「ランサムウェア対策として、まず何から手を付ければいいのか」「もし感染したら、最初に何をすればいいのか」と悩んでいませんか。

ランサムウェア対策の基本は、侵入口をふさぐ予防、暗号化の前に気づく検知、被害を広げない初動、攻撃者に消されないバックアップの4つを組み合わせることです。

この記事では、VPN機器やリモートデスクトップの守り方も含めて、企業のIT担当者が確認したい手順を図で整理します。

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この記事は以下のような人におすすめ!

  • ランサムウェア対策で何を優先すべきか知りたいIT担当者
  • 感染したときの初動の手順を確認しておきたい人
  • VPNやリモートデスクトップの守り方を見直したい人

ランサムウェアとは?対策の前に知りたい攻撃の流れ

1-1. データを人質に取る攻撃と、侵入から暗号化までの流れ

ランサムウェアとは、パソコンやサーバーのファイルを暗号化して使えなくし、元に戻すことと引き換えに身代金を要求する不正なプログラムです。

「身代金(ransom)」と「ソフトウェア(software)」を組み合わせた言葉で、日本語では「身代金要求型ウイルス」とも呼ばれます。

ウイルスやワームなど、マルウェア全体の種類と特徴は次の記事で整理しています。

マルウェアとは?種類と特徴を初心者にもわかりやすく解説します!マルウェアの脅威を理解し、対策するために必要な知識を一つの記事に凝縮しました。マルウェアの種類や感染経路、影響とリスク、感染兆候や対処法、さらにはマルウェア対策の重要性やセキュリティ強化まで、幅広いトピックを網羅。具体例も交えながら分かりやすく解説します。...

企業を狙う最近の攻撃では、1台のパソコンが偶然感染するだけでなく、攻撃者が社内のネットワークに侵入し、手作業で被害を広げる形が問題になっています(参考1)。

Microsoftはこれを「人が操作するランサムウェア(human-operated ransomware)」と呼び、自動で広がるタイプと区別して説明しています(参考1)。

攻撃者は侵入したあと、管理者の権限を奪い、ほかのサーバーへ移動しながら重要なデータの場所を探します(参考1)。

そのうえでデータを外部へ持ち出し、暗号化に加えて「支払わなければデータを公開する」と脅す例もあります(参考1、参考3)。

下の図は、侵入から暗号化までの代表的な流れと、それぞれの段階で効く対策を並べたものです。

ランサムウェア攻撃が侵入、権限の奪取と社内での移動、データの持ち出し、バックアップの削除、暗号化と脅迫の5段階で進み、各段階の下に予防・検知・バックアップ・初動の対策を対応させた図
侵入から暗号化までの代表的な流れと、各段階で効く対策です。実際の順序や期間は攻撃ごとに異なります。

図のとおり、暗号化は攻撃の最後の段階です。

侵入から暗号化までの途中で異変に気づいて止められれば、被害を小さくできます。

また、ランサムウェアを用意する側と、それを使って攻撃する側が分かれた形は「RaaS(Ransomware as a Service)」と呼ばれ、Microsoftは代表例としてLockBitを挙げています(参考1)。

Microsoftは、他者が用意した道具を使う、比較的経験の浅い攻撃者もいると指摘しています(参考3)。

だからこそ、個別の名前を追いかけるよりも、侵入・権限の奪取・持ち出し・暗号化という流れのどこで止めるかを考えることが、対策の近道になります。

ランサムウェア対策は「入らせない・広げない・早く気づく・元に戻せる」の組み合わせです。

Microsoftの対策ガイドも、復旧の準備、被害の範囲の限定、侵入を難しくすることの3段階を、優先順位をつけて進めるよう示しています(参考2)。

1-2. ランサムウェアの名前で調べた方へ

Study SECでは、これまで個別のランサムウェアや攻撃グループを、名前ごとの記事で解説してきました。

名前や活動の状況は短い期間で入れ替わるため、各記事に共通していた対策の考え方を、この記事にまとめ直しました。

名前・テーマどんなものかこの記事で確認できること
身代金要求型ウイルスランサムウェアの日本語での呼び方1-1の定義と攻撃の流れ
ランサムウェアグループランサムウェアを使って攻撃を行う集団1-1のRaaSと、2章以降の対策
WannaCry(ワナクライ)以前に個別記事で取り上げたランサムウェアの名前2-1の更新プログラムと古い仕組み(SMBv1など)の扱い
RansomHubMicrosoftの観測で2024年第4四半期に広く見られたランサムウェアの1つ(参考1)侵入口・検知・初動・バックアップの共通の対策
Trigona・CatB・Reynolds以前に個別記事で取り上げたランサムウェアの名前侵入口・検知・初動・バックアップの共通の対策

名前が違っても、侵入口をふさぎ、権限を守り、暗号化の前に気づき、戻せるバックアップを持つという対策の柱は変わりません。

QilinとLockBitについては、個別の記事で攻撃の特徴を解説しています。

Qilinによる攻撃の特徴と守り方を知りたい場合は、こちらを参考にしてください。

Qilin サイバー攻撃とは?10分でわかる最新の脅威と守り方を徹底解説!Qilinサイバー攻撃に関する不安を抱えているあなたへ。この記事では、最新の攻撃手法や具体的な被害事例、そして効果的な防御策を解説します。企業や組織が直面するリスクを理解し、適切な対策を講じるための実用的なガイドラインを提供します。...

LockBitの攻撃手法と、企業がとるべき対策は次の記事で解説しています。

「LockBitランサムウェア」の最新脅威と攻撃手法|企業が取るべき対策とは?LockBitランサムウェアは、企業や組織を標的にした高度なサイバー攻撃で、データの暗号化と漏えいを武器に身代金を要求する危険なマルウェアです。本記事では、最新のLockBitの動向、感染経路、被害事例、予防策まで詳しく解説。「知らなかった」では済まされないサイバー脅威に備え、今すぐ防御策を確認しましょう。...

予防:ランサムウェアの侵入口をふさぐ対策

予防の目的は、攻撃者を社内に入れないことと、入られても管理者の権限を簡単に渡さないことです。

Microsoftの対策ガイドでも、侵入を難しくすることと、侵入されたときの被害の範囲を限定することが、復旧の準備と並ぶ柱として挙げられています(参考2)。

特に狙われやすいVPN機器とリモートデスクトップの対策は、6章でまとめて説明します。

2-1. 更新プログラムを適用し、脆弱性を残さない

攻撃者は、広く知られているのにまだ修正されていない脆弱性を足がかりに、社内のネットワークへ入り込みます(参考4)。

特に、VPN機器やファイアウォール、公開しているWebサーバーは、インターネットから誰でも接続を試せるため、更新の遅れが侵入に直結しやすい機器です。

対策の基本は、OS、ソフトウェア、ネットワーク機器の更新プログラムを、優先度をつけて速やかに適用することです(参考4)。

どれから直すかは、インターネットに公開されているか、悪用が確認されている脆弱性かを手がかりに判断します。

脆弱性の識別番号であるCVEの調べ方は、CVEの記事で説明しています。

更新プログラムの種類と適用するときの注意点は、修正プログラムの記事も参考になります。

古い仕組みを使い続けないことも大切です。

たとえば、Windowsのファイル共有で使われる古いSMBv1には、遠隔から任意のプログラムを実行されるおそれのある脆弱性が見つかり、2017年3月公開の更新プログラムMS17-010で修正されました(参考6)。

Microsoftは、サポートが終わったOSや古い通信方式は既知の脆弱性を狙われる入口になるとして、隔離・無効化・廃止を勧めています(参考4)。

使っていない古い機能やサービスを止めておけば、攻撃に使われる入口そのものを減らせます。

2-2. 多要素認証と管理者権限の保護

攻撃者は、盗んだIDとパスワードを使い、正規の利用者になりすまして侵入することもあります(参考1)。

パスワードだけに頼らず、スマートフォンのアプリなどを組み合わせる多要素認証(MFA)を使えば、パスワードが漏れても不正なログインを防ぎやすくなります。

Microsoftは、管理者から順にすべての利用者へ多要素認証を求め、VPNを含む社外から使うアプリのログインも多要素認証で守るよう勧めています(参考4、参考5)。

多要素認証の仕組みと導入のメリットは、次の記事で解説しています。

多要素認証(MFA)とは?メリットと重要性についてわかりやすく解説!オンラインセキュリティの重要性を理解し、多要素認証の基礎から設定方法、メリット、注意点までを解説。さらに、バイオメトリクスやパスワードレス認証の未来、セキュリティの強化方法も紹介。安心・安全なデジタル活動のための必読ガイド。...

次に守りたいのが、管理者の権限を持つアカウントです。

人が操作するランサムウェアでは、攻撃者が管理者の権限を手に入れてから、業務への影響が大きいサーバーを選んでランサムウェアを送り込みます(参考1、参考5)。

そのため、強い権限を持つアカウントを特に厳しく守ることが、被害の範囲を限定する対策として挙げられています(参考2)。

具体的には、管理者アカウントを普段の業務用アカウントと分け、必要な作業のときだけ使うようにします。

管理者の権限を持つ人を必要な人数に絞り、いつ誰が使ったかを記録しておくことも、異変に気づく助けになります。

ネットワークを部署やシステムごとに区切っておくと、1台が乗っ取られても、ほかのサーバーへ移動されにくくなります。

区切り方の考え方は、ネットワークセグメンテーションの記事で紹介しています。

2-3. メールと端末の対策

メールの添付ファイルやリンクから不正なプログラムを実行させ、最初の足がかりにする手口も使われます(参考1)。

身に覚えのない請求書や配送の連絡などを装ったメールは、添付ファイルを開く前に、送信元や内容を落ち着いて確かめましょう。

怪しいメールの見分け方は、次の記事で具体例とともに紹介しています。

標的型攻撃メール対策のポイント!怪しいメールを見分ける方法とは?企業や個人が標的型攻撃に遭わないための情報収集や対策方法、身近な被害事例など幅広く取り上げています。また、メールを使った標的型攻撃に関する記事もあります。標的型攻撃に関する不安や悩みを持つ方に必見の記事集です。...

端末の側では、ウイルス対策ソフトを最新の状態に保ち、不審なふるまいを見つけて止められる仕組みを使います(参考4)。

社員への訓練も役に立ちますが、人の目では見抜けない巧妙なメールもあるため、技術的な対策と組み合わせて考えます。

予防の対策は、次の表のように確認する内容と頻度を決めておくと、抜けや漏れを見つけやすくなります。

対策確認すること頻度の目安
更新プログラムOS・VPN機器・公開サーバーへの適用状況毎月と、緊急の更新が出たとき
多要素認証VPN・メール・クラウドで有効になっているか新しいサービスを導入したとき
管理者アカウント人数・用途・最後に使われた日四半期ごと
メール添付ファイルの検査、不審なメールの報告手順半年ごと
端末の保護ウイルス対策の更新、監視の仕組みの稼働毎日(自動の確認)

頻度は一般的な目安なので、会社の規模やシステムの重要度に合わせて決めてください。

検知:暗号化の前に異変に気づく

ランサムウェアの被害を小さくするには、暗号化が始まる前の段階で攻撃に気づくことが大切です。

人が操作する攻撃では、侵入してから暗号化するまでの間に、攻撃者が社内を調べたり権限を奪ったりする操作が行われます(参考1)。

その操作の跡に気づけるかどうかが、検知の分かれ目になります。

3-1. 注意したい兆候とログ

次のような動きは、攻撃者が社内で準備を進めているサインかもしれません。

  • 深夜や休日など、普段は使わない時間帯の管理者のログイン
  • ふだんと違う国や地域からのVPN接続
  • ウイルス対策ソフトや監視の仕組みが止められている
  • バックアップの削除や、バックアップの設定の変更
  • 大量のファイルの名前の変更や、外部への大きなデータの送信

Microsoftのインシデント対応チームによると、攻撃者は暗号化の前にウイルス対策ソフトやログの記録を止め、バックアップを探して壊したり削除したりします(参考5)。

こうした動きは暗号化が近い合図になり得るため、特に注意して見ます。

Microsoftのインシデント対応チームは、削除されたバックアップやウイルス対策・EDRの警告に早く気づけた場合、インターネットとの送受信をいったん止めるといった素早い対応で攻撃を防げることが多いと説明しています(参考5)。

業務には一時的な影響が出ますが、ランサムウェアが展開されてしまった場合に比べれば、通常はずっと小さな影響で済むとされています(参考5)。

こうした兆候に気づくには、VPN機器、サーバー、端末のログを保存し、あとから確認できるようにしておくことが前提です。

ログの種類と見方の基本は、セキュリティログの記事で説明しています。

ログは攻撃者に消されることもあるため、別のサーバーへ転送して保管しておくと安心です。

3-2. EDRと監視体制で早く気づく

端末やサーバーの動きを記録し、不審なふるまいを見つけて知らせる仕組みがEDR(Endpoint Detection and Response)です。

EDRを使うと、ファイルを次々に書き換えるような動きを見つけて、端末をネットワークから切り離すといった対応を素早く取りやすくなります。

EDRの仕組みと活用のしかたは、次の記事で解説しています。

EDRとは?重要性と効果的な活用方法について初心者にもわかりやすく解説!「EDRセキュリティ」に関する基本原則から導入方法、効果的な活用手法、課題と対策、さらに将来展望まで、包括的な情報を提供します。EDRソリューションの選び方や成功事例も紹介します。読者の皆様の悩みやニーズに応えながら、EDRセキュリティの重要性と効果を理解し、適切なセキュリティ対策を実現するための知識を提供します。 ...

ただし、道具を入れても、通知を見て判断する人がいなければ攻撃は止まりません。

自社で常に監視するのが難しい場合は、監視を専門に行うSOCのサービスを利用する方法もあります。

SOCの役割はSOCの記事、ログをまとめて分析するSIEMはSIEMの記事で紹介しています。

夜間や休日に通知が届いたとき、誰が判断して誰に連絡するかを決めておくことも、検知の仕組みの一部です。

検知の仕組みは、入れただけでは働きません。

通知が誰に届き、どの条件で端末を切り離すかを、あらかじめ決めて試しておきましょう。

ランサムウェアに感染したら:被害を広げない初動の手順

画面に身代金を求めるメッセージが表示されたり、ファイルが急に開けなくなったりしたら、慌てずに次の順番で対応します。

最初の動き方しだいで、被害の大きさと復旧までの時間が変わります。

4-1. 隔離・連絡・記録の順に動く

感染に気づいた直後の流れを、下の図にまとめました。

ランサムウェアの感染に気づいたら、1 端末をネットワークから切り離す、2 担当者や責任者へ連絡する、3 画面や時刻を記録する、4 被害の範囲と侵入口を調べる、5 侵入口をふさいでからバックアップで復旧する、の順に進む初動の流れ図
感染に気づいたときの初動の流れです。電源の扱いなど細かな手順は、社内の手順と専門家の指示を優先します。

1つ目は、感染した疑いのある端末をネットワークから切り離すことです。

LANケーブルを抜く、Wi-Fiをオフにするといった方法で、ほかの端末やサーバーへの広がりを止めます。

Microsoftのインシデント対応チームは、侵害されたシステムをネットワークから隔離し、電源は切らないよう勧めています(参考5)。

電源を切ると調査に必要な情報が失われる場合があるため、社内の手順がある場合はそれと専門家の指示に合わせて判断します。

2つ目は、情報システムの担当者やセキュリティの責任者に、すぐに連絡することです。

自分の判断でファイルを消したり、復元を試したりすると、原因の調査が難しくなることがあります。

3つ目は、表示された画面をスマートフォンで撮影するなど、起きたことを時刻とともに記録することです。

この記録は、被害の範囲の調査や、警察・取引先への説明に使います。

社内で事故対応を担うチームの役割は、次の記事で説明しています。

CSIRTとは?役割と目的を初心者にも分かりやすく解説します!CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の基本的な構成や役割、セキュリティインシデントへの対応方法やベストプラクティス、トレーニングの重要性など、総合的な情報を提供するCSIRTを解説します。...

対応の手順を前もって文書にしておく方法は、インシデント対応プレイブックの記事が参考になります。

4-2. 被害範囲の調査と、身代金への考え方

初動のあとは、どの端末やサーバーが影響を受けたか、データが持ち出されていないかを調べます。

Microsoftのインシデント対応チームも、まず状況と被害の範囲を確かめ、攻撃者を環境から取り除く手順を決めたうえで、システムを元に戻す流れを示しています(参考5)。

人が操作するランサムウェアは、攻撃者を完全に追い出さない限り最初の被害のあとも業務を脅かし続けるため、追い出す前に復旧を急ぐと再び被害を受けるおそれがあります(参考1)。

侵入口がふさがれ、攻撃者のアカウントや不正なプログラムが取り除かれたことを確かめてから、復旧に進みましょう。

犯罪の被害として、警察のサイバー犯罪の相談窓口に相談することもできます。

個人情報が漏えいした可能性がある場合は、個人情報保護委員会への報告や本人への通知が必要になることがあるため、法務の担当者とあわせて確認します。

身代金については、支払ってもデータが元に戻る保証はありません(参考3)。

支払ったあとも、盗まれたデータが公開されない保証はなく、同じ攻撃者に再び狙われるおそれもあります。

また、支払ったお金が攻撃者の資金になり、次の攻撃を支えることにもつながります。

支払いを迫られる状況を避けるためにも、バックアップから戻せる状態を日ごろから保っておくことが、最も現実的な備えです。

バックアップ:ランサムウェアから復旧できる状態を保つ

予防と検知を尽くしても、攻撃を完全に防げるとは限りません。

最後に会社の業務を守るのは、暗号化されても元に戻せるバックアップです(参考3)。

5-1. 攻撃者に消されないバックアップを用意する

ランサムウェアの攻撃者は、復旧を妨げるために、バックアップを探して削除したり暗号化したりします(参考3)。

社内のネットワークにつながったままのバックアップは、本番のデータと一緒に暗号化されてしまうおそれがあります。

そこで、バックアップの一部を本番の環境から切り離したり、決めた期間は書き換えや削除ができない形で保存したりします(参考3)。

左は本番と同じネットワークにあり同じ管理者アカウントで操作できるバックアップで、攻撃者が本番と一緒に暗号化・削除できてしまう例、右は本番から切り離した保管や削除できない期間を設定した保管、変更や削除に追加の確認を求める保管で、攻撃者の手が届きにくい例を比べた図
同じネットワーク・同じアカウントで触れるバックアップは、本番と一緒に失われるおそれがあります。説明用の模式図です。

図の左のように、本番と同じネットワークにあり、同じ管理者アカウントで操作できるバックアップは、攻撃者にとっても手の届く場所にあります。

右のように、ネットワークから切り離した保管や、削除できない期間を決めた保管があれば、本番とバックアップが同時に失われる事態を防ぎやすくなります。

オンラインのバックアップを変更・削除する操作には、多要素認証やPINなど通常とは別の確認手順を求めます(参考3)。

あわせて、共有フォルダーなどで多くの人が重要なデータを書き換え・削除できる広い権限を見直し、必要な範囲に減らすことも、被害を抑える対策として挙げられています(参考3)。

複数のコピーを種類の違う保存先に分け、そのうち1つを別の場所に置く「3-2-1」の考え方も、計画づくりの目安としてよく使われます。

なお、ディスクの故障に備えるRAIDは、暗号化されたデータもそのまま書き込んでしまうため、バックアップの代わりにはなりません。

RAIDの仕組みは、RAIDの記事で説明しています。

5-2. 復元テストと復旧の優先順位を決める

バックアップは、実際に元に戻せることを確かめて初めて役に立ちます。

定期的に復元を試し、どのくらいの時間で戻せるかを確かめておきましょう(参考3)。

復旧の手順書、構成管理の情報、ネットワーク図など、復旧に必要な資料も、攻撃で読めなくならない場所に保管しておきます(参考3)。

すべてのシステムを一度に戻すことは難しいため、業務に欠かせないシステムから順に戻す優先順位を決めておきます。

確認項目確認する内容
対象業務に欠かせないシステムとデータが含まれているか
分離本番から切り離した、または削除できないコピーがあるか
アカウントバックアップの管理者に多要素認証を設定しているか
復元テスト最後に復元を試した日と、かかった時間
優先順位どのシステムから戻すかが決まっているか

災害も含めた復旧計画の立て方は、次の記事も参考になります。

ディザスタリカバリとは?企業の事業継続を守る最新のクラウド活用法と導入事例「災害やサイバー攻撃でシステムが停止したら、あなたの会社はどれくらいで復旧できますか?」 ディザスタリカバリ(DR)は、企業の事業継続に不可欠ですが、 「何をどこまで対策すればよいのか」 と悩む方も多いはず。本記事では、 DRの基本・最新のクラウド活用法・成功事例・低コストで導入する方法を徹底解説します!...

VPN・リモートデスクトップ(RDP)のランサムウェア対策

VPN機器やリモートデスクトップのように社外から社内のネットワークへ入る接続は、ランサムウェアの攻撃者の侵入口になります(参考4)。

インターネットから誰でも接続を試せるため、脆弱性や弱いパスワードが残っていると、そこから直接社内へ入られてしまいます。

6-1. VPN機器を最新に保ち、多要素認証を必須にする

下の図は、社外から社内へ入る経路と、それぞれの場所で行う対策をまとめたものです。

上段はインターネットからRDPを直接公開して総当たりや脆弱性を突かれる危険な構成、下段はインターネットからは最新に保ち多要素認証を必須にしたVPN機器だけを通し、RDPは社内側からのみ接続させる推奨の構成を比べた図(更新と多要素認証で攻撃者を入りにくくする構成)
RDPをインターネットに直接公開せず、更新と多要素認証で守った入口だけを通す構成の例です。説明用の模式図です。

VPN機器の対策で最も大切なのは、メーカーが公開する更新プログラムを速やかに適用することです(参考4)。

VPN機器の脆弱性は修正の公開後に悪用が広がることもあるため、メーカーの注意喚起を定期的に確認する担当を決めておきます。

修正を適用する前に認証情報が盗まれていた可能性もあるため、脆弱性を修正したあとにVPNのパスワードを変更することも検討します。

VPNへのログインには、多要素認証を必須にします(参考5)。

使っていないVPNのアカウントや、退職した人のアカウントは、すぐに無効にしましょう。

VPN機器のログを保存し、ふだんと違う場所や時間からの接続がないかを確認することも、侵入に早く気づく手がかりになります。

SSL-VPNの仕組みと注意点は、次の記事で解説しています。

SSL VPNとは?クラウド時代に必要なセキュリティ対策!SSL VPNとは?SSL VPNの基礎から選び方、導入方法、セキュリティ対策、トラブルシューティング、事例、今後の動向まで詳しく解説。初心者から上級者まで必見の記事集。安心してリモートアクセスを実現するための情報が満載です。SSL VPNに関する理解を深めたい人はぜひ読んでみてください。...

6-2. リモートデスクトップをインターネットに直接公開しない

リモートデスクトップ(RDP)は、離れた場所からWindowsのパソコンやサーバーを操作できる便利な機能です。

一方で、RDPの接続口をインターネットへ直接公開していると、パスワードを次々に試される攻撃を受けやすくなります。

Microsoftも、インターネットから直接届く端末は侵入口になりやすいとして優先して対策し、想定外の受信通信をファイアウォールなどで遮断するよう勧めています(参考4)。

図の下段のように、インターネットからはVPNなど認証された入口だけを通し、RDPは社内側からだけ接続できるようにします。

RDPを使える利用者を必要な人だけに絞り、ログインの失敗が続いたらアカウントを一時的にロックする設定も有効です。

社外からの接続を「社内に入ったから安全」とみなさず、接続のたびに確認する考え方は、ゼロトラストと呼ばれます。

VPNだけに頼らない接続の考え方は、次の記事で紹介しています。

ゼロトラストとは?初心者でもわかるように徹底解説します!ゼロトラストとは何か?セキュリティ強化に必要な知識と導入ステップを徹底解説。内部外部の脅威に対応する最先端モデルで、企業のセキュリティを強化します。導入費用や社内教育、既存システムとの互換性についても詳しく解説。ゼロトラストの基本から最新トレンドまで、この記事であなたの疑問を解消します。...

自社のVPN機器やRDPがインターネットから見えているかは、まず機器の一覧と公開の設定で確認しましょう。

外部から確かめる診断サービスもありますが、自社が管理していない機器には実施しないでください。

よくある質問とまとめ

7-1. よくある質問

Q1. ランサムウェア対策で、最初にやるべきことは何ですか?

まず、VPN機器や公開サーバーへの更新プログラムの適用状況と、多要素認証が有効になっているかを確認します。

次に、本番から切り離したバックアップがあり、実際に復元できるかを確かめます。

Q2. ランサムウェアに感染したら、パソコンの電源を切るべきですか?

まずネットワークから切り離して、被害の広がりを止めることを優先します。

Microsoftのインシデント対応チームは、隔離したうえで電源は切らないよう勧めているため、社内の手順や専門家の指示と合わせて判断してください(参考5)。

Q3. ウイルス対策ソフトを入れていれば防げますか?

ウイルス対策ソフトは大切ですが、それだけでは防ぎきれません。

人が操作する攻撃では正規のアカウントが悪用されるため、多要素認証、権限の管理、ログの監視、バックアップを組み合わせます(参考1)。

Q4. 身代金を払えばデータは戻りますか?

支払ってもデータが元に戻る保証はありません(参考3)。

盗まれたデータが公開されない保証もないため、バックアップからの復旧を前提に備えましょう。

Q5. クラウドに保存したデータなら安全ですか?

パソコンと同期しているクラウドのフォルダーは、暗号化されたファイルで上書きされることがあります。

以前の版に戻せる機能や、削除できない期間を決められる機能があるかを確認しておきましょう。

7-2. まとめ

ランサムウェアは、ファイルを暗号化して身代金を要求し、盗んだデータの公開もほのめかして脅す攻撃です。

対策の基本は、侵入口をふさぐ予防、暗号化の前に気づく検知、被害を広げない初動、攻撃者に消されないバックアップの組み合わせです。

特にVPN機器とリモートデスクトップは狙われやすいため、更新プログラムの適用、多要素認証、インターネットに直接公開しない設定を優先して確認しましょう。

感染したら、端末をネットワークから切り離し、担当者へ連絡し、起きたことを記録してから、範囲の調査と復旧へ進みます。

今日できる一歩として、自社のVPN機器の更新状況と、最後にバックアップを復元できた日を確かめてみてください。