・検証方法

SaaS SLAが存在しても、実際に違反があったかどうかは、客観的な方法で記録・検証する仕組みが不可欠です。

4-3-1. 違反報告のプロセス

一般的なSLA違反時の報告フローは以下の通りです:

  1. 利用者がサービス停止や不具合を検知
  2. サポート窓口へ連絡し、チケットを発行
  3. ログや監視ツールによって事象を記録
  4. 双方で状況を確認し、SLA違反の有無を判定
  5. 必要に応じて補償・クレジットを申請

4-3-2. 検証方法とモニタリングの重要性

SaaS SLAの稼働率や応答時間を正確に測定するには、以下のような方法があります:

  • 提供者が提供するダッシュボードの稼働ログ
  • 外部モニタリングツール(例:Pingdom, UptimeRobotなど)
  • 自社で構築した監視システム

したがって、利用者側にも最低限の監視体制を整えておくことで、SLA違反の検証がスムーズになります。

利用者が契約前にチェックすべきポイント

SaaSサービスを導入する際、機能や価格に目が行きがちですが、SLA(サービス品質保証契約)の内容こそ慎重に確認すべきポイントです。

特に「SaaS SLA」の内容を正しく読み解くことで、契約後のトラブルを未然に防ぐことができます。この章では、契約前に利用者が確認すべき3つの視点を紹介します。


5-1. SLA 文書の明確性と契約の範囲(何が含まれるか/含まれないか)

SaaS SLAの条項は専門的な表現が多く、読み飛ばしてしまう利用者も少なくありません。しかし、どこまでが保証され、どこからが対象外なのかを明確に理解することは非常に重要です。

5-1-1. 明確な定義がされているかを確認する

以下のような項目について、定義があいまいな場合は要注意です:

項目チェックポイント
可用性「稼働率99.9%」とあるが、対象期間や測定方法は?
停止の定義「停止」とは何を指すのか?部分停止も含むか?
保証の範囲クレジット対象になるのはどの範囲の障害か?

つまり、あいまいな表現は解釈の違いを招き、万が一の時に揉める原因になります。
したがって、契約書に「具体的な数値・条件・測定方法」が明記されていることが望まれます。


5-2. 監査とモニタリングの透明性

SaaS SLAの内容が良くても、それが実際に守られているかを検証できなければ意味がありません。

5-2-1. モニタリングの仕組みが開示されているか

多くの信頼できるSaaSベンダーは、以下のような仕組みを公開しています:

  • リアルタイムの稼働状況ダッシュボード(例:statusページ)
  • 定期的な可用性レポートの配信
  • 第三者による監査証明書(SOC2、ISO27001など)

これにより、利用者はSaaS SLAが客観的に実行されているかを確認できます。

5-2-2. トラブル時の調査・説明責任

トラブル発生時に、次のような対応がされるかも重要なポイントです:

  • どのように事象を調査・記録するのか?
  • 利用者に対して何を、いつ、どのように報告するのか?
  • SLA違反だったかどうかの判断基準は?

このように、SaaS SLAの履行を裏付ける「透明性のある運用体制」があるかどうかをチェックすることが安心材料になります。


5-3. サービス提供者の信頼性・運営体制の確認

どれほど魅力的なSaaS SLAが提示されていても、サービス提供者に信頼性がなければ意味がありません。
したがって、提供者の企業体制や継続性も重要な評価ポイントです。

5-3-1. 信頼できるSaaSベンダーかを見極めるポイント

評価項目チェック内容
運営年数サービスは安定して提供されているか?
顧客数・導入実績自社と同業種での利用実績があるか?
サポート体制日本語対応や障害時のサポートが明確か?
セキュリティ認証ISO27001などの取得実績があるか?

5-3-2. 将来性と継続性の見極めも重要

特にスタートアップ系のSaaSの場合、将来の事業継続性も意識する必要があります。
なぜなら、会社がサービスを終了してしまえば、どんなに良いSLAも無効になってしまうからです。

したがって、契約前にはSaaS SLAだけでなく、「そのSaaSが今後も使い続けられるか」もあわせて評価する視点が必要です。

SaaS SLA の将来と最新動向

従来のSaaS SLAでは「可用性」や「稼働率」が中心に語られてきましたが、近年ではセキュリティやプライバシー、法令遵守など、より広範な観点からのSLA設計が求められる時代になってきています。

また、技術の進化により、SLAの管理・監視方法も大きく変わりつつあります。ここでは、SaaS SLAの最新動向を2つの視点から解説します。


6-1. セキュリティ SLA の重要性と新しい指標(例:Privacy, Compliance, SecSLA)

これまでSaaS SLAの中心は「稼働率」でしたが、現在では「セキュリティSLA(Security SLA)」や「コンプライアンスSLA」への注目が高まっています。

6-1-1. なぜセキュリティSLAが必要なのか?

クラウドサービスの普及により、個人情報や機密情報をクラウドに預けるリスクが高まっています。
そのため、セキュリティ面においても具体的な指標をSLAとして明文化することが求められるようになりました。

例えば以下のような項目がSaaS SLAに含まれるケースが増えています:

セキュリティ指標内容例
データ暗号化率保存時・通信時の暗号化実施状況(AES256など)
アクセス制御多要素認証(MFA)の有無、IP制限
脆弱性対応時間セキュリティパッチの適用期限(例:重大度高は48時間以内)
プライバシー対応GDPR、個人情報保護法などの遵守状況
コンプライアンス指標ISO 27001、SOC2、CSA STARなどの取得状況

6-1-2. SecSLAという新しい考え方

「SecSLA(セキュリティSLA)」とは、セキュリティ関連の要件に特化したSLAの設計手法です。

このアプローチでは、次のようなポイントが重視されます:

  • インシデント発生時の初動対応時間(例:30分以内に報告)
  • 年間に発生したセキュリティイベント件数の開示
  • ログ保管期間や監査ログの提供

つまり、可用性だけでなく「どれだけ安全に使えるか」を数値で約束するSaaS SLAが、今後のスタンダードになりつつあります。


6-2. 自動化・監視技術の活用(リアルタイム可視化、SLMツール)

SaaS SLAの実効性を高めるうえで、技術的なモニタリングと自動化の活用は不可欠です。

特に近年では、「リアルタイムの可視化」と「サービスレベル管理(SLM)ツール」の活用が広がっています。

6-2-1. リアルタイム可視化の重要性

かつては、SLAの達成状況を月次や四半期で報告するのが一般的でしたが、現在では以下のようなリアルタイム監視の導入が進んでいます:

  • ステータスページによる稼働状況の公開(例:Google、Salesforceなど)
  • SLAダッシュボードによるリアルタイムの指標共有
  • SLA達成率のグラフ表示(例:直近30日間の可用性)

このような仕組みによって、利用者はSaaS SLAの「実際の履行状況」を常に確認できるようになります。

6-2-2. SLMツールの導入とメリット

SLM(Service Level Management)ツールとは、SLAの設定・測定・報告を自動化・可視化するためのソリューションです。

代表的な機能には次のようなものがあります:

機能説明
SLAポリシー管理SLAの定義とバージョン管理
自動通知SLA違反の予兆をアラートで通知
可視化レポートSLA達成率や履歴をグラフ化
契約管理との連携契約更新や補償に関する情報と連携可能

つまり、SLMツールを活用することで、SaaS SLAを「単なる紙の約束」から「日々管理できる数値目標」へと進化させることができるのです。

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