サイバー攻撃が高度化する中、スレットインテリジェンス の重要性が高まっています。
しかし、「何から始めればいいのか?」「どのツールを選べばいいのか?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
実は、適切な情報収集と活用方法を知るだけで、企業のセキュリティレベルを大幅に向上させることが可能です。
本記事では、スレットインテリジェンスの基本から導入手順、活用方法、最新ツールまでを徹底解説。
初心者から上級者まで役立つ内容をまとめました。貴社のセキュリティ強化に向け、ぜひ最後までご覧ください。
この記事は以下のような人におすすめ!
- スレットインテリジェンスとは何か知りたい人
- スレットインテリジェンスを導入するべきか判断できない
- どのスレットインテリジェンスツールを選べばいいか分からない
目次
スレットインテリジェンスの基礎知識
サイバー攻撃の高度化が進む現代において、企業や組織は常に新しい脅威にさらされています。
その中で、脅威情報を収集・分析し、攻撃を未然に防ぐ手法として「スレットインテリジェンス」が注目されています。
本記事では、スレットインテリジェンスの基本概念から、その重要性について詳しく解説します。
1-1. スレットインテリジェンスとは何か
スレットインテリジェンス(Threat Intelligence)とは、サイバー脅威に関する情報を収集・分析し、組織のセキュリティ対策に活用する手法のことです。
単なるデータの蓄積ではなく、脅威の傾向や攻撃手法を分析し、実際のセキュリティ戦略に役立てることを目的としています。
1-1-1. スレットインテリジェンスの定義
スレットインテリジェンスは、単に「脅威情報」を指すだけでなく、サイバー攻撃者の戦略や手口を体系的に分析し、防御に役立てる高度な情報分析のことを指します。
以下のような情報を含みます。
種類 | 内容 |
---|---|
攻撃者のプロファイル | 攻撃者の所属、目的、戦術など |
攻撃手法(TTPs) | MITRE ATT&CK などに基づく攻撃の手口 |
悪意のあるIPやドメイン | 既知の攻撃者が利用するインフラ情報 |
マルウェアの挙動 | 最新のマルウェアの特徴や感染経路 |
1-1-2. スレットインテリジェンスの役割
スレットインテリジェンスの主な役割は以下の通りです。
- 攻撃の予測と防止:過去の攻撃データを分析し、新たな攻撃を未然に防ぐ
- 迅速なインシデント対応:脅威情報を活用し、攻撃が発生した際の対応速度を向上
- セキュリティ対策の最適化:組織の脅威環境に応じた防御策の選定
1-2. スレットインテリジェンスの重要性と必要性
サイバー攻撃は日々進化しており、従来の防御手法だけでは対策が追いつかないケースが増えています。
そのため、スレットインテリジェンスを活用することで、より高度な防御体制を構築することが求められています。
1-2-1. なぜスレットインテリジェンスが必要なのか
スレットインテリジェンスを導入することで、組織は以下のようなメリットを得ることができます。
- 攻撃を未然に防ぐ
→ 事前に攻撃者の動向を把握し、適切な対策を講じることが可能 - インシデント対応の迅速化
→ 攻撃が発生した際に、適切な情報をもとに速やかに対応できる - セキュリティ投資の最適化
→ 必要な対策を明確にし、無駄なコストを削減
1-2-2. 企業が直面するサイバー脅威の現状
近年、企業が直面しているサイバー脅威は多岐にわたります。以下に代表的なものを示します。
脅威の種類 | 内容 |
---|---|
ランサムウェア攻撃 | ファイルを暗号化し、復号のために身代金を要求 |
フィッシング詐欺 | 偽のメールやWebサイトで個人情報を盗む |
サプライチェーン攻撃 | 取引先を経由して本命の標的に侵入 |
ゼロデイ攻撃 | 未知の脆弱性を突いた攻撃 |
1-2-3. スレットインテリジェンスの活用による効果
スレットインテリジェンスを活用することで、以下のような効果が期待できます。
- 脅威の早期発見と予防
→ 攻撃の兆候を事前に検知し、防御策を講じる - 組織のセキュリティ意識向上
→ 社内全体でセキュリティリスクを理解し、適切な対応を取れる - コンプライアンス遵守の強化
→ GDPRやNISTなどの規制に対応し、企業の信頼性を向上
スレットインテリジェンスの種類と分類
スレットインテリジェンスは、企業や組織のセキュリティ対策を強化するために重要な情報分析手法です。
しかし、すべてのスレットインテリジェンスが同じ役割を果たすわけではありません。
用途や対象に応じて、主に 戦略的インテリジェンス、戦術的インテリジェンス、運用的インテリジェンス の3つに分類されます。
本記事では、それぞれのスレットインテリジェンスの役割や特徴、活用方法について詳しく解説します。
2-1. 戦略的インテリジェンス
戦略的インテリジェンスは、企業や組織の長期的なセキュリティ戦略の策定に役立つ情報を提供するものです。
経営層やセキュリティ管理者が意思決定を行うための指針となる情報を含みます。
2-1-1. 戦略的インテリジェンスの概要
戦略的インテリジェンスは、サイバー脅威の 全体像 を把握し、今後の対策を計画するために必要な情報を提供します。
例えば、以下のような情報が含まれます。
- グローバルな脅威トレンドの分析
→ 新たなサイバー攻撃手法や攻撃者グループの動向 - 業界別のリスク評価
→ 金融業界・医療業界など特定の業界を狙った攻撃の傾向 - 規制や法制度の影響
→ GDPRやNISTなどのサイバーセキュリティ基準の変更
2-1-2. 戦略的インテリジェンスの活用例
企業が戦略的インテリジェンスを活用することで、以下のようなメリットがあります。
活用例 | 具体的な効果 |
---|---|
長期的なセキュリティ投資の決定 | 必要な技術や人材確保の優先順位を決定 |
リスク管理の向上 | 企業のビジネスモデルに応じたリスク評価を実施 |
経営層の意思決定支援 | 組織の全体戦略とサイバーセキュリティの統合 |
戦略的インテリジェンスを適切に活用することで、経営戦略とセキュリティ対策を両立させることができます。
2-2. 戦術的インテリジェンス
戦術的インテリジェンスは、サイバー攻撃の具体的な手法や攻撃パターンを分析し、防御策を策定するために活用されます。
主に SOC(セキュリティオペレーションセンター) や セキュリティアナリスト が活用する情報です。
2-2-1. 戦術的インテリジェンスの概要
戦術的インテリジェンスでは、攻撃者が使用する 技術、戦術、手順(TTPs) に関する情報を分析します。具体的には、以下のような要素が含まれます。
- 攻撃者の行動パターンの特定
→ MITRE ATT&CKフレームワークを活用し、攻撃手法を分析 - 脆弱性の情報とその悪用手法
→ CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)情報の分析 - セキュリティ防御策の最適化
→ 効果的なパッチ適用やネットワーク防御の改善
2-2-2. 戦術的インテリジェンスの活用例
企業が戦術的インテリジェンスを活用することで、次のような効果を得られます。
活用例 | 具体的な効果 |
---|---|
リアルタイムな脅威分析 | 最新の攻撃手法に基づいた迅速な対応 |
セキュリティシステムの最適化 | IDS/IPS、ファイアウォールなどの設定強化 |
SOCの運用効率向上 | インシデント対応の迅速化 |
特に、MITRE ATT&CKやCVEの活用によって、効果的なセキュリティ対策を講じることが可能になります。
2-3. 運用的インテリジェンス
運用的インテリジェンスは、実際の インシデント対応 や セキュリティ運用 に直接関わる情報を提供するものです。
SOCチームや インシデントレスポンスチーム が即時の対応を行う際に活用されます。
2-3-1. 運用的インテリジェンスの概要
運用的インテリジェンスは、具体的な 脅威の兆候(Indicators of Compromise: IoC) を特定し、攻撃を未然に防ぐために活用されます。
- 悪意のあるIPアドレスやドメイン
→ 既知の攻撃者が使用するインフラ情報を分析 - マルウェアのハッシュ値(MD5, SHA-256 など)
→ マルウェア感染を防ぐためのシグネチャ作成 - フィッシング攻撃の兆候
→ フィッシングメールの特徴を特定し、対策を実施
2-3-2. 運用的インテリジェンスの活用例
運用的インテリジェンスを適切に活用することで、以下のような効果が期待できます。
活用例 | 具体的な効果 |
---|---|
インシデントの早期検知 | 攻撃の兆候をリアルタイムで把握 |
マルウェア対策の強化 | 既知のマルウェア情報をもとに防御策を導入 |
フィッシング攻撃への対応 | メールフィルタリングの精度向上 |
特に、SOCチームがリアルタイムで活用できる情報が多く、迅速な対応が求められる環境で重要な役割を果たします。

スレットインテリジェンスの活用方法
スレットインテリジェンスは、単なる情報収集にとどまらず、適切に活用することで企業のセキュリティ対策を大幅に強化することができます。
本記事では、企業での導入事例や具体的な応用方法について詳しく解説します。
3-1. 企業における導入事例
近年、多くの企業がスレットインテリジェンスを活用し、サイバーセキュリティ対策を強化しています。
ここでは、実際の導入事例を紹介しながら、スレットインテリジェンスがどのように機能しているのかを見ていきます。
3-1-1. 金融業界におけるスレットインテリジェンス活用
金融業界は、サイバー犯罪者の主要なターゲットとなる業界の一つです。
特にフィッシング攻撃やランサムウェアの標的になりやすいため、スレットインテリジェンスの導入が急務となっています。
導入事例:大手銀行のケース
- 課題
→ 毎日数千件のフィッシング攻撃や不正取引の試みが発生 - 解決策
→ スレットインテリジェンスプラットフォームを導入し、リアルタイムでフィッシングドメインや悪意のあるIPアドレスを監視 - 結果
→ フィッシング攻撃を80%削減し、早期検知による損失リスクを低減
3-1-2. 製造業におけるスレットインテリジェンス活用
近年、製造業界では サプライチェーン攻撃 が急増しており、セキュリティの強化が求められています。
導入事例:自動車メーカーのケース
- 課題
→ 取引先のサーバーがマルウェア感染し、自社ネットワークにも影響を及ぼすリスクが増大 - 解決策
→ スレットインテリジェンスを活用し、取引先のセキュリティ状況をリアルタイムで評価し、リスクの高い取引先との通信を制限 - 結果
→ サプライチェーン攻撃のリスクを事前に察知し、感染被害を未然に防止
3-1-3. 医療業界におけるスレットインテリジェンス活用
医療機関では、電子カルテや個人情報の保護が最優先課題となっており、ランサムウェア攻撃への対策が不可欠です。
導入事例:総合病院のケース
- 課題
→ ランサムウェア攻撃によるシステム停止のリスク - 解決策
→ 外部の脅威データベースと連携し、ランサムウェアの感染兆候をリアルタイムで検出 - 結果
→ ランサムウェアの感染リスクを50%以上低減し、重要な医療データの保護を実現
3-2. セキュリティ対策への具体的な応用
スレットインテリジェンスを適切に活用することで、企業のセキュリティ対策を強化できます。
ここでは、具体的な応用方法について解説します。
3-2-1. インシデント対応の強化
スレットインテリジェンスは、インシデント発生時の迅速な対応を支援します。
具体的な活用例
- 脅威インジケーター(IoC)の活用
→ 悪意のあるIPアドレスやマルウェアのハッシュ値を活用し、攻撃を事前にブロック - 脅威インテリジェンスフィードの活用
→ 外部のインテリジェンスソース(VirusTotal, Threat Intelligence Platformsなど)と連携し、リアルタイムで脅威情報を取得
期待される効果
- インシデント対応時間の短縮(従来の50%以下に削減)
- 侵害発生後の被害拡大を最小限に抑制
3-2-2. セキュリティ監視システムとの統合
スレットインテリジェンスを SIEM(Security Information and Event Management) や EDR(Endpoint Detection and Response) と統合することで、より高度なセキュリティ監視が可能になります。
統合対象 | 効果 |
---|---|
SIEM | 異常なログやイベントをリアルタイムで分析し、脅威の兆候を検出 |
EDR | エンドポイントの動作を監視し、マルウェアの活動を即座にブロック |
SOC(セキュリティオペレーションセンター) | インシデント対応の迅速化と正確性の向上 |


3-2-3. フィッシング対策の強化
フィッシング攻撃は、企業にとって大きな脅威です。スレットインテリジェンスを活用することで、より効果的な対策を講じることが可能です。
具体的な施策
- フィッシングサイトのリアルタイムブロック
→ 悪意のあるURLリストを活用し、フィッシングサイトへのアクセスを自動遮断 - メールセキュリティの強化
→ スレットインテリジェンスを活用して、フィッシングメールの疑わしい特徴(送信元、本文、リンクなど)を解析
期待される効果
- 従業員のフィッシング被害の大幅な低減(約70%減)
- セキュリティ意識向上による企業全体のリスク軽減

3-2-4. ランサムウェア対策の最適化
ランサムウェア攻撃に対する防御策として、スレットインテリジェンスを活用することで、攻撃の兆候を事前に把握し、被害を最小限に抑えることができます。
具体的な施策
- 既知のランサムウェアのIoCを活用し、早期検知
- 脅威アクターの行動パターンを分析し、予防的対策を実施
- バックアップと復旧計画の強化(インシデント発生時の影響を最小化)
スレットインテリジェンスの導入手順
スレットインテリジェンスを効果的に活用するためには、適切な導入手順を踏むことが重要です。
本記事では、情報収集の方法、データの分析と活用、導入時の注意点とベストプラクティス について詳しく解説します。
4-1. 情報収集の方法
スレットインテリジェンスの最初のステップは、適切な情報を収集することです。
情報源の選定や収集方法を誤ると、不要なデータが増え、分析が困難になります。
ここでは、効果的な情報収集の方法について解説します。
4-1-1. スレットインテリジェンスの主な情報源
スレットインテリジェンスの情報源は、以下のように分類できます。
情報源の種類 | 具体的な内容 | 活用例 |
---|---|---|
オープンソースインテリジェンス(OSINT) | 公開情報(ブログ、SNS、フォーラム) | サイバー犯罪者の動向調査 |
コミュニティインテリジェンス | 企業間や業界団体の情報共有 | 同業他社との脅威情報共有 |
商用インテリジェンスフィード | 有料の脅威情報サービス | 高度な攻撃の予測と対策 |
内部インテリジェンス | 自社ネットワークのログデータ | 企業特有の脅威パターン分析 |
4-1-2. 情報収集の具体的な手法
スレットインテリジェンスを効果的に活用するためには、以下の手法を組み合わせることが重要です。
- 脅威インテリジェンスプラットフォームの活用
→ MISP、Anomali ThreatStream などを利用して、リアルタイムで脅威情報を取得 - 脆弱性データベースの監視
→ CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)を定期的にチェックし、最新の脆弱性情報を入手 - ダークウェブの監視
→ Torネットワークなどで取引される脅威情報を調査し、標的型攻撃の兆候を把握
4-2. データの分析と活用
収集した情報を有効に活用するためには、適切なデータ分析が不可欠です。
ここでは、スレットインテリジェンスの分析方法と実際の活用方法について解説します。
4-2-1. スレットインテリジェンスの分析プロセス
スレットインテリジェンスの分析には、以下のプロセスが含まれます。
- データの分類・整理
→ 収集した情報をカテゴリごとに分類(例:IPアドレス、マルウェア、攻撃手法) - 脅威レベルの評価
→ CVSSスコア(脆弱性の深刻度)などを利用し、リスク評価を実施 - 攻撃パターンの特定
→ MITRE ATT&CK フレームワークを活用し、攻撃の傾向を分析 - 防御策の策定
→ 分析結果をもとに、ファイアウォールの設定変更やEDRの強化を実施
4-2-2. 具体的な活用方法
スレットインテリジェンスを活用することで、以下のようなセキュリティ強化が可能になります。
活用分野 | 具体的な施策 | 期待される効果 |
---|---|---|
脆弱性管理 | 最新のCVE情報をもとにパッチ適用を優先 | ゼロデイ攻撃のリスクを軽減 |
インシデント対応 | IoC(Indicators of Compromise)をSIEMと統合 | 攻撃の兆候をリアルタイムで検知 |
脅威予測 | AIを活用した異常検知モデルの導入 | 未来の攻撃パターンを事前に把握 |
4-3. 導入時の注意点とベストプラクティス
スレットインテリジェンスを導入する際には、いくつかの注意点があります。
適切な導入計画を立てることで、より効果的なセキュリティ対策を実現できます。
4-3-1. 導入時の注意点
スレットインテリジェンスを導入する際に気をつけるべきポイントは以下の通りです。
- 目的を明確にする
→ 企業の脅威環境に応じて、適切な情報源を選択 - 過剰なデータに注意
→ ノイズの多いデータを排除し、必要な情報のみを分析 - スキルのある人材を確保
→ スレットインテリジェンスを活用できる専門人材(SOCアナリスト、脅威ハンター)を配置
4-3-2. ベストプラクティス
スレットインテリジェンスを最大限活用するためのベストプラクティスを紹介します。
- スレットインテリジェンスフィードの活用
- 商用・無料のインテリジェンスフィードを適切に組み合わせる
- STIX/TAXIIなどの標準フォーマットを活用し、データの統合を容易にする
- 組織内の情報共有を強化
- SOC、CSIRT、IT部門間でのスレットインテリジェンス情報を共有
- インシデント対応計画を事前に策定し、迅速な対応を可能にする
- 自動化を活用
- SOAR(Security Orchestration, Automation, and Response)ツールを導入し、手動作業を最小限に
- SIEMと連携し、脅威の検出から対応までのプロセスを自動化
最新のスレットインテリジェンスツールとサービス
スレットインテリジェンスの導入には、適切なツールを選ぶことが不可欠です。
サイバー攻撃の高度化に伴い、リアルタイムで脅威情報を取得し、防御策を自動化するツールの重要性が増しています。
本記事では、おすすめのスレットインテリジェンスツール一覧と、それぞれの特徴や選び方について詳しく解説します。
5-1. おすすめのツール一覧
スレットインテリジェンスの活用を最大化するためには、自社のセキュリティ環境に適したツールを選ぶことが重要です。
ここでは、最新のスレットインテリジェンスツールの中から、特におすすめのものを紹介します。
5-1-1. 主要なスレットインテリジェンスツール
現在、スレットインテリジェンスの分野で広く利用されているツールは以下の通りです。
ツール名 | 提供元 | 主な特徴 |
---|---|---|
Recorded Future | Recorded Future社 | AIを活用したリアルタイム脅威分析、リスクスコアリング |
Mandiant Threat Intelligence | Google(旧FireEye) | インシデント対応に強み、APTグループの分析に特化 |
IBM X-Force Exchange | IBM | クラウドベースの脅威インテリジェンスプラットフォーム |
Anomali ThreatStream | Anomali | STIX/TAXII対応、SIEMとの統合が容易 |
VirusTotal | ファイル・URLスキャン機能、脅威のハッシュ値解析 | |
ThreatConnect | ThreatConnect社 | SOCチーム向け、インテリジェンス共有機能が充実 |
MISP(Malware Information Sharing Platform) | オープンソース | 無料で利用可能なコミュニティベースの脅威共有プラットフォーム |
5-1-2. 各ツールの強みと用途
スレットインテリジェンスツールは、それぞれ異なる特長を持っています。
企業のニーズに応じて、適切なツールを選択することが重要です。
- リアルタイム分析を重視する場合 → Recorded Future、IBM X-Force Exchange
- インシデント対応を強化したい場合 → Mandiant Threat Intelligence
- オープンソースで低コスト運用を希望する場合 → MISP
- 自社のSIEMと統合したい場合 → Anomali ThreatStream、ThreatConnect
5-2. 各ツールの特徴と選び方
スレットインテリジェンスツールを選ぶ際には、企業のセキュリティ体制や目的に応じて適切なものを選択する必要があります。
ここでは、各ツールの特徴と選び方について解説します。
5-2-1. 選定基準
スレットインテリジェンスツールを選ぶ際に考慮すべきポイントは以下の通りです。
選定基準 | チェックポイント |
---|---|
データの信頼性 | 提供元の情報が正確で最新のものか |
リアルタイム性 | 最新の脅威情報を即座に取得できるか |
統合性 | SIEMやEDRと統合しやすいか |
コスト | 無料または有料での提供、ROI(投資対効果) |
5-2-2. 企業の目的別おすすめツール
企業がスレットインテリジェンスを導入する際の目的に応じた、おすすめのツールを以下にまとめます。
目的 | おすすめツール | 理由 |
---|---|---|
最新の脅威情報をリアルタイムで取得 | Recorded Future | AIを活用し、最新の脅威を可視化 |
APT攻撃(高度な標的型攻撃)対策を強化 | Mandiant Threat Intelligence | APTグループの攻撃手法を詳細に分析 |
SIEMやSOCとの統合 | Anomali ThreatStream | STIX/TAXII対応、SIEMとの統合が容易 |
低コストでスレットインテリジェンスを活用 | MISP | オープンソースで無料利用可能 |
5-2-3. クラウド型とオンプレミス型の比較
スレットインテリジェンスツールには クラウド型 と オンプレミス型 の2種類があります。
それぞれの特徴を比較して、自社に適したものを選びましょう。
タイプ | メリット | デメリット |
---|---|---|
クラウド型 | 初期投資が低い、運用負担が少ない | ネットワーク遅延の可能性 |
オンプレミス型 | 高いセキュリティ、内部データとの統合が容易 | 導入コストが高い、メンテナンスが必要 |
5-2-4. ツール選定時の注意点
スレットインテリジェンスツールを選ぶ際には、以下の点に注意が必要です。
- ツールの目的と企業のセキュリティニーズが合致しているか
- 過剰な情報を取得しないようにフィルタリングが可能か
- 既存のSOC/SIEMとスムーズに統合できるか
- コストとROI(投資対効果)を適切に評価する
スレットインテリジェンス活用の課題と解決策
スレットインテリジェンスは、企業のセキュリティ対策を強化する上で不可欠な要素ですが、導入にはいくつかの課題が伴います。
適切に運用しなければ、情報の過多や運用コストの増加につながり、十分な効果を発揮できないこともあります。
本記事では、スレットインテリジェンスの導入時に直面する課題と、それを解決するためのポイント について詳しく解説します。
6-1. 導入時に直面する主な課題
スレットインテリジェンスを導入する際、多くの企業が共通して直面する課題があります。
ここでは、代表的な課題を取り上げ、それぞれの具体的な解決策について解説します。
6-1-1. 情報過多による分析負担
スレットインテリジェンスは膨大な量のデータを扱うため、適切にフィルタリングしないと情報の洪水に巻き込まれることになります。
課題の詳細
- 日々更新される数万件もの脅威情報を適切に管理する必要がある
- 不要なデータを処理しようとすると、分析コストが増大する
解決策
- 自社に関連する脅威情報のみをフィルタリングする
→ 業界別の脅威情報や、特定の脆弱性に関するデータを優先的に取得 - 機械学習を活用した自動分析システムを導入
→ AIベースの解析ツール(Recorded Future、Anomaliなど)を活用し、不要なデータを排除
6-1-2. 既存のセキュリティシステムとの統合の難しさ
スレットインテリジェンスの効果を最大限に発揮するには、SIEM(Security Information and Event Management)やEDR(Endpoint Detection and Response)などと連携することが重要です。
しかし、これらの統合は技術的に難しい場合があります。
課題の詳細
- 既存のセキュリティツールとデータ形式が異なり、統合が困難
- 手動での統合作業が必要になり、運用負担が増加
解決策
- STIX/TAXII対応のツールを選定する
→ Anomali ThreatStreamやThreatConnectなど、標準フォーマット対応のツールを導入することで、統合作業を簡素化 - API連携機能のあるツールを活用する
→ SIEMやSOARとAPIを通じて直接連携し、自動化を進める
6-1-3. 専門知識を持つ人材の不足
スレットインテリジェンスを運用するには、セキュリティの専門知識を持つアナリストが必要ですが、多くの企業では人材が不足しています。
課題の詳細
- セキュリティアナリストやSOC担当者の不足
- 取得した脅威情報を適切に解釈し、活用できる人材がいない
解決策
- 外部のセキュリティサービスを活用する
→ MandiantやIBM X-Force Exchangeのような専門家支援サービスを導入 - 社内トレーニングの実施
→ MITRE ATT&CKや脅威分析のトレーニングを実施し、社内のスキルアップを図る
6-2. 効果的な運用のためのポイント
スレットインテリジェンスを導入した後、効果的に活用するためには適切な運用戦略が必要です。
ここでは、運用を成功させるためのポイントを解説します。
6-2-1. インテリジェンスの定期的な評価と改善
スレットインテリジェンスの運用は、一度導入したら終わり ではなく、定期的な見直しが必要です。
ポイント
- 定期的に取得する情報の精度を確認する
→ 適切なデータが取得できているか、ノイズが多くなっていないかを評価 - KPI(重要業績評価指標)を設定する
→ インシデント対応時間の短縮や誤検知率の低下など、具体的な目標を設定
6-2-2. SOCやCSIRTとの連携強化
スレットインテリジェンスは、単独で活用するのではなく、セキュリティ運用チーム(SOCやCSIRT)と連携 して活用することが重要です。
ポイント
- SOCとの情報共有を強化する
→ SIEMと連携し、リアルタイムで脅威情報を活用 - CSIRTとの連携によるインシデント対応
→ 事前に攻撃シナリオを想定し、対応計画を策定
6-2-3. 自動化を取り入れた効率的な運用
スレットインテリジェンスの運用を効率化するためには、手作業を減らし、自動化を進めることが重要です。
ポイント
- SOAR(Security Orchestration, Automation, and Response)を導入
→ 脅威情報を基にした自動アラート発動・インシデント対応を実施 - ルールベースの自動分析を設定
→ 一定のスコア以上の脅威情報のみをSOCに通知する仕組みを構築
6-2-4. 内部教育とスレットインテリジェンスの文化醸成
スレットインテリジェンスの効果を最大化するには、社内全体のセキュリティ意識を高める ことも重要です。
ポイント
- 従業員向けのセキュリティ意識向上トレーニングを実施
→ フィッシング攻撃や標的型攻撃の手口を理解させる - スレットインテリジェンスを活用したレポートを経営層に提出
→ 経営層に脅威の実態を理解させ、セキュリティ投資の重要性を伝える